首のリンパ流しを行うと、頭や顔のむくみ改善や、肌ツヤや血色がよくなる効果はもちろん、頭痛や不眠、肩こりや目の疲れなどの改善にもつながります。また、免疫細胞の一つであるNK細胞が活性化するため、免疫力を高め、疲れにくい体づくりにも役立ちます。【解説】佐藤佳代子(さとうリンパ浮腫研究所代表)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

佐藤佳代子(さとう・かよこ)

さとうリンパ浮腫研究所代表。NPO法人日本医療リンパドレナージ協会理事。96年、鍼灸あん摩マッサージ指圧師資格取得。07年、学校法人後藤学園附属リンパ浮腫研究所所長、10年、ドイツ連邦共和国医療マッサージ士国家資格取得。12年、リンパ浮腫療法士認定(日本リンパ浮腫治療学会)。主な著書、共著に、『DVD暮らしのなかのリンパ浮腫ケア実践ガイド』(青海社)、『リンパマッサージ健康法』(PHP 研究)など多数。

リンパの流れが滞るとむくみやコリの原因に

私たちの体内には、血液とリンパ液という2種類の液体が流れています。心臓から全身へ巡る動脈の血液は、新鮮な酸素と栄養素などを体中の細胞に運びます。一方、全身から心臓へと戻る静脈の血液は、細胞の活動によって生じた二酸化炭素や老廃物を回収します。

細胞の周囲は組織液で満たされていて、組織液を介して栄養と老廃物のやりとりが行われています。静脈に並走して回収する役割を果たしているのが、リンパ管です。二酸化炭素と老廃物を含んだ組織液の約90%は静脈に戻ります。

残りの約10%は、リンパ管に吸収されリンパ液となります。リンパ管に回収されるのは、血管に取り込まれないたんぱく質や脂質、細菌、ウイルスなどの異物です。

画像: 血管に取り込まれない物質がリンパ管に吸収される。

血管に取り込まれない物質がリンパ管に吸収される。

リンパ管が合流するところにはリンパ節があり、関所のような役目をしています。ここでリンパ液に含まれる異物や有害物質のろ過や除去が行われます。

体内を流れながらきれいになったリンパ液は、最終的に静脈へ合流します。つまり、リンパ管は体内の組織液を浄化して、血液循環に戻す重要な働きをしているのです。

リンパ管は全身に網の目のように張り巡らされています。1分に10回ほどの自動運動に加え、呼吸や歩行時の筋肉の収縮といった、外部の力を受けてリンパ液を押し流しているため、その流れはとても穏やかです。

リンパ液の流れが滞ると、さまざまな悪影響が及びます。その一つが「むくみ」です。リンパ管や静脈に回収されるべき水分が皮下組織に残り、むくみが生じるのです。また、疲労物質が溜まることで、体の不調やコリにもつながります。

老廃物が回収されコリや疲れが改善

特に、耳周りから鎖骨にかけては、重要なリンパ節が集中しています。顔と頭のリンパ液は、耳の前後、あごの下、後頭部などにあるリンパ節に流れ込み、首の両わきにあるリンパ節を通り、鎖骨の奥の静脈角(リンパ管と静脈の吻合部)というリンパ管のゴールに向けて流れていきます。

画像: 首から上の主なリンパ節

首から上の主なリンパ節

この領域のリンパの巡りを整えるケアとして、お勧めしたいのが、「首のリンパ流し」です。手のひらでやさしくマッサージして、リンパの流れをよくします。やり方は下項をご覧ください。

首のリンパ流しは決して力を入れず、皮膚をそっとなでるような、やさしいタッチで行いましょう。リンパ管は皮膚の表面近くにあるので、力を入れて押したりもんだりしなくても十分に効果が得られます。

1日のうち、どのタイミングで行ってもかまいません。顔が最もむくみやすい朝には、洗顔やスキンケアのついでに、夜には入浴時の頭を洗うときに併せて行うのがお勧めです。一度にたくさん行うよりも、毎日少しずつ続けるとより効果的です。

