排尿トラブルは、女性は骨盤底筋群の緩み、男性は前立腺の肥大が主な原因ですが、いずれも体の冷えと運動不足が明らかに悪い影響を及ぼします。肩甲骨周り筋トレで姿勢を整え、もも上げで運動不足を補うと、骨盤周りの血流がよくなり、冷えも取れます。【解説】奥井識仁(よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長)

解説者のプロフィール

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奥井識仁(おくい・ひさひと)

よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長。1965年、愛知県生まれ。東京大学大学院修了後、ハーバード大学ブリカム&ウイメンズ病院にて手術を学ぶ。2009年、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックを開院。骨盤臓器脱が専門で、年間約300例の日帰り手術を行う。著書に『尿もれがピタッと止まる骨盤体操&スクワット』(飛鳥新社)、『図解よくわかる 女性の尿もれ 男性の頻尿をぐんぐん解消する!最新治療と予防法』(日東書院)など多数。
▼よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

NHKの朝ドラを見ながら行いましょう

私の専門は泌尿器科で、水泳、マラソン、トライアスロンなどのスポーツが趣味です。さまざまなスポーツ大会にドクターランナー(事故に備えて選手といっしょに走る医師)として参加するほか、選手としてもトライアスロン競技に取り組み、国際大会にも出場しています。

そんな私が10年くらい前から日常生活のなかで実行している筋トレが、「肩甲骨周り筋トレ」と「もも上げ」です(やり方は下項参照)。

肩甲骨周り筋トレは、日ごろから仕事の合間に行っています。この筋トレは、肩甲骨と背骨をつなぐ菱形筋をはじめ、背骨を支える脊柱起立筋や背中の広背筋、肩の僧帽筋など、上半身背面の筋肉を全体的に刺激して、姿勢を整えます。

昨年来のコロナ禍の影響で外出が減り、座ってテレビやパソコン、スマホなどを見て家で過ごす時間が長くなった人が多いと思います。このようなときのネコ背の姿勢により、肩こりや首の痛みなどの不調に悩む人も増えています。そんな人に特にお勧めの筋トレです。

二つめのもも上げは、名前のとおり、立って左右の太ももを交互に上げる運動で、主に腸腰筋が鍛えられます。

腸腰筋は、上半身と下半身をつなぐ筋肉です。腰椎(腰の背骨)と大腿骨(太ももの骨)をつなぐ大腰筋と、骨盤と大腿骨をつなぐ腸骨筋からなり、足を引き上げる動作に欠かせない筋肉であると同時に、骨盤を安定させる役目も果たしています。

もも上げは、全身運動としても非常に有効です。片足立ちになり、太ももを高く上げることで、腹筋や背筋など体幹の筋肉や太ももの筋肉も鍛えられ、バランス感覚まで向上します。

ある程度の時間続けて行うと、ウォーキングのような有酸素運動にもなります。運動不足の人や、加齢とともに歩行能力が低下してきた人、ダイエットをしたい人にもお勧めです。

全身運動としての効果を得るには、少なくとも15分行うことが必要です。患者さんたちには「毎日、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)を見ながら行いましょう」と指導しています。NHKの朝ドラは、1回ちょうど15分。もも上げをしながらドラマを見れば、クリアできます。

この筋トレは、尿もれに悩む患者さんにも勧めています。

尿もれの予防、改善に有効な運動に、骨盤底筋体操やスクワットがありますが、感覚がつかめず、うまくできない人は少なくないでしょう。また、ひざが悪い人にスクワットは向いていません。

そうした人にも、もも上げは簡単にできます。腸腰筋や骨盤底筋も含めた下半身全体の筋肉が鍛えられて、骨盤内の臓器の位置が安定し、尿もれや頻尿の改善が期待できます。

骨盤周りの血流が改善し冷えも取れる

座りっぱなしの生活は、姿勢が悪くなり、全身の血流も悪くなります。尿トラブルを抱える人にもよくありません。

排尿トラブルは、女性は骨盤底筋群の緩み、男性は加齢に伴う前立腺の肥大が主な原因ですが、いずれも体の冷えと運動不足が明らかに悪い影響を及ぼします。

座っている時間が長くなるときは、合間に肩甲骨周り筋トレを行って姿勢を整え、毎日15分以上のもも上げで運動不足を補う。この二本立てで、膀胱や尿道など、骨盤内の臓器の位置が安定します。骨盤周りの血流がよくなり、冷えも取れます。

尿トラブルが気になる人は、ぜひ実行してください。

奥井先生の尿もれ解消筋トレ
1. 肩甲骨周り筋トレ

左ひじを上げて曲げ、左手を背中側に回す。右手で左ひじを押さえ下へ押していく。このとき、背すじを伸ばして、左右の肩甲骨を中央に寄せる。
ひじを押しきったら、10秒その姿勢をキープする。反対側も同様に行う。

画像1: 奥井先生の尿もれ解消筋トレ 1. 肩甲骨周り筋トレ

両手を前に組む。肩や腕を上げないように前に寄せつつ、できるところまで頭をグッと前に倒して10秒キープする。

画像2: 奥井先生の尿もれ解消筋トレ 1. 肩甲骨周り筋トレ

①、②を10回くり返す。

奥井先生の尿もれ解消筋トレ
2. もも上げ

両足を交互に上げ下げする。ゆっくりでもかまわないので、ひざが腰の高さよりも高く、太ももが床と水平の高さよりも高くなるまで、しっかりと上げる。これを15分行う。
片足を上げるとき体がぐらつく人は、壁や柱に手をついて行う。

画像: 奥井先生の尿もれ解消筋トレ 2. もも上げ
画像: この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。

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