解説者のプロフィール

北村明彦(きたむら・あきひこ)
八尾市健康まちづくり科学センターセンター長。1989年筑波大学大学院医学研究科を修了。大阪府立成人病センター、大阪府立健康科学センター、大阪がん循環器病予防センター、大阪大学で診療・研究・教育に従事。2016年より東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム研究部長を務め、2021年4月より現職。著書に『100年時代の健康法』(サンマーク出版)。
フレイルは脳卒中、認知症、喫煙以上に高リスク
2020年、日本国内の百寿者(100歳以上の長寿者)の人口が、初めて8万人を越えました。
では、現在の70代の人々が百寿者となる2050年頃、百寿者はどれぐらいになると予測されているかご存じですか?
厚生労働省の予測では、なんと50万人。現在65歳の男性の4%、女性の16%は100歳まで生きると推定されています。

※グラフは「人口ピラミッドデータ」(国立社会保障・人口問題研究所)を元に安心編集部で作成
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/PopPyramid2017_J.html
「人生100年時代」が実現する中で、大切なこと。それは元気に自立して過ごせる「健康寿命」をいかに延ばせるかということです。「寝たきりでいいから、1日でも長く生きたい」と願う人は少ないはずです。
2016年の統計では、平均寿命が男性80.98歳、女性は87.14歳。それに対して健康寿命は、それぞれ72.14歳、74.79歳と、8~13年の差があります。
この健康寿命と平均寿命の差をできるだけなくしていくために、今、さまざまな研究が進んでいます。

※グラフは令和2年版厚生労働白書より作成
その最大のキーワードとなるのが、「フレイル」です。
フレイルとは、
〇力(握力など)の低下
〇身体活動量の低下
〇動作の遅さ
〇疲労・疲弊
〇体重の(意図しない)減少
など、病気ではないけれども機能的に不健康な、「自立した生活を送るための心身機能が低下して、要介護状態の一歩手前まで来ている状態」を指します。
実はフレイルは、喫煙や脳卒中、認知症、糖尿病といった要素以上にリスクの高い、健康寿命を脅かす最大の要因だということが、私たちが行った調査で判明しました。
特にあなたが65歳以上なら「何よりもフレイル予防が最優先」として、壮・中年期(30~64歳)までとは考え方を大きく変化させる必要があります。
まず、下のチェックリストに回答してください。そして、次ページからのQ&Aを参考に健康寿命を延ばしていきましょう。
自分のフレイル度がわかるチェックリスト
■それぞれ条件に合う答えのときに1点と数え、合計点を出してください。
【身体機能】
❶この1年間に「転んだこと」がありますか?
→「はい」で1点
❷「1kmくらいの距離」を不自由なく続けて歩くことができますか?
→「いいえ」で1点
❸「目」は普通に見えますか?(*メガネを使った状態でもよい)
→「いいえ」で1点
❹「家の中」でよくつまずいたり、滑ったりしますか?
→「はい」で1点
❺転ぶことが怖くて「外出」を控えることがありますか?
→「はい」で1点
❻この1年間に「入院」したことはありますか?
→「はい」で1点
【栄養】
❼最近、「食欲」はありますか?
→「いいえ」で1点
❽現在、たいていの物は「かんで」食べられますか?(*入れ歯を使ってもよい)
→「いいえ」で1点
❾この6ヵ月間に「3kg以上」の体重の減少がありましたか?
→「はい」で1点
❿この6ヵ月間に、以前に比べて「体の筋肉」や「脂肪」が落ちてきたと思いますか?
→「はい」で1点
【社会参加】
⓫1日中家の外には出ず、「家の中」で過ごすことが多いですか?
→「はい」で1点
⓬普段2、3日に1回程度は「外出」しますか?(*庭先のみやゴミ出し程度の外出は含まない)
→「いいえ」で1点
⓭家の中あるいは家の外で、趣味、楽しみ、好きでやっていることがありますか?
→「いいえ」で1点
⓮親しくお話しできる近所の人はいますか?
→「いいえ」で1点
⓯近所の人以外で、親しく行き来するような友達、別居家族または親戚はいますか?
→「いいえ」で1点
合計[ ]点
*4点以上の場合、フレイルが疑われます。
*特に当てはまる項目が多かった分類(身体機能・栄養・社会参加)を重点的に対策しましょう。
*対象年齢は65歳以上ですが、64歳以下の人も今後のリスク判断に活用してください。