首のリンパ流しを行うと、滞りがちな頭から首にかけてのリンパの流れがよくなります。頭や顔のむくみ改善や、それによる小顔効果はもちろん、継続することで皮膚の新陳代謝がよくなります。肌ツヤや血色がよくなる効果も期待できます。

老廃物が回収されて巡りがよくなると、頭がスッキリして頭痛や不眠、肩こりや目の疲れなどの改善にもつながります。

またリンパ節は、免疫機能の一端を担う器官でもあります。体内に病原体が侵入すると、リンパ節の中で免疫細胞や抗体(体内に侵入した病原体を排除するために働くたんぱく質)が活性化し、異物を取り除くように働きます。

カゼをひいたとき、あごの下やのどが腫れたことはありませんか? これは、リンパ節が免疫反応を発動させているときに起こる反応です。

首のリンパ流しを行うと、血液中の免疫細胞の一つであるNK細胞が活性化することがわかっています。

首のリンパ流しは、免疫力を高め、疲れにくい体づくりにも役立ちます。ただし、感染症や肌の炎症を起こしているときは控えてください。

私自身も20年以上、首のリンパ流しを日々続けています。ベストコンディションを維持するセルフケアとして、暮らしに取り入れてはいかがでしょうか。

首のリンパ流しのやり方

首のリンパ流しで使う手の動かし方

【ずらす】
皮膚に手のひら全体を密着させて、3~5回、目的のリンパ節へ向けて円を描く。手の重みだけで皮膚を動かすタッチで行う。

画像1: 首のリンパ流しのやり方

【流す】
皮膚に手のひら全体を密着させて、目的のリンパ節に向けてやさしくなでる。手の重みだけで皮膚を動かすタッチで行う。

画像2: 首のリンパ流しのやり方

【ポイント】
・❶~❼を1セットにして、朝と夜に1回ずつ、または疲れを感じたときに行う(目安。何回行ってもよい)
・1セットまとめてでなく、個々に分けて行ってもよい。
・朝は洗顔やスキンケアのとき、夜は入浴時の頭を洗うときに併せて行うのがお勧め。
・カゼがひどいとき、感染症にかかっているとき、肌に炎症が起こっているときは行わない。

鎖骨のくぼみに両手を当てて、「ずらす」。

画像3: 首のリンパ流しのやり方

首のつけ根、首のつけ根と耳たぶの中間、耳たぶの下の3箇所に両手を当てて、「ずらす」。次に、耳たぶ辺りから鎖骨のくぼみに向けて「流す」。

画像4: 首のリンパ流しのやり方
画像5: 首のリンパ流しのやり方

人差し指と中指で両耳を挟むように軽く当て、ほかの指も皮膚に密着させたまま「ずらす」。次に、鎖骨のくぼみに向けて「流す」。

画像6: 首のリンパ流しのやり方

あごの先端の下に両手の親指の腹を当てる。そのまま、あごのラインに沿って、耳までなでるようにゆっくり「流す」。

画像7: 首のリンパ流しのやり方

ほおに両手を当てて、耳の前に向けて「ずらす」。次に、鼻全体と口角まで手のひら全体で包むように鼻すじに両手を当てて、「ずらす」。同様に額に両手を当て、「ずらす」。最後に、こめかみ、耳の前、首の横を通って、鎖骨のくぼみに向けて「流す」。

画像8: 首のリンパ流しのやり方
画像9: 首のリンパ流しのやり方
画像10: 首のリンパ流しのやり方

首の後ろのつけ根、首の後ろをそれぞれ順に「ずらす」。次に、首の後ろから首のつけ根を通って、鎖骨のくぼみに向けて「流す」。

画像11: 首のリンパ流しのやり方
画像12: 首のリンパ流しのやり方

頭皮に直接ふれるように、後頭部の下端、後頭部の真ん中、頭頂部をそれぞれ順に「ずらす」。次に、頭頂部から後頭部、首の後ろを通って、鎖骨のくぼみに向けて「流す」。

画像13: 首のリンパ流しのやり方
画像14: 首のリンパ流しのやり方
画像15: 首のリンパ流しのやり方
画像: この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。

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