目の血流が緑内障の病状を左右することは、最新の研究によっても明らかにされています。食べ過ぎ、甘い物好き、油っこい物のとり過ぎなどは、血流を悪くする大きな要因になります。また、血流改善のためには、ゆったりした散歩ペースで、楽しみながら歩くことが大切です。【解説】山口康三(回生眼科院長)

解説者のプロフィール

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山口康三(やまぐち・こうぞう)

回生眼科院長。1981年自治医科大学医学部卒業。横浜市立市民病院などを経て、91年より現職。食事や運動、睡眠などで綜合的に対処する「目の綜合医療」を考案。著書『緑内障・白内障は朝食抜きでよくなる』(マキノ出版)が好評発売中。
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緑内障とはどんな病気?

緑内障は、眼圧(眼球内の圧力)が高いことにより、視神経が障害され、視野が欠けていく(見える範囲が狭くなっていく)病気です。進行すると、最終的には失明に至ります。現在、日本では、緑内障が成人の失明原因の第1位となっています。

統計では、40代以上の20人に1人に見られ、加齢とともに増加し、70代以上では10人に1人の割合となります。

まずは、緑内障の起こるしくみと種類からお話しします。

眼圧は、目の角膜と水晶体で挟まれた部分に満ちている房水という液体の量次第で上下します。房水は、水晶体の周囲にある毛様体から分泌され、角膜のふちの出口(隅角)から静脈に流れ出ます。その分泌量と排出量が釣り合っていれば、眼圧は一定に保たれます。

画像1: 緑内障とはどんな病気?

ところが、出口が狭くなったり、出口にあるフィルター(線維柱帯)が目詰まりしたりすると眼圧が上がります。すると、眼球の後ろ側にある視神経が圧迫されてダメージを受け、緑内障が起こってしまうのです。

緑内障には、房水の出口が狭いタイプ(閉塞隅角緑内障)と、出口は広いけれどもフィルターの目詰まりなどで流れが悪くなるタイプ(開放隅角緑内障)があります。前者は症状が急激に進むことがあり、後者は徐々に進みます。

画像2: 緑内障とはどんな病気?

日本人の緑内障の約7割は後者です。さらにその大部分は、眼圧が正常範囲(10〜21mmHg)でありながら、視神経が障害される「正常眼圧緑内障」です。

「緑内障は眼圧が高いために起こる」と言いながら、眼圧が正常でも起こるのは妙な感じがします。これは、もともと視神経が弱い場合や視神経の血流が悪い場合などに、眼圧が正常範囲でも、その人の許容範囲を超えているため、緑内障を起こすと考えられています。

注意したいのは、日本人の緑内障の大半が正常眼圧緑内障なので、眼圧の検査を受けるだけでは発見が遅れやすくなることです。あわせて視野検査や眼底検査を受けることが大切です。

ときどき自分で、一方の目ずつ(他方の目をふさいで)見え方を確かめるのもよいでしょう。両目で見ると、補い合って異常が発見しにくいので、一方の目で見るのがポイントです。

目の血流が緑内障の病状を左右する

緑内障の症状は、最初は部分的にすりガラスを通したような見え方になります。そこが、次第に雲をかぶったようになり、やがて見えなくなります。欠損する部分は、周囲からであったり、中央付近からであったりとさまざまです。

こうした症状が出るのは、かなり進行してからです。そのため、眼科での定期健診を受け、自覚症状が出る前に発見することが大切です。

緑内障の治療は、眼圧を下げることが基本です。これは、眼圧が正常の範囲内でも、その人の目には負担になっていると考えられているためです。

まずは、眼圧を下げる点眼薬を継続的に使います。眼圧が高過ぎる場合は正常範囲を、正常眼圧緑内障では目安として10mmHg台の前半(10〜14mmHg程度)を目指します。

点眼薬では十分に眼圧が下がらなかったり、視野の欠損が進んだりする場合、レーザー治療や手術が行われます。

知っておきたいのは、これらは眼圧を下げるための方法で、緑内障自体を治す治療法ではないということです。1度では効果が不十分で、2~3度と受けることになる場合も少なくありません。

緑内障治療の効果は個人差が大きく、点眼薬だけ、あるいは1度の手術で悪化を防いでいる人も多い一方、こうした治療だけでは進行を止められない人も多くいます。

だからこそ、成人の失明原因の第1位なのです。

なぜ、そういうことになるのでしょうか。私は、長年の臨床経験から、眼圧のコントロールも大切ですが、目の血流だけでなく、全身の血流をよくすることが、緑内障の治療には欠かせないと考えています。

目の血流が緑内障の病状を左右することは、最新の研究によっても明らかにされています。

実際、目や全身の血流を促す生活改善を行っていただくと、手術でも止められない眼圧の上昇や緑内障の進行が止まる例を多く経験しています。視野などの検査結果が改善した人も少なくありません。

