においがわからなくなったとき、副鼻腔炎によるものか、コロナウイルスによるものか、どう見分ければいいのでしょうか。副鼻腔炎の場合、鼻づまりがひどくなったり、鼻汁が出たり、頭痛がしたり等の症状が相前後して起こっているはずです。嗅覚障害以外の症状・体調など疑わしいところがあるようでしたら、PCR検査を検討すべきでしょう。【解説】泉川雅彦(泉川クリニック院長)

解説者のプロフィール

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泉川雅彦(いずみかわ・まさひこ)

泉川クリニック院長。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医。医学博士。1996年、関西医科大学卒業。大阪赤十字病院耳鼻咽喉科勤務、ミシガン大学クレスゲ聴覚研究所留学などを経て、2016年大阪市旭区にて泉川クリニックを開院。地域密着の医院として老若男女の治療にあたり、日帰り手術なども行う。
▼泉川クリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

ドロドロの黄色い鼻汁は副鼻腔炎を疑おう

副鼻腔炎は、慢性化すると、なかなか治りにくいやっかいな病気です。しかも、新型コロナウイルスの感染が広がっている状況では、副鼻腔炎への対処のしかたも、コロナ以前とは違ってきているところがあります。そこで、コロナとの関連も含めて、副鼻腔炎についてお話ししましょう。

そもそも副鼻腔炎とは、どんな病気でしょうか。

鼻の穴を入ったところが、鼻腔と呼ばれる空間です。鼻腔の周囲には、鼻腔につながる空洞が複数あり、それが副鼻腔です。鼻の両側にある空洞が「上顎洞」、両目の間の奥にあるのが「篩骨洞」、眉間の近くにあるのが「前頭洞」、目の奥にあるのが「蝶形骨洞」と名づけられています。空洞は、左右対で八つあります。

カゼなどがきっかけとなって、この空洞の粘膜に炎症が起こるのが副鼻腔炎です。副鼻腔炎になると生じる症状を挙げましょう。

カゼをひいたあと、鼻づまりがなかなか治らない
濁った、ドロドロした黄色い鼻汁が出る
嫌なにおいがする
頭痛・ほおの痛み・目の奥の痛みなどがある
においがわからなくなる
セキやタンが出る
後鼻漏(鼻汁がのどの奥に垂れる症状)が起こる

画像: ドロドロの黄色い鼻汁は副鼻腔炎を疑おう

カゼをひいてなかなか治らず、鼻づまりが続いて、鼻汁がだんだん濁ってきたという場合、副鼻腔炎を併発している疑いがあります。

アレルギー性鼻炎では、サラサラした透明な鼻汁が大量に出ます。一方、副鼻腔炎の鼻汁は、ドロドロしています。ここに大きな違いがあります。

副鼻腔炎の場合、副鼻腔で炎症が起こり、膿がたまっています。このため、悪化すればするほど、黄色く色づいたドロドロした鼻汁が出てくるのです。

また、副鼻腔から鼻腔への出入口が腫れた粘膜でふさがれると、副鼻腔が密閉され、中に膿がたまっていきます。そして、嫌なにおいがしてきます。

また、膿のたまった空洞の位置によって、頭痛や目の痛み、ほおの痛み、歯痛などが起こってきます。

ドロドロの鼻汁や顔面痛などを伴うようなら、副鼻腔炎がいよいよ疑わしいと考えられます。一度、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

ごく初期の段階では、もしもほおなどに痛みがあった場合、痛み止めを処方し、対症療法で様子を見ることになるでしょう。副鼻腔炎は、軽症であれば、多くの場合、抗生物質を使わなくても、数日で自然によくなっていきます。

数日経っても状態がよくならない場合、細菌感染が起こっていると考えられます。カゼの主な原因はウイルスですが、カゼで体力が低下すると、細菌による感染も起こるのです。この場合、抗生物質を投与し治療します。

このような治療で、およそ1ヵ月以内に治癒する副鼻腔炎は「急性副鼻腔炎」に分類されます。

一方、治療しても治りきらなかったり、再発をくり返したり、そもそも本人が気づかずに放置していたりすると、炎症が悪化し、副鼻腔から鼻腔に通じる通路が完全にふさがります。そうなると、密閉した副鼻腔に膿がどんどんたまって、炎症がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまうのです。

