近年のコンビニ食は、消費者の健康志向の高まりとともに、品揃えが変わりつつあります。選び方次第では、健康的な食生活のサポートにも役立つようになりました。ここでは、高齢者が陥りがちな食生活の問題点と、それを補う品物の選び方をご紹介します。【解説】平澤芳恵(東京労災病院治療就労両立支援センター管理栄養士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

平澤芳恵(ひらさわ・よしえ)

管理栄養士。東京労災病院治療就労両立支援センター予防医療部。ゲーム制作会社や鉄工業、空港勤務などのさまざまな職種の人に対し、健康診断の結果をもとに栄養指導を行う。夜勤のタクシー運転手への栄養指導の経験から、2016年に『深夜勤務者のための食生活ブック―健康をめざすコンビニ食の選び方―』を制作。2017年にWEB公開したところ、SNSで反響を呼んだ。4月16日に、著書『カラダにやさしいコンビニごはん100』(小学館)が発売予定。

選び方次第で健康的な食生活をサポートできる

高齢者が元気に過ごすには、体力や筋肉量の維持が重要です。そのためには、ある程度の量の食事を、1日3回しっかりとるべきだといわれています。

その上、野菜や肉、魚などのさまざまな種類の食材を食べて、栄養バランスが偏らないようにする必要があります。

しかし、実際には「食欲がない」「調理が面倒」「たくさんの食材を買っても食べ切れない」などの理由で、条件を満たせない人もいらっしゃるでしょう。

特に一人暮らしの人は、一人分の食事を作るのに、わざわざ魚を焼いたり、煮物を作ったりするのがストレスに感じるかもしれません。

そんな人は、コンビニで手軽に買えるご飯、「コンビニ食」を活用するとよいでしょう。

コンビニ食と聞くと、健康に悪いのではと思う人もいらっしゃるかと思います。確かに、少し前までのコンビニ食は揚げ物などが多く、栄養が偏りやすい傾向にありました。

ですが、近年のコンビニ食は、消費者の健康志向の高まりとともに、品揃えが変わりつつあります。選び方次第では、健康的な食生活のサポートにも役立つようになりました。

ポイントは「惣菜の組み合わせ」と「塩分量」

では、その選び方は、どのようにすればいいのでしょうか。

ここでは、高齢者が陥りがちな食生活の問題点と、それを補う品物の選び方をご紹介します。ぜひ、日々の買い物にお役立てください。

多品目を意識する

おにぎりやパン、麺類などの単品で昼食を済ませる。そんな人は、少なくありません。中には、菓子パンやカステラなどのお菓子を食事代わりに食べるという人も。

これでは、栄養が偏ってしまいます。そこでお勧めなのが、主食・主菜・副菜を意識して、コンビニ食を選ぶことです。

例えば、おにぎりを買う場合には、惣菜や具だくさんのスープなどもあわせます。うどんには、サバの水煮缶や卵、乾燥ワカメなどを加えると、たんぱく質やミネラル、食物繊維が補えるのでお勧めです。

理想的なのは、下記の「まごにわやさしいよ」に該当する食材が揃っていること。3食全てでこれを揃えるのは難しいので、せめて1日の中で、これら全部をとれるように心がけましょう。

なお、たくさんの種類を買うのが面倒という人は、多品目がとれる弁当を選ぶという手もあります。弁当に「○品目使用」などの記載があれば、それを買ってみてください。

……豆類
(納豆、豆腐、ミックスビーンズなど)
……ゴマ
(アーモンドやピーナッツもお勧め)
……
(鶏肉、牛肉、豚肉など)
……ワカメ
(のりやヒジキなどの海藻類もお勧め)
……野菜
(緑黄色野菜を特に意識すると◎)
……
(缶詰でもOK)
……シイタケ
(シメジやエノキなどのキノコ類もお勧め)
……イモ
(ジャガイモ、サトイモ、サツマイモなど)
……ヨーグルト
(牛乳やチーズでもOK)
(考案:管理栄養士 平澤芳恵先生)

画像: 【コンビニ食の選び方】選び方しだいで健康食に  血圧や血糖値、中性脂肪値が気になる場合のポイントを紹介

塩分量に気を付ける

日本人は、食事の塩分量が高くなりがち。

特に、高齢者の中には「漬物とご飯で十分」「歯が悪いのでうどんがよい」などの理由から、結果的に、塩分の多い食事を選ぶ人もいらっしゃいます。

コンビニ食の多くもまた、保存や万人ウケの味付けのために塩分量が高めです。

そこで注意したいのが、常に食品表示を見て、塩分量を確認すること。1日の塩分摂取量の目標は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満ですが、コンビニ食での1食分の目安は、3g程度がベストでしょう。

その他にも、うどんの汁は残す、ソースやドレッシングを半分だけ使う、などといった工夫も必要です。

たんぱく質をとる

たんぱく質は、高齢者に不足しがちな栄養素の一つです。成人男女が必要なたんぱく質は、1食につき約20g。食事を1食抜いてしまうと、その分たんぱく質をとる機会が減ります。

近年人気のサラダチキンや大豆ミートは、そんなときに活用したい食材です。低脂肪・高たんぱくなので、主菜や副菜に加えるといいでしょう。

その他に、イカや貝類を使った商品もお勧めです。これらの食材はたんぱく質が豊富でも、調理が面倒で敬遠しがち。アサリたっぷりのパスタなどを選べば、貝のたんぱく質だけでなくミネラルもとれます。

調理が面倒な魚こそコンビニ食を活用すべし

魚を食べる

魚は、栄養が豊富ですが、調理が面倒なのが難点です。いちいち煮たり焼いたりするのが手間で、つい献立から外してしまう、という人も多いのではないでしょうか。

しかし、魚は貴重なたんぱく源な上、青魚には血管の若返りに役立つDHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸が豊富。積極的にとりたい食材の一つです。

そんなときこそ、コンビニ食の出番。コンビニには、1人前の焼き魚や煮魚、魚の缶詰などがあります。調理工程も、レンジでチンや湯せんだけと、とにかく簡単です。

下処理が大変なサバのみそ煮なども、コンビニ食なら簡単に食べられます。ぜひ、活用してみるといいでしょう。

野菜や果物は賢く選ぶ

栄養指導の中で「市販の野菜ジュースで栄養を補えないか」と聞かれることがあります。

しかし、これらは加工の段階で、ビタミンやミネラルの量が減っているものが少なくありません。全ての栄養が抜けているわけではないので、「飲まないよりマシ」程度に考え、補助的に利用するのがいいでしょう。

その上でサラダを選ぶなら、ミネラル豊富な海藻や、食物繊維の多いもち麦、豆類、ビタミンが充実する緑黄色野菜などを使用したものがお勧めです。

また、近年はコンビニでも、新鮮な野菜や果物を販売しています。少し手間はかかりますが、野菜や果物の栄養を充分に得るためには、これらを利用するのが確実です。

健康は、日々の積み重ねでつくられます。特に高齢者は、毎日の食事に気を付けるだけで、体の調子が大きく変わります。

無理のない範囲で、栄養たっぷりの食事をとることこそ、日々を元気に過ごす秘訣。便利で手軽なコンビニ食も活用し、健康維持に努めましょう。

This article is a sponsored article by
''.