教えてもらったとおりに、剣を持つ右腕を回してみると、明らかに右手が伸びています。毎日続ければ、伸びた長さを維持できると聞いて、興奮しました。新しいリーチに即した体の対応ができれば、私のフェンシングは進化するはずです。【体験談】宇山賢(フェンシング競技男子エペ日本代表)

プロフィール

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宇山賢(うやま・さとる)

1991年、香川県生まれ。同志社大学卒業後、三菱電機所属。12歳からフェンシング競技を始める。2018年、アジア競技大会団体エペで金メダル、20年、カナダワールドカップ団体エペで銅メダルを獲得。2021東京オリンピック日本代表入りを目指す最有力選手。

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[別記事:「グルグル腕回し」で肩や首のコリ、腰痛、股関節痛が改善→

私はフェンシングの競技者です。フェンシングの競技にはフルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、このうち私が専門種目としているのはエペです。

エペはほかの種目と違って、攻撃権(攻撃の優先権)は存在しません。有効面(ポイントとなる範囲)も頭部から足までの全身で、少しでも先に相手のどこかを突くとポイントになります。その意味では、初めてフェンシングを見る人にわかりやすい種目といえるでしょう。

フェンシングの剣は、最も重いエペで約1kg(750g以上の突きで電気審判機が反応)です。それほど重くなさそうですが、そこはなんといっても鉄の塊。激しく打ち合えば、かなりの衝撃が手の骨や関節、筋肉に走ります。

その蓄積が、手や手首の故障につながることが少なくありません。選手にとっては、職業病といえるでしょう。

日本代表となった現在、体調管理やコンディショニングには、特に注意を払っています。そんな体のケアやメンテナンスでお世話になっているのが、アスリートゴリラ鍼灸接骨院の高林孝光先生です。治療院に初めて行ったのは5年前。きっかけは、手首や手の甲の炎症の治療でした。

高林先生の治療は、まさに的確で、とても頼りになります。先生は、スポーツやスポーツ医学にも造詣が深く、手の治療後に、ときどきお話しすることがありました。

そんななかで、1年半ほど前に教えていただいたのが、「腕回し」という、腕を前後にグルグル回す体操です。この体操を行うと、手の長さが瞬時に伸びるといわれました。

先生に教えてもらったとおりに、剣を持つ右腕を回してみると、明らかに右手が伸びています。まさかという気持ちがあったので、これには正直とても驚きました。

肩が軽くなって動きもスムーズに

画像: 手が伸びることはフェンシングにもプラス(左が宇山さん)[提供:公益社団法人日本フェンシング協会]

手が伸びることはフェンシングにもプラス(左が宇山さん)[提供:公益社団法人日本フェンシング協会]

腕回しを行って、肩周りの筋肉がほぐれたのでしょうか。肩の動きも、前より軽く、スムーズになったようでした。

このとき、私の頭に浮かんだのが、フェンシングに生かせないかということです。特にエペの場合、攻撃は突きだけなので、リーチが長ければ、それだけ優位になります。

腕回しは、一度やっただけでは、翌日には元の手の長さに戻るそうです。しかし毎日続ければ、伸びた長さを維持できると聞いて、興奮しました。新しいリーチに即した体の対応ができれば、私のフェンシングは進化するはずです。

今はオリンピックのことで頭がいっぱい。今後、腕回しでどのような可能性が見つかるのか、ちょっと楽しみです。

もう一つ注目したのは、腕回しを行ったあとでは肩が軽くなって、動きも前よりスムーズになることです。

フェンシングは、手や腕だけでなく、肩も酷使しがち。故障を防ぐために、ウォームアップやクールダウン、さらには日ごろのケアが大切になります。腕回しは、そうした体の手入れにも有効な体操だと思います。

高林先生には、ほんとうにいい体操を教えていただいたと感謝しています。そうした協力に応えるためにも、オリンピックに出場し、いい結果を出せるように全力を尽くします。

肩周囲の筋肉がほぐれ瞬時に手が伸びる
アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長 高林孝光

腕回しを行うと、肩関節周囲のかたくなった筋肉がほぐれて、手の長さが瞬時に伸びます。フェンシングは、基本的に手を伸ばして相手を突く競技なので、腕回しでリーチが長くなれば、当然有利といえます。特に、宇山選手が専門種目にしているエペは、相手のどこを突いてもポイントになりますから、手の長さが一層モノをいうでしょう。

また、全身の筋肉は連動していますから腕回しを行うことで、肩周りだけでなく、手や腰といった離れた筋肉を緩めることにもつながります。そういう意味で、腕回しはウォーミングアップにお勧めです。

画像: この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。

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