解説者のプロフィール

北西剛(きたにし・つよし)
きたにし耳鼻咽喉科院長。医学博士。滋賀医科大学卒業。2005年、生まれ故郷である守口市に、きたにし耳鼻咽喉科を開院し、現在に至る。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本気管食道科学会専門医。日本アーユルヴェーダ学会理事長。日本胎盤臨床医学会認定医・理事。著書に『慢性副鼻腔炎を自分で治す』(マキノ出版)など。
▼きたにし耳鼻咽喉科(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
ぶり返す鼻の症状にセルフケアが役立つ
鼻の病気では、原因が正しく突き止められた場合でも、なかなか治らないケースがあります。こうした難治性疾患やぶり返す鼻の症状を改善するために、セルフケアが役立つのです。軽度の症状であれば、セルフケアだけでよくなることもしばしばあります。
そこで、ここでは、鼻づまりのセルフケアとして、「鼻カイロ」を紹介しましょう。
用意するのは、ハンドタオル、もしくはミニタオル。電子レンジを使用する場合、ジッパーつきポリ袋があるといいでしょう。

アロマオイルを追加してもよい。
❶初めに、ハンドタオルを40~50度くらいのお湯につけて、軽くしぼります。電子レンジの場合、ぬらしたタオルをしぼり、ジッパーつきポリ袋に入れて、電子レンジで30秒~1分温めます。温かさはヤケドしない程度であれば、お好みでかまいません。

❷折りたたんだタオルを、鼻のつけ根から鼻の穴までを覆うように乗せ、鼻で呼吸します。タオルが冷めたら、ゆっくり鼻をかみましょう。

朝の鼻づまりを予防し快眠効果も期待できる
この鼻カイロには、三つの効能があると考えられます。
❶加湿効果
❷血流改善効果
❸自律神経調整効果
鼻の粘膜が乾燥して、粘膜の状態が悪化している人がいます。加齢現象として起こる加齢性鼻炎では、鼻の粘膜機能が低下し、鼻が乾燥します。すると、鼻汁がのどにはりつき、のどの違和感なども生じます。
鼻カイロで、鼻の粘膜を加湿すると、粘膜環境を改善させることができます。乾燥から生じる症状を抑える効果も期待できます。
第二に、温めることで、鼻粘膜の血流がよくなります。粘膜の血行改善が進めば、低下していた粘膜機能がアップし、鼻の症状が和らぎます。
第三に、自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを調整する神経)の調整効果が期待できます。鼻が詰まっているときには、自律神経の働きが乱れていることが少なくありません。自律神経は、鼻の通りも調整しています。それを正しく働かせることで、鼻づまりが解消するわけです。
鼻カイロは、鼻づまりを感じているときはもちろん、予防として、朝晩など、定期的に行うのもいいでしょう。
入浴中に行う場合は、湯ぶねに浸かり、お湯でぬらしたハンドタオルを鼻の上に乗せ、5分ほど温めます。温めながら、湯ぶねから立つ湯気を鼻で吸い込みましょう。入浴後は必ず鼻をかんでください。
入浴中や寝る前に行えば、翌朝の鼻づまりの予防だけでなく、快眠効果も期待できます。
鼻汁がのどのほうに垂れてくる「後鼻漏」という症状があります。後鼻漏があると、セキ込みやすくなるため、夜、よく眠れないという人が少なくありません。こういう人は、寝る前に鼻カイロを行うと、後鼻漏が抑えられ、よく眠れるようになるはずです。
以前、30名ほどの人に協力していただいて、保温・保湿効果のある市販品を使った臨床研究を行ったことがあります。その結果、鼻を温めて保湿すると、鼻づまりがよくなる効果が確認できました。
なお、鼻カイロを温めるお湯やおしぼりに、アロマを追加するのもいい方法です。朝ならハッカ、夜や就寝前には、ラベンダーなどがお勧めです。

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。
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