こうした慢性炎症が3ヵ月以上続くと、「慢性副鼻腔炎」と診断されます。

困ったことに、慢性副鼻腔炎になっているのに、それに全く気づいていない人も、けっこういらっしゃるのです。

こうした人がカゼをひくと、慢性副鼻腔炎の急性化という現象が起こります。そして、黄色い鼻汁がドロドロ出てきて、ようやく症状に気づくというわけです。

慢性化すると、なかなかよくならないケースも多いので、疑われる症状があったら、できるだけ早期の段階で治療を開始することが、いちばんです。

日常生活においても、食事や生活環境に気を遣い、症状の改善に役立つセルフケアなども並行して行うことで、副鼻腔炎の予防・改善を図るといいでしょう。

マスクをずっとしていると副鼻腔の換気が悪化

ちなみに、近年、治りにくいとされる慢性副鼻腔炎のなかでも、とりわけ難治の「好酸球性副鼻腔炎」という病気にかかる人が増えています。

これは、鼻の中に鼻たけ(ポリープ)が大量にできる原因不明の疾患です。手術して鼻たけを取っても、高確率で再発します。

粘り気の強い鼻汁が出て、ひどい鼻づまり、頭痛、頭重感などが起こり、後鼻漏も生じます。

この病気が重症化したケースは、難病に指定されています。それくらい長期戦を覚悟して、根気よく治療を続けていく必要がある病気だということです。

さて、ここで、新型コロナウイルスの問題についても触れておきましょう。

副鼻腔炎の特徴として、においがわからなくなる嗅覚障害があります。そして、皆さんもご存じの通り、コロナに感染したときの特徴の一つとしても、嗅覚障害が挙げられます。

では、においがわからなくなったとき、それが、副鼻腔炎によるものか、コロナウイルスによるものか、どう見分ければいいのでしょうか。これは、読者の皆さんも大変気にかかるところでしょう。

見分け方を一つ、お話ししましょう。

目安になるのが、嗅覚障害が起こるまでのプロセスです。その過程を見れば、だいたい判別できると考えられます。

副鼻腔炎の場合、嗅覚障害だけが突然起こるということは、まず、ありません。その前段階として、鼻づまりがひどくなったり、鼻汁が出たり、頭痛がしたり等々の副鼻腔炎の症状が相前後して起こっているはずです。

一方、コロナに感染した場合は、そうした前駆症状がなく、いきなりにおいがわからなくなるようです。

ただ、これは、あくまでも目安で、絶対確実な判別法とはいえません。嗅覚障害以外の症状・体調などを考え合わせて、疑わしいところがあるようでしたら、PCR検査を検討すべきでしょう。

マスクや手洗いはもちろんたいせつです。しかも、マスクや手洗いはコロナ対策だけでなく、カゼ予防にもなります。カゼは、副鼻腔炎を引き起こす大きな要因ですから、コロナ対策でカゼ予防ができるなら、それは、副鼻腔炎の予防にもつながります。

しかし、既に慢性副鼻腔炎を発症している人の場合、ずっとマスクをしていることは、換気という意味ではあまりよくありません。そもそも副鼻腔炎の場合、副鼻腔と鼻腔との換気の悪さが副鼻腔の炎症を助長させているからです。

鼻汁、セキ、くしゃみというのは、体が自分にとって害となるものを排出しようという防衛反応です。マスクをしていると、セキ込んだり、くしゃみをすることをできるだけ避けてしまうものです。鼻もかまない傾向があります。

副鼻腔炎の予防・改善という観点からいえば、それはあまり勧められることではありません。自宅や、人の迷惑にならない場所なら、セキやくしゃみも無理にガマンしなくてもいいのです。鼻もよくかんだほうがいいでしょう。

こうした注意点を守りながら、感染予防に努めれば、コロナと副鼻腔炎の両方の対策になるはずです。

画像: 定期的に鼻を換気!

定期的に鼻を換気!