私が治療に取り入れている東洋医学では「局所の病気を治す早道は全身を治すこと」とされます。これは、特に緑内障に当てはまる言葉ではないかと常々思っています。

具体的な生活改善法については、次項でご紹介しましょう。

食事は量を減らし質を高めることが重要

緑内障の進行抑制や改善に役立つ生活改善はいろいろありますが、中でも重要で、ぜひ行っていただきたい2本柱が「少食」と「歩くこと」です。

順に理由とやり方を述べましょう。

ここでいう少食は、食事の量を減らすだけではなく、同時に質を高めることを意味します。

緑内障になった人の食生活を聞くと、食べ過ぎ、甘い物好き、油っこい物のとり過ぎなどが目立ちます。これらは、血流を悪くする大きな要因になります。

食事の量を減らして質をよくしていけば、全身の血流、ひいては目の血流が促せます。

また、少食にすると、体の修復に必要な各種のホルモンの分泌が高まります。同時に、体の変質したたんぱく質などを分解する「オートファジー(自食)」というしくみも活性化することがわかっています。

これらは全て、緑内障の進行抑制や改善につながります。

私は、少食を以下の3段階で実践することを勧めています。

間食・夜食をやめる

間食や夜食をやめるだけでも、目によい影響が出やすくなります。特に、甘い物は毛細血管をつぶして血行を悪くするので、間食や夜食をやめることは、目を守るために大きな意味があります。

腹八分目にする

過食を続けると、血液をドロドロにして血流を悪くする活性酸素が多く発生します。腹八分目を心掛けると、それを防いで血流を促すのに役立ちます。

また、目は脳の出先機関で、脳の一部といえます。「腸脳連関」という言葉がある通り、腸と脳は密接に関係しています。腹八分目の食事は、消化器への負担を減らし、腸、ひいては脳を元気にするので、目にもよい影響を与えます。

よくかんでゆっくり食べると、腹八分目でも満足感を得やすくなります。主食を玄米や胚芽米にすれば、なおよいでしょう。

朝食を抜く

腹八分目に慣れたら、それを続けつつ、朝食を抜いてみましょう。これで、さらに食事全体の約3分の1が減らせます。

しかも、長時間、腸が休めるのでさらに腸が健康になり、脳と目によい影響が与えられます。野菜ジュースや豆乳、すまし汁といった飲み物を、朝食代わりに飲んでもよいでしょう。

理想は1日合計で1万3000歩

少食とあわせて、ぜひ実行していただきたいのが「歩くこと」です。

お勧めしている歩数の目安は、1日に1万3000歩です。室内の歩数や買い物、通勤時などとの合計でよく、小分けにしても構いません。

歩くことで、全身と目の血液循環がよくなります。また、前述したオートファジーのしくみも、少食と歩くことを組み合わせると、より活性化します。

これらの効用を得るには、しゃかりきになって義務感で歩くのは逆効果で、ゆったりした散歩ペースで、楽しみながら歩くことが大切です。

なお、ストレスも緑内障の悪化要因です。ですから、散歩ペースで歩くことをストレス解消にも役立てると、さらによいでしょう。甘い物でストレスを解消していた人も、この機会に、歩くことをストレス解消法に代えてみてください。

これらとともに、以下のことも心掛けるとより効果的です。

十分な睡眠をとる。睡眠時無呼吸症候群があれば治療する

冷えを防ぐ

肉類、カフェイン、アルコールをとり過ぎない

希望と生きがいを持つ

緑内障と診断されて、ひどく落ち込む人も多くいます。しかし、ぜひ希望を持って、ここに挙げた生活改善に取り組んでいただきたいと思います。

どんな病気も同じですが、とりわけ緑内障は、医師に任せきりではなく、患者さん自身が自分の主治医のつもりで、積極的に治す気持ちになることが重要な病気です。

ぜひ「名医」になって、これらの生活習慣をうまくとり入れてみてください。

■■ 緑内障を改善させる生活の心得 ■■

「少食」

空腹を愉しむ
おなかがグーッと鳴っているときは、どんどん病気が治っている時間。体を治すホルモンが分泌され、老廃物が処理されています。ぜひ、我慢ではなく、愉しんで。
玄米がお勧め
少食にした際、質の悪い食事では栄養不足になります。玄米には、ビタミンやミネラル、抗酸化成分が豊富。発芽させてから食べると、消化がよくなります。
よくかんでゆっくり食べる
満腹感が得られる上、唾液や消化液が出ます。

「歩く」

目的は血流改善
全身のすみずみまで血行をよくするには、ゆったりとしたペースの運動が最適。激しい運動は逆効果です。休みながら行っても構いません。
柔軟体操をする
歩く前後や夜寝る前などにストレッチなどを行います。体が柔軟な方が血行はよくなります。

画像: この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。

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