解説者のプロフィール

菅沼加奈子(すがぬま・かなこ)
菅沼病院副院長。2002年、新潟大学医学部医学科卒業。同年より国立病院東京医療センター・川崎市立川崎病院勤務。14年より菅沼病院内科・リハビリテーショ科勤務、18年、同病院副院長。16年、歩クリニック開院。骨格のたいせつさを伝える講演会を全国で行っている。著書に『腰痛、ひざ痛が自分で治せる足首パタパタ』(主婦の友社)がある。
食べるわりに太らないのは代謝が上がっているから
私は幼少期から、原因不明の頭痛や腰痛といった多様な不調に悩まされてきました。
そんななか、20歳を過ぎたころに、人の体を物理生物学的に解析する「構造医学」に出合いました。そして、骨格のゆがみをバランスよく整え、頭痛や腰痛、ひざ痛、肩こりといった、体の痛みやコリの解消法を学びました。
その一つが、私の提案する「骨格体操」です。このおかげで、私は薬なしに一連の不調を克服できました。以来、二十数年間、骨格体操を続けていますが、併せて筋トレも欠かさず行っています。
人間は筋肉が衰えると、代謝が落ち、血液循環が悪くなります。すると、太りやすくなったり、むくみや冷えを招いたりするのです。私自身も代謝が落ちやすい年齢になりましたが、筋トレの成果でしょうか、こうした不調は特にありません。
私はかなり食べるほうで、1食につきご飯を3膳、軽く平らげるときもあります。それほど食べる割に太らないのは、筋肉がしっかりついていて、代謝が上がっているからでしょう。
また、疲労感があるときに筋トレを行うと、体がリフレッシュして疲れが取れます。
私は主に、腹筋運動や背筋運動、足の筋肉を鍛えるトレーニングやスクワットなどを行っています。なかでも代表的なのが、「ゆっくり足首パタパタ」と「つま先立ち」です。詳しくは、下項をご参照ください。
私は車や電車での移動中や、仕事の合間、疲れを感じたときによく行っています。このように、ちょっとしたすきま時間に、こまめにこれらの筋トレを行うといいでしょう。
ゆっくり足首パタパタの注意点は、初めは軽く、除々に大きく行うことです。また、つま先立ちは必ず何かにつかまって行います。転倒予防のほか、左右均等に負荷をかけるためのポイントになります。
ふくらはぎを鍛えると骨格のバランスが整う
この二つの筋トレにより、体内でポンプの役割を果たし、第二の心臓ともいわれる、ふくらはぎが主に鍛えられます。
足首パタパタは骨格体操の一つですが、ゆっくり行うことで筋肉へのいい刺激となります。骨格を整えるほか、ふくらはぎの腓腹筋に加え、すねにある前脛骨筋が鍛えられます。つま先立ちでは腓腹筋が鍛えられます。
このように足首を動かす筋肉を鍛えることで、足がかかとから地面に着地し、親指で蹴るという、足首をしっかり使った歩行ができます。
これは、骨格にとっても大事なことです。この歩行がきちんとできると、骨格のバランスが整います。骨格のゆがみによる体の痛みやコリがある人は、その解消効果が期待できるでしょう。
特に高齢者にとっては、つまずきや転倒が、ときに重症につながることがあります。これらの筋トレにより、つま先を上げやすくなり、つまずかないでスムーズに歩けるようになることで、転倒リスクを防げます。
後ろから見て、足裏がしっかり見えるように歩行をしている人は、きれいに歩けているので問題なし。足裏があまり見えない人は、足首を使って正しく歩けていません。ぜひ、ゆっくり足首パタパタやつま先立ちを行ってみてください。
筋肉が衰えると、筋肉が支えている骨格のバランスも同時に崩れてしまいます。私にとって筋トレとは、一生涯、元気できれいに歩くために必要なものです。
菅沼先生のふくらはぎ筋トレ
★いつ、何回行ってもよい。
1.ゆっくり足首パタパタ

❶イスに座ってかかとをつけたまま、3秒かけて、できるところまで右足の足指を上に曲げる。

❷上げた右足の足指を3秒かけて下ろしつつ、左足の足指も同様に上へ曲げる。
これを5回くり返す。
2.つま先立ち

❶イスの背もたれやテーブル、壁などにつかまる。両足の内くるぶしをぴったりくっつける。
❷内くるぶしをつけたまま、2秒かけてかかとをまっすぐ上げる。このとき、足の親指(母趾)に荷重するように。そのあと、2秒かけて下ろす。これを5回くり返す。

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。
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