コンビニ食には、水溶性の栄養素や土壌菌を摂取できない、生活習慣病などの原因になる材料が使われている、などの問題がありますが、コンビニ食を一切使わない生活が難しい人もいるでしょう。そこで、健康をできるだけ損なわずに、コンビニ食を活用するコツをお教えします。【解説】桐村里紗(内科医・認定産業医)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

桐村里紗(きりむら・りさ)

内科医、認定産業医。フジテレビ『ホンマでっか!?TV』に「腸内環境評論家」として出演。最新の分子栄養療法や腸内フローラなどをもとにした予防医療、生活習慣病などの診療に幅広く携わる。新しい時代のヘルスケアを、テレビや雑誌、インターネットなど多くのメディアで発信中。著書に『「美女のステージ」に立ち続けたければ、その思い込みを捨てなさい』『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(ともに光文社)などがある。

コンビニの野菜は栄養素が失われがち

「台所仕事がつらい」「一人暮らしだから、食事は簡単なものでいい」。そんな理由で、コンビニで売っている弁当や惣菜、通称「コンビニ食」を利用する人は多いようです。

その一方で、「コンビニ食は体に悪い」と考える人も、一定数いらっしゃいます。では、実際のところはどうなのか、見ていきましょう。

コンビニ食のここに注意!
コンビニ野菜ではとれない栄養素がある
コンビニのサラダや煮物は、自宅で作る野菜料理と異なり、水溶性の栄養素や土壌菌を摂取できない。

まずは、栄養素の量。これはコンビニ食と家庭で一から作る惣菜で、大きく異なります。

特に差が大きいのは、煮物やサラダといった野菜類です。

一般に、コンビニの煮物は、水煮野菜に味付けをして作られています。実は、この水煮野菜を作る過程で、水溶性食物繊維やビタミン類などの栄養素の多くが、水とともに捨てられているのです。

一方、家庭で作る煮物は、野菜の煮汁も料理に使います。そのため、煮汁に溶けた野菜のビタミンやミネラル、水溶性食物繊維などを、余さず食べることができます。

この点から考えると、コンビニで売られている野菜の惣菜は家庭の煮物と比べて、圧倒的に栄養が不足していると言えるでしょう。

また、サラダなどの生野菜には、食中毒予防に塩素系消毒剤が使われています。この塩素を抜くために、消毒後の野菜はくり返し水にさらされます。

そのため、サラダも煮物と同様、水溶性の栄養素が減少している状態で販売されています。

また、こうした消毒・殺菌の過程で、農作物が本来持っている土壌菌(土の中にいる微生物)が失われる点も問題です。

畑で収穫された野菜や果物には、水で洗浄した後も、土壌菌が付着しています。土壌菌の多くは加熱や胃酸に強く、生きて腸内まで届きます。

この菌には、乳酸菌や納豆菌の仲間もいます。腸内には定着しませんが、腸内細菌は周囲に多種多様な細菌があるほど、元気になります。そのため、土壌菌のついた農作物を食べると、腸内環境がよくなるのです。

ただし、土壌菌が少ないコンビニの惣菜では、この効果は期待できません。

ミネラル不足の原因になる添加物も

コンビニ食のここに注意!
ミネラル不足になりやすい
「リン酸化合物」などの食品添加物が原因で、体内のミネラルが排出されやすくなる。味覚障害や免疫力の低下、精神の不調につながることも。

次に、食品添加物についてです。コンビニ食で使われている食品添加物の中には、ミネラルを吸着して排出するものもあります。

例えば、食品の色や品質を保つために添加される「リン酸化合物」。これは、「ポリリン酸Na」「ピロリン酸Na」「メタリン酸Na」などと表示されることもあります。

リン酸化合物は、加工食品の多くに添加されています。また、使用目的が同じ、他の添加物と一緒に表示されることもあります。どういうことかというと、「pH調整剤」「乳化剤」などの中に、リン酸化合物が含まれている可能性もあるのです。

こうした添加物によって、ミネラルが排出されると、心身にもさまざまな影響が現れます。

例えば、亜鉛不足になると、味覚障害や免疫力(病気に対する抵抗力)の低下、抜け毛、乾燥肌、性機能の低下などを招きます。鉄不足は、不眠や抑うつ、イライラ、疲労感、立ちくらみなどの原因にもなります。

