腕立て伏せというと腕の筋肉を鍛える運動と思われがちですが、実は胸や背中、おなか周りまで、体幹の筋肉をバランスよく鍛える効果もあります。腰痛持ちの人は体幹のなかでも特に腹部の筋肉が弱い傾向にあるので、腰痛予防にも役立ちます。【解説】吉原潔(アレックス脊椎クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

吉原潔(よしはら・きよし)

アレックス脊椎クリニック院長。医学博士。90年、日本医科大学卒業後、同医局に入局。三軒茶屋第一病院整形外科部長、明大前整形外科クリニック副院長などを経て、17年より現職。脊椎内視鏡手術のスペシャリスト。フィットネストレーナーの資格・実績も有し、運動療法や筋力トレーニングの指導にも精通。主な著書に『整形外科のスーパードクターが本音で教える最新最強自力克服大全』(文響社)など多数。
▼アレックス脊椎クリニック(公式サイト)

上半身とお尻を鍛える理想的な組み合わせ

私が日ごろから行っている筋トレのなかで、特にお勧めしたいのが、「プッシュアップ(腕立て伏せ)」と「ヒップリフト」です。腰痛に悩む人や中高年の人の、筋力アップ・健康増進に有効です。

筋トレは目的やその人の体力レベルにより、効果的なやり方が異なります。そこで今回は、女性や高齢者のかたに向けたやり方も含め説明しましょう。

吉原先生の体幹筋トレ
1. プッシュアップ(腕立て伏せ)

腕立て伏せというと、腕の筋肉を鍛える運動と思われがちですが、実は胸や背中、おなか周りまで、体幹の筋肉をバランスよく鍛える効果もあります。

腰痛持ちの人は、体幹のなかでも特に腹部の筋肉(おなかの正面を走る腹直筋や周囲を取り囲む腹横筋など)が弱い傾向にあるので、腰痛予防にも役立ちます。

やり方は、下記をご参照ください。私自身は写真のようなフォームで行っていますが、女性や高齢者のかたには少々きついと思います。その場合は、両ひざを床につけると、負荷を軽減できます。

両足をそろえ、両手は肩幅より少し広めに開き床につける。

画像1: 吉原先生の体幹筋トレ 1. プッシュアップ(腕立て伏せ)

体幹を一直線に保ったまま、腕を曲げて胸を床に近づける。胸が床につくギリギリの位置まで曲げたら、おなかを意識し浅く呼吸をしながら、その姿勢を2秒キープする。

画像2: 吉原先生の体幹筋トレ 1. プッシュアップ(腕立て伏せ)

腕を伸ばして①の姿勢に戻り、再び②を行う。これを、少しきついと感じるまでくり返したあと、さらに数回行う。

週に2~3回を目安に行う。回数よりも正しいフォームを心がける(可能なら、ほかの人に確認してもらうとよい)。
 

吉原先生の体幹筋トレ
2. ヒップリフト

ヒップリフトは両ひざを立てて床にあおむけになり、お尻を持ち上げる運動です。やり方は下記をご参照ください。

骨盤の安定に欠かせないお尻の筋肉(大殿筋)や、背骨を安定させる脊柱起立筋群の一つである多裂筋、太もも裏の筋肉であるハムストリングスなどを鍛え、腰痛予防にも有効な筋トレです。お尻の筋肉は加齢とともに落ちやすく、ボディビルダーでも、中年以降は意識的に鍛えないと衰えます。

ヒップリフトの前に、ぜひ行っていただきたい準備運動があります。

あおむけになって両ひざを立てると、腰(ウエスト)と床の間に手のひら一枚分くらいのすき間ができます。このすき間をつぶすように、おなかに力を入れて、背中を床に押しつけます。これを10回くり返します。腹筋に力を入れる感覚がつかめて、ヒップリフトの効果が一段と上がるのです。

あおむけになって、両足を軽く開いて両ひざを立てる。

画像1: 吉原先生の体幹筋トレ 2. ヒップリフト

ひざを閉じたまま矢印の方向(斜め上)に突き出す。同時に、肛門を締めてお尻に力を入れる。ひざを最大限に突き出し、その姿勢を2秒キープする。
※お尻を持ち上げようとして腰を反らすのはNG。

画像2: 吉原先生の体幹筋トレ 2. ヒップリフト

お尻を下ろして①の姿勢に戻り、再び②を行う。これを、少しきついと感じるまでくり返したあと、さらに数回行う。

週に2~3回を目安に行う。回数よりも正しいフォームを心がける(可能なら、ほかの人に確認してもらうとよい)。
 

いずれも、回数をこなすより、正しいフォームで行うことが大事です。

プッシュアップは、腕をできるだけ大きく曲げ伸ばし、お尻が上がり過ぎたり下がり過ぎたりしないようにしましょう。

ヒップリフトは、お尻を持ち上げることばかり意識すると、腰が反り痛めてしまいます。立てたひざを閉じながら、ひざを斜め上に突き出すことを意識しましょう。

ともに体幹の筋肉を鍛えますが、プッシュアップは上半身をメインに、ヒップリフトはお尻を中心に鍛えるので、この二つをセットで行うと理想的です。

運動は50歳を過ぎたら必要なメンテナンス

どんな機械も定期的にメンテナンスをしなければ、長くは使い続けられません。人間の体も同じです。

50歳を過ぎたら日々の手入れが必要。人体にとってのメンテナンスは、運動です。筋トレは加齢とともに衰える体の機能を、維持するための重要な運動の一つ。週2~3日は実行しましょう。

筋トレの習慣化には、やる気を維持することが大事。そのためには、明確な目標を持つといいでしょう。「もっとカッコいい体になりたい」「1時間歩いても疲れや痛みが出ないようになりたい」など、目標を決め、その達成を楽しみにして続けてください。

画像: この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。

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