解説者のプロフィール

山元文晴(やまもと・ぶんせい)
医師。医学博士。専門は消化器外科。2009年、東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業後、鹿児島大学旧第二外科に入局。その後、東海大学大学院医学研究科先端医科学専攻博士課程に進みつつ、同大学医学部付属八王子病院救急救命科に勤務。医療におけるこうじの可能性に気づき故郷に戻り、錦灘酒造株式会社に入社。こうじが体に及ぼす働きの臨床例を増やすべく研究に当たっている。
腸内環境が改善しアレルギー性疾患に好影響
こうじとは、米や麦、豆などの穀物にこうじ菌というカビを繁殖させた物です。こうじは、私たちの体に、多くのよい影響を及ぼします。
私は鹿児島県で100年続く種こうじ屋の四代めとして生まれました。医学を志し、臨床医として勤務していましたが、農学博士でもある父のこうじ研究への熱意に共感。こうじが医療に貢献できる可能性を探し、医学的な観点から、こうじの研究に取り組んでいます。
みそや酒、みりんなど和食に欠かせない調味料は、こうじの発酵の力で作られています。近年は、「腸にいい」として発酵食がブーム。手作りする人も増えているようです。
塩こうじや甘酒なども、それぞれのよさがありますが、今回紹介する「こうじ水」は、なんといっても作るのが簡単(作り方は下項を参照)。加えて、塩分や糖分がほぼゼロか、圧倒的に少ないのがメリットです。
高血圧で塩分を気にする人も糖尿病で糖分を気にする人も、安心してこうじの力を享受できます。
では、こうじの力、すなわちこうじ研究から見出されたこうじの効能を説明しましょう。
代表的な効果は、腸内環境の改善です。こうじをとると、大腸で酪酸菌が増えます。この菌は腸内を弱酸性に保って悪玉菌を抑制し、善玉菌が増える環境を整えてくれるのです。
便秘が解消するうえ、免疫細胞の大半は腸に存在するので、免疫力がアップ。こうじには、「NK細胞」「制御性T細胞」という、免疫にかかわる細胞を増やす作用もあり、これも免疫力向上に大いに貢献します。
同時に、免疫の過剰な反応が原因であるアレルギー性疾患の症状も改善に導かれます。
私はぜんそくの持病があり、大学を出たあとも発作で入院したほどですが、こうじ研究のため毎日こうじをとるようになったら、発作が全く出なくなりました。ちなみに父は、こうじ入り飲料を飲んでいるうちに、花粉症がピタッと治まりました。
肌の美白や保湿に効果のある成分も
腸は肌と密接なつながりがあります。腸内環境がよければ全身の代謝が上がり、皮膚細胞の新陳代謝も促されます。
加えてこうじには、肌の美白や保湿に効くさまざまな成分が含まれています。これも父の体験ですが、こうじエキスのスプレーを頭皮にかけていたら、液がちょうど垂れてくる位置にあったほくろのようなシミが、ポロッと取れました。
代謝がよくなると、全身にそのよい影響が出ます。それに加えて、先述した制御性T細胞は、頭皮の幹細胞を増やす、つまり毛根が元気になるという論文やデータがあります。抜け毛や白髪の予防にも役立つわけです。
こうじはほかにも、血圧上昇の要因になる酵素の働きを阻害し高血圧を抑制する、腸で酪酸菌を増やしてインスリン分泌を促し血糖値の上昇を抑制する、大量の酵素を作り消化を助けて胃腸の働きをよくする……など多くの効能があります。
こうじ水を飲むことで、これらの効能が得られると、期待していいでしょう。
こうじにはオリゴ糖やクエン酸、アミノ酸、コウジ酸など、多くの栄養成分が、加工されない自然な形で含まれています。
また、こうじ菌の菌体そのものを摂取できる点が、こうじを使ったほかの発酵食とは異なります。これもきっと、いい作用を及ぼしているはずです。
こうじ水は、天然の酵素たっぷりの、自然派栄養ドリンク。酵素は熱で活性を失いますが、人肌程度までなら温めても大丈夫です。長く継続して飲めば、いい変化が訪れるでしょう。
こうじ水の作り方
【期待できる効果】
・腸内環境の改善 ・便秘解消 ・免疫力アップ ・アレルギーの改善 ・肌の美白、保湿 ・抜け毛や白髪の予防 ・血圧、血糖値の上昇抑制 ・胃腸の働きを改善 など

【材料・用意する物】
・こうじ…50~100g(好みで調整)
・水…500ml
・ふたつきの清潔な瓶
・お茶やだし用のパック

こうじも、お茶やだし用パックも、スーパーなどで購入できる。
【作り方・飲み方】
❶こうじをほぐし、お茶やだし用のパックに入れる。

❷パックを瓶に入れ、水を注ぐ。ふたをして、冷蔵庫にひと晩おいたら完成。
※起床後または食後に飲むのがお勧め。夜寝る前は酵素が活発になるので避ける。
【ポイント】
・こうじは生でも乾燥でもよい。
・保存は冷蔵庫で、3~4日が目安。
・こうじは3回ほど再利用できる。(飲み切ったら水を継ぎ足し、またひと晩おく)
・最後は、炊飯時に加える、ひき肉料理に混ぜる、パックのまま湯船に入れ入浴剤にするなどして活用する。

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。
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