コンビニ食のここに注意!
とり過ぎると病気の原因になる食品も含まれている
劣化しやすい加工油脂や果糖ブドウ糖液糖など、とり過ぎると生活習慣病などの原因になるものが使われていることも。

コンビニ食に使われる食品で注意すべきものは、これだけではありません。食品添加物の他にも、気を付けなければいけないものがいくつかあります。

一つ目は、パーム油などの加工油脂。安価なので多用される油ですが、これには劣化(酸化)しやすいという特徴があります。劣化した油は、高血圧や動脈硬化、脂質異常症、認知機能の低下などの要因になる上、環境破壊にもつながります。

加工油脂は、おにぎりのツヤ出しや、サラダにのっている輪切りの卵など、意外な商品にも使われています。そのためコンビニ食では、無自覚のうちに多くとってしまいがちです。

二つ目は、小麦粉。麺類やパンなどに使用されている小麦粉のほとんどは外国産です。しかし、これには発がんリスクの高い除草剤が残留しているものもあります。

三つ目は、果糖ブドウ糖液糖。砂糖より安価で、甘味料としてよく使用されている添加物ですが、動脈硬化や肥満などの生活習慣病のリスクを高める可能性があるといわれています。

コンビニ食のここに注意!
糖質過多になりやすい
コンビニ食生活を続けていると、おにぎりやパン、麺類などの糖質を多くとってしまいがち。この糖質のとり過ぎが原因で、カンジダ菌が変質し、腸内環境の悪化などを引き起こす可能性がある。

品揃えで見ると、糖質過多になりやすい食べ物が多いのも気になります。実際、おにぎりやパン、麺類などで簡単に昼食を済ませたり、お菓子をつい買ってしまったり、という人は多いのではないでしょうか。

糖質過多な食生活が続くと、腸内では「カンジダ菌」が変質します。通常のカンジダ菌は、かわいらしい丸型で、腸内ではほとんど悪さをしません。

しかし、エサである糖質が腸内に増えると、とがった形状に変化して腸壁に根を張ります。それにより、腸内で炎症を起こしたり、腸内環境を悪化させたりするのです。

また、別記事のマンガでは、100日間コンビニ食生活をした人の体験談があります。それによると、集中力の低下や胃の不快感、体臭の出が早いなどを感じたそうです。

メンタル面の不調は、ミネラルやビタミンなどの不足や、腸内環境の悪化が関係していると思われます。

胃の不快感や体臭は、腸内環境悪化に加え、劣化した油のとり過ぎによるものでしょう。特に加齢臭は、皮脂と過酸化脂質(酸化した脂質)が結びついて発生するので、これも関連していると考えられます。

画像: ミネラル不足の原因になる添加物も

健康を損なわずにコンビニ食を活用するコツ

これまで、コンビニ食を食べる上での注意点を述べました。しかし、そうは言っても、コンビニ食を一切使わない生活が難しい人もいるでしょう。

そこで最後に、健康をできるだけ損なわずに、コンビニ食を活用するコツをお教えします。

パンよりもおにぎりを選ぶ

前述の通り、パンの多くには外国産の小麦粉が使われています。また、菓子パンなどは糖分も気になります。おにぎりには、食物繊維やミネラル豊富な雑穀入りのものもあるので、うまく活用しましょう。

海藻類やナッツ、卵をプラス

モズク酢や酢コンブなどの海藻には、コンビニ食で不足しがちな水溶性食物繊維やミネラルが豊富。抗酸化力の高いビタミンEやミネラル、たんぱく質が多く含まれるナッツや、余計な油脂がない殻付き卵などもお勧めです。

腸によい食材を意識する

ヨーグルトだけではなく、腸内細菌のエサとなる食物繊維が豊富なバナナなどを加えれば、腸内環境の維持に役立ちます。

その他、最終手段としては、サプリメントでビタミンやミネラルを補うのも、一つの方法です。マルチビタミンなどは、コンビニでも取り扱いがあるところが多いので、そういったものを活用してもいいでしょう。

何ごとも、過ぎたるは及ばざるがごとし。栄養面などにも気を付けながら、上手にコンビニ食と付き合ってください。

画像: この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.