首の過緊張の症状ですが、まず肩や首のコリ、背中の張りとして現れます。それを、ほうっておくと、腕や手の痛み、しびれなどにつながることもあります。「首引っ張り」は、指圧法を原点とし、骨の状態を正常に戻すカイロプラクティックの観点も取り入れて考案しました。【解説】島崎広彦(オフィス・シマザキ院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

島崎広彦(しまざき・ひろひこ)

オフィス・シマザキ院長。1968年、東京生まれ。あん摩マッサージ指圧師、上部頸椎カイロプラクター。88年、オフィス・シマザキ開院。口コミで評判となり、3年めには全国から患者が訪れる治療院となる。その後も、本場アメリカにて上部頸椎カイロプラクティックの開発者、B. J パーマー最後の直弟子Dr.クラウダーに師事。著書に『首を整えると脳が体を治しだす』(アチーブメント出版)、『痛みもコリも首次第』(清流出版)などがある。
▼オフィス・シマザキ(公式サイト)

首の筋肉の過緊張が手の痛みにつながる

私の治療院を訪れる患者さんには、整形外科などで痛みやしびれが取れなかったという人が多くいます。しかし、首の筋肉に働きかけて、神経の圧迫を緩めると、その場で症状が取れることは少なくありません。

脳と全身を結ぶ神経は、頭蓋骨から頸椎と背骨の中を通って、枝分かれしています。例えば、頸椎と胸椎の右側からは右腕に向かう神経が、左側からは左腕に向かう神経があります。鎖骨の下をくぐり、わきの下、ひじ、手首を通って指先まで分布しているのです。

画像: 中に手へ向かう神経があるため、頸椎が圧迫されると、手の痛みが生じる

中に手へ向かう神経があるため、頸椎が圧迫されると、手の痛みが生じる

このように、首には重要な神経がたくさん通っているので、首の筋肉が固くなり緊張すると、神経が圧迫されて、手の痛みやしびれなどが起こります。同時に、神経に栄養を運ぶ血管も圧迫されるので、神経が血行障害や酸欠状態に陥ります。

そこで、首の筋肉をほぐし、神経の圧迫を改善すると、痛みやしびれなどの症状が回復する、というわけです。

では、なぜ首の筋肉による神経の圧迫が起こるのでしょうか。いちばん大きな原因として、ふだんの姿勢の悪さが挙げられます。

加齢で筋肉が衰えると、背中が丸くなり首が下がってきます。また最近では、スマートフォンやパソコンを使用する際に首が前に出たり、反ったりするため、過度に首へ負担がかかっている人が増えています。その結果、首の筋肉が過緊張するのです。

首の過緊張の症状ですが、まず肩や首のコリ、背中の張りとして現れます。それを、ほうっておくと、腕や手の痛み、しびれなどにつながることもあります。

頭がスッキリして後頭部の痛みも改善

こうした首の過緊張の解消にお勧めしたいのが、「首引っ張り」です。

このセルフケアは、指圧法を原点とし、骨の状態を正常に戻すカイロプラクティックの観点も取り入れて考案しました。詳しいやり方は、下項をご覧ください。

首引っ張りは、手の痛みやしびれ、首や肩のコリだけでなく、不眠、目のかすみ、鼻づまりの改善のほか、呼吸が楽になる、ぼんやりした頭がスッキリするといった効果も期待できます。 

また、後頭部がよく痛くなる人は、頭周りや首の後ろ、肩の辺りの筋肉が緊張していることが多いものです。これも、改善できるでしょう。

ストレートネックが気になる人は、ラップの芯をタオルで巻いた枕を、首の下に置いて寝るとさらに効果的です。

重い頭を支えている首には、常に負担がかかっています。今はつらい症状がない人も、首の負担を解消することで、不調を未然に防げます。

ただし、ネコ背で、背中が丸まっている人は、首引っ張りを行うときには枕をしいてください。枕なしではあごが上がり過ぎ、首も反り過ぎて首の血管が圧迫されます。

また、多少は力を入れる必要がありますが、グリグリと押し込まないようにしてください。

両手がしびれている場合は、脊柱管狭窄症の可能性があります。また、糖尿病や高脂血症も、両手両足がしびれる症状があります。このようなときは、首引っ張りでは改善できません。一度、検査を受けることをお勧めします。

首引っ張りのやり方

画像1: 首引っ張りのやり方

首の後ろ側に右手を回し、後頭部の端かつ首の横の辺りで、人差し指、中指、薬指で少し引くと、引っかかる骨の部位を探す。そこから、少しかたい引き戸を引くイメージで、3本の指を背骨側にグッと引く。

画像2: 首引っ張りのやり方

3本の指を横にずらさず、首の中間辺りまで下げて、背骨側にグッと引く。さらに首の付け根まで下げて、同様に行う。

画像3: 首引っ張りのやり方

3本の指を横(後ろ側)にずらして、①~②を行う。首の真後ろまで行ったら、左手で逆側を①から同様に行う。

以上を、座りながらか、あお向けになって昼と夜に1回ずつ行う。あお向けで行ったり、反対の手を3本の指に重ねて押したりすると、圧を加えやすい。

画像4: 首引っ張りのやり方

ストレートネックが気になる人は、下記の「ラップ枕」を首の下に置いて、5分あお向けに寝るのを併せて行うと効果的。

画像5: 首引っ張りのやり方

【ラップ枕】
・ラップの芯······1本
・タオル········1枚
ラップの芯をタオルで巻いて出来上がり。

頸椎ヘルニアによる左手のしびれが改善

では、首引っ張りやそれに類する施術で、症状が改善したかたの症例を紹介します。

症例① Aさん(55歳 女性)
Aさんは、長年、肩こりと頭痛に悩んでいたところ、さらに左手にしびれも出てきたので、整形外科を受診したそうです。レントゲンでは頸椎の骨と骨の間が狭くなっていて、頸椎ヘルニアと診断されました。しかし、手術をするほどではない、ということでした。

そこでAさんは、私の著書を見ながら首引っ張りを毎日続けたところ、コリやしびれが改善しました。そして、首のセルフケアをもっと教えてほしいと、当院を訪ねてきたのです。

問診では、料理と読書が趣味と答えていたので、日常的に下を向く時間が長かったのでしょう。そのため、首の筋肉がかたくなり、コリやしびれなどの症状が現れたと考えられます。

症例② Bさん(61歳 男性)
Bさんは、3年前より左ひじから親指にかけてしびれるようになり、来院されたときには首も動かない状態でした。

そこで、首から肩にかけての筋肉をほぐしたところ、Bさんはその場で効果を実感されていました。2週間後には、しびれはほぼ完治しており、「首も動くようになり、趣味の散歩とゴルフを再開したい」とうれしそうに話していました。

症例③ Cさん(49歳 男性)
Cさんは、右手にしびれがあり、握力が低下して介護の仕事に支障を来している、という悩みを持って来院されました。

過去にバイク事故で顔面を強打したことがあり、そのときにレントゲンを見た医師から、「頸椎がボロボロで70歳の首と同等だ」といわれたそうです。

私が首引っ張りと同類の施術をしたところ、2週間後には、「1週間ほどでしびれがなくなりました」と喜ばれていました。「手のしびれが取れたら、子供といっぱい遊んであげたい」と話されたので、きっと今ごろは、お子さんと楽しい時間を過ごしているでしょう。

しびれや痛みが伴う生活は、想像以上に不便でつらいものです。首の筋肉の緊張を取ることは、体の動きを快適にするとともに、気持ちを前向きにし、生活の質の向上にもつながります。ぜひ、今日から首引っ張りをお試しください。

画像: この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。

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