自律神経を刺激するゆっくりストレッチ

鼻づまりの状態がずっと続くのは、たいへん不快なものです。その鼻づまりが副鼻腔炎による場合、治療が優先されることはいうまでもありません。

副鼻腔炎は、副鼻腔と呼ばれる鼻の穴(鼻腔)に接している空洞に炎症が起こる病気です。慢性化すると治りにくいので、鼻が通らない状態が続くことも多いでしょう。「詰まった鼻を少しでも通るようにしたい」と願う患者さんも少なくありません。

そんな皆さんの助けとなるストレッチを紹介したいと思います。

それが、「後ろ手伸ばし」です。まず、やり方を説明しましょう。

立った状態で、体の後ろで両手指を組みます。特に、薬指と小指をしっかり組んでください。

画像1: 自律神経を刺激するゆっくりストレッチ

指を組んだ状態のまま、手のひらを親指側から裏返し、後方に向けて、腕を伸ばします。この姿勢で、20秒キープしてください。

画像2: 自律神経を刺激するゆっくりストレッチ

20秒後、いったん力を抜いたら、また腕を伸ばして20秒キープ。これを5回くり返して、1セットとします。鼻づまり予防には、朝晩1セットずつ行うのがよいでしょう。

なかには、より強い効果を上げようとして、勢いよく、力をこめてストレッチを行う人がいますが、これは逆効果です。ゆっくりとストレッチし、無理のない範囲で伸ばすだけで十分です。むしろ、無理な力をこめることで、腕や背中を痛める可能性があるので、注意しましょう。

このストレッチを行うことで、自律神経を刺激することができます。

自律神経とは、私たちの意志とは無関係に働き、内臓や血管の働きをコントロールしている神経です。昼間に優位となり、活発な行動をつかさどる交感神経と、夜間に優位となり、休息へといざなう副交感神経の二つがあり、両者は拮抗しながら、バランスを取っています。

このストレッチは、昼間に優位となる交感神経を刺激し、その働きを高めます。鼻の粘膜の収縮を促し、鼻の通りをよくしてくれるのです。

マスク生活でも鼻はすすらず、きちんとかもう

ほかに、副鼻腔炎の予防や改善のために、日常生活で、どのような点に注意すればよいでしょうか。いくつか重要なポイントを挙げましょう。

鼻をすすらずに、よくかむ

鼻をすすらないようにして、できるだけ頻繁に鼻をかむことを心がけてください。鼻をすすると、その鼻汁が副鼻腔に入り込みます。それが炎症の引き金となったり、その炎症が悪化したりするリスクがあるのです。

最近は、ほとんどの人が外出の際にマスクをしていると思います。そのマスクをいちいち外すのをめんどうに思い、鼻をかまずにすすってしまう人が少なくありません。これは、副鼻腔炎予防の意味では、決して勧められることではありません。

カゼをひかない

当然ですが、できるだけカゼをひかないようにすることもたいせつです。カゼ自体が副鼻腔炎を引き起こすきっかけになりますし、すでに慢性副鼻腔炎にかかっているかたは、症状を悪化させるおそれがあるからです。

新型コロナウイルスの予防も兼ねて、マスクや手洗いの励行を続けてください。

点鼻薬は限定的に使用する

市販の鼻づまりの点鼻薬を利用しているかたもいらっしゃると思います。市販の薬には、血管収縮剤が配合されています。この効果によって、鼻がすぐ通るのです。

しかし、それを使い続けると、鼻の粘膜が腫れたり、出血しやすくなったりするといった弊害が出てきます。一時的に使うのはかまいませんが、長期使用は避けましょう。

加湿を心がける

加湿器などを利用して、居住スペースの湿度をある程度高く保つようにしましょう。目安としては40~60%程度です。乾燥していると、鼻づまりやセキが出やすくなります。

ほかの注意点として、喫煙は鼻粘膜の炎症を助長する作用があるため、控えたほうがいいでしょう。飲酒もほどほどに。鼻粘膜はほとんどが毛細血管でできているために、アルコールの血管拡張作用により、鼻粘膜が腫れてしまうからです。

食事は、できるだけバランスよく食べましょう。就寝時に鼻づまりがひどいときは、クッションなどを使って、上体を少しだけ高くして寝ると、眠っている間に鼻づまりが起こりにくくなります。

ぜひ今回のストレッチを試しつつ、ふだんの生活にも気をつけてください。

画像: この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。

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