解説者のプロフィール

立花愛子(たちばな・あいこ)
りゅうえい治療院副院長。鍼灸師免許、管理栄養士免許、医薬品登録販売者資格を取得。鍼灸治療とともに東洋医学の知識を取り入れた栄養指導を行う。そのほか、お灸講座講師、執筆、メディア取材などを通して、簡単で効果的な東洋医学の活用方法を紹介している。著書に『目がスカッと!耳がスッキリ!のツボ』(ビックサクセス)、『顔ツボでぐんぐん脳活! すぐに実践できる脳活ツボ・マッサージ』(ぶんぶん書房)など。
▼りゅうえい治療院(公式サイト)
鼻の症状によく効いて自律神経を調整する
患者さんから、「鼻づまりがひどい」とか、「カゼをひいたあと、ドロドロした鼻水が続いている」といった相談を受けることがあります。よく聞いてみると、肩や首のコリ、頭痛、顔面痛といった症状も伴うそうです。このような場合、副鼻腔炎が疑われます。
副鼻腔炎とは、顔の中にある副鼻腔という空洞に炎症が起こる病気です。慢性化すると治りにくく、鼻づまりや鼻水に長く苦しめられることになります。こうした鼻の症状の改善に特に役立つのが、額の上にある「上星(じょうせい)」というツボへの刺激です。
上星は、副鼻腔炎のほか、花粉症などにも有効で、鼻の症状の特効ツボです。この上星と、頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」のツボへの刺激を併せて行うと、鼻づまりの解消に効果的です。
百会へのツボ刺激は、多くの効能があります。副鼻腔炎には、そのうちの自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の調整を行う神経)の調整効果が作用します。鼻づまりや鼻水がひどいときには、たいてい自律神経の働きも乱れています。百会を押すことで、そのバランスを整えられるのです。
また、副鼻腔の炎症によって生じる肩や首のコリ、頭痛、頭重感、顔面痛といった症状を和らげる働きも期待できます。
では、副鼻腔炎に効くツボ刺激のやり方を説明しましょう。
上星は、額の中央、髪の生え際から2cmほど上にあります。百会は、左右の耳の穴を結んだ線と、顔の中央を走る正中線の交わるところにあります。
副鼻腔炎の人は、上星から百会に至るライン上にも、押すと圧痛のある場所が見つかることがあります。その場所も、上星や百会と同様に指圧します。

やり方は、まず両手の人差し指、もしくは、中指の腹をツボの上で重ねます。そして5秒かけて、グーッと押し込んだら、スッと力を抜きます。これを10回くり返します。押す力の目安は、「痛気持ちいい」くらい。上星から始め、百会につながるライン上で圧痛のある場所、そして百会と続けましょう。

膿がたまらないよう常に鼻通りをよくしておく
鼻づまりの特効ツボを、もう一つ、お教えしましょう。鼻の両わきにある「迎香(げいこう)」というツボです。迎香は、「香を迎える」という名前のとおり、鼻の通りをよくする即効性が高いツボです。小鼻の両わきの、少しへこんだところにあります。

鼻の両側にあるので、両手の人差し指か中指の腹を、左右のツボに当てて、鼻の内側に向かってグーッと5秒ほどかけて押し込み、スッと力を抜きます。これを10回くり返しましょう。

実際にひどい鼻づまりに悩まされているときは、すぐにこれらのツボ刺激を行ってください。
副鼻腔炎は、副鼻腔に膿がたまることで炎症もひどくなります。ですから、毎日の刺激で鼻の通りを常によくしておくことが大事です。予防としては、朝晩の2回、行うことが勧められます。
それでは、上星のツボ押しの体験例をご紹介しましょう。
Aさん(60代・男性)は、腰痛で来院されましたが、鼻づまりがつらいという相談も受けました。肩や首のコリ、顔面痛、後鼻漏(鼻水がのどの奥に垂れる症状)などもあるそうです。
上星から百会にかけてのお灸を行ったところ、症状がかなり改善しました。そこで、セルフケアとして、上星へのツボ刺激を毎日行ってもらいました。すると、鼻づまりや顔面痛、後鼻漏がずいぶん治まったと、とても喜んでいました。
なお、鼻づまりのほかに、黄色い鼻水が出たり、顔面痛や歯痛があったりすると、副鼻腔炎だけでなく、ほかの病気も疑われます。念のために、一度は耳鼻咽喉科を受診し、状態を確認しておくことをお勧めします。

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。
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