ニンニク由来の成分の中で近年、注目されているのが「S-アリルシステイン」です。免疫細胞のNK細胞を活性化させ、特に大腸がんの予防効果があるといわれています。ただ、生のニンニクはS-アリルシステインをわずかしか含んでいません。そこで考案したのが「ニンニク塩麹」です。【解説】髙橋徳江(順天堂大学医学部附属浦安病院栄養科・管理栄養士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

髙橋徳江(たかはし・とくえ)

女子栄養大学実践栄養学科卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院栄養部に勤務。2018年より順天堂大学医学部附属浦安病院栄養科へ異動。現在課長として、栄養指導や栄養管理業務に従事。 

有効成分をより効率的にとるために考案

ニンニクには、「アリイン」をはじめとする有機硫黄化合物が豊富に含まれています。さらにニンニクを調理や加工すると化学反応が起こり、さまざまな物質が生成されることが知られています。

こうしたニンニク由来の成分の中で近年、注目されているのが「S-アリルシステイン」です。これは、ニンニクだけに含まれる水溶性のアミノ酸の一種です。

このS-アリルシステインには、さまざまな健康効果があります。中でも有名なのが、がん細胞を攻撃する免疫細胞のNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる作用です。がん予防、特に大腸がんの予防効果があるといわれています。

他にも、活性酸素の害を防ぐ抗酸化作用による高血圧、高血糖の改善、脳の神経細胞を保護して認知症を予防する作用などがあると期待されて、研究が進められています。

ただ、生のニンニクはS-アリルシステインをわずかしか含んでいません。

そんなS-アリルシステインを、「より効率的にとれる調理法を考えてほしい」と、あるテレビ番組から依頼を受けました。

そこで考案したのが、今回ご紹介する「ニンニク塩麹」です(詳しい作り方は下項)。

ヒントになったのは、ニンニク生産量日本一の青森県で盛んに作られている熟成ニンニクです。

熟成ニンニクとは、ニンニクを酢やしょうゆなどに長期間漬け込んで作ります。普通のニンニクと比べて、S-アリルシステインの含有量が多いことが一つの長所です。

番組の調査では、普通のニンニク1g中に含まれるS-アリルシステインは30‌μgでした。これを基準値とした場合、ニンニクを3年間酢漬けにしたものは3.8倍、1年しょうゆ漬けは10.5倍、3年焼酎漬けは11.5倍もS-アリルシステインを含んでいました。

とはいえ、一般家庭でニンニクを何年も漬け込み、熟成させるのは現実的ではありません。なんとか一晩の熟成でS-アリルシステインを増やせないかと、調理法を研究しました。

ニンニクをすりおろしたり、刻んだりした後、電子レンジで加熱したり、オリーブ油で煮たりと、さまざまな方法を試しました。

すりおろしただけのニンニクは、S-アリルシステインの含有量が0.7倍と、生のニンニクよりも減ってしまいました。一方、みじん切りにしたニンニクは1.8倍と含有量が少し増えました。

さらに、みじん切りにしたニンニクに塩麹を加えて一晩寝かせると、発酵が進んでS‐アリルシステインが2.7倍まで増えるとわかったのです。

ニンニク塩麹は、みじん切りにしたニンニクを電子レンジで軽く温めてから、塩麹と混ぜ合わせ、陽の当たらない場所で室温で一晩寝かせるだけで完成します。

これを毎日大さじ1杯(15g)を目安にとることをお勧めします。大さじ1杯で、ニンニク1片とほぼ同量です。

料理の調味料としてニンニク塩麹を大さじ1杯使えば、ニンニク2.7片分のS-アリルシステインがとれる計算になります。

画像: 【ニンニク塩麹の作り方】一晩で作れて有効成分が2.7倍に増える  どんな料理にも使える万能発酵調味料

ニンニク塩麹の健康効果
がんの予防
認知症の予防
高血圧の改善
高血糖の改善

豚肉がやわらかくなり疲労回復効果も期待

ニンニク塩麹は、冷蔵庫で2週間程度は保存可能です。その間にさらに熟成が進み、S-アリルシステインがますます増えることも考えられます。加熱によってニンニク特有の匂いは減り、ほのかに香ばしく、調味料として、どんな料理にも合います。

特に豚肉との相性は抜群です。ニンニク塩麹を20分まぶしておくと、肉が軟らかく、おいしくなります。豚肉にはビタミンB1‌が多く含まれていますが、ニンニク成分のアリシンがビタミンB1と結合すると体内への吸収がよくなり、疲労回復の効果も期待できます。

また、発酵食品の塩麹は腸内環境をよくしてくれます。

腸には全身を守る免疫細胞の約7割が集まっており、腸内環境が整うことによって、免疫力(病気に対する抵抗力)も高まります。S-アリルシステインの作用とあいまって、がんの予防に二重によい効果が期待できるでしょう。

ただし一点、注意したいのは塩分です。市販品の塩麹には、かなりの塩分が含まれています(塩分濃度が13~15%程度)。ですから、その分、他の料理に使う塩分量を減らすなどして、とり過ぎを防いでください。

また、S-アリルシステインは水溶性なので、汁が出るような料理の場合、できるだけ汁ごと食べると、有効に摂取できます。

例えば、ひき肉にニンニク塩麹を混ぜて肉団子にして、野菜と一緒にスープにして食べるののもお勧めです。

ニンニク塩麹の作り方

画像1: ニンニク塩麹の作り方

【材料】(作りやすい分量)
ニンニク…1玉
塩麴…50g

画像2: ニンニク塩麹の作り方

ニンニクを1片ずつに分け、皮をむく。水で洗い、キッチンペーパーなどで水気を拭き取る。

画像3: ニンニク塩麹の作り方

①をみじん切りにする。

画像4: ニンニク塩麹の作り方

耐熱容器に入れて、ラップをふんわりとかけ、500Wの電子レンジで30秒ほど加熱する。
【加熱の目安】ニンニクがほんのりと温かくなり、香りがほのかに立つまで加熱する。

画像5: ニンニク塩麹の作り方

③と塩麴50gを密閉できる保存袋に入れて、しっかりともんで混ぜ合わせる。

画像6: ニンニク塩麹の作り方

日の当たらない場所で一晩寝かせれば完成。

【食べる量の目安】
1日全体で大さじ1(15g)を目安に食べる。汁ごと食べるようにすること。

【保存方法】
密閉できる袋や容器に入れて、冷蔵庫で保存する。2週間以内に使い切るようにする。

画像: この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年5月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.