梅干しには、カリウムやカルシウムなどのミネラルが含まれています。カツオ節やコンブなどのだし素材も同様です。クエン酸と相乗して、体内の代謝サイクルを高め、血行を促進するので、疲れ取りや、コリや痛みの緩和、食欲増進などの効果が期待できます。【解説・料理】宗像伸子(東京家政学院大学客員教授/管理栄養士・食生活アドバイザー)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

宗像伸子(むなかた・のぶこ)

東京家政学院大学客員教授/管理栄養士・食生活アドバイザー。1940年生まれ。東京家政学院短期大学卒業後、女子栄養短期大学専攻科卒業。山王病院・半蔵門病院に管理栄養士として長年勤務する傍ら、東京家政学院短期大学非常勤講師を11年務める。帝国ホテルなど各種企業の栄養コンサルタントを担当。栄養と健康に関する著書やメディア出演多数。財団法人国民栄養協会「有本邦太郎賞」受賞。(有)ヘルスプランニング・ムナカタ主宰。

NHKで紹介した「さっぱり調味だし」

昨年末の報道によると、家庭料理の減塩志向や、コロナ禍における内食需要の増加により、市販のつゆやだし、だしの食材を小袋に詰めた「だしパック」、カツオ節などの市場が成長しているそうです。

食の欧米化が進むなか、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。以降も、和食文化が見直される動きはますます高まっています。

私は、栄養が健康に与える影響を実践的に学び、その経験と知識に基づいた情報を、長く発信してきました。

カツオ節やコンブなどを使っただしを基本として、梅干しなどの伝統的な保存食品や、納豆やみそなどの発酵食品を取り入れた和食は、遺伝的に、私たち日本人の体質に合っているのではないでしょうか。

こってりして脂肪の多い洋食に慣れた現代人の味覚を、薄味でも食材本来の旨みが感じられる舌に戻してくれる。和食には、そんな側面もあるように思います。

さて、今回紹介する「梅干しだし」は、カツオ節やコンブで取っただしに、梅干しを加えて短時間煮ることで、梅干しの風味を移した調味だしです。

別記事に、『壮快』編集部による簡単な梅干しだしの作り方が載っています。

[別記事:高血圧、骨粗鬆症も撃退する梅干しだし→

私が、NHKの番組『きょうの料理』で、梅干しだしのレシピ(下記参照)を公開したのは2014年8月のことです。

〝管理栄養士が勧める夏の健康レシピ〟といったテーマで、「夏向きのメニューを考案してほしい」という依頼を受けたのが、きっかけでした。

考案のヒントになったのが、当時、ときおり通っていた、おいしい麺類を出すお店です。そちらのメニューに、梅干し入りのうどんがあり、気に入っていました。そこから、「だしに梅干しを入れて煮出したら、さまざまな料理に使えるのでは」と考えたのです。

番組では、その梅干しだしをつゆに使ったそうめんと、茶碗蒸しのレシピを紹介し、「さっぱりしておいしい」と、好評をいただきました。

宗像先生の 梅干しだしの作り方

画像: 宗像先生の 梅干しだしの作り方

【材料】(出来上がり量=約900㎖)
梅干し…4個
だし…1.2L
酒…小さじ4
 しょうゆ…小さじ1
 塩…小さじ2/3
【作り方】
鍋に梅干しとだしを入れ、煮立ったら弱火にしてふたをし、20~30分煮る。
Ⓐで味を調えて、火から下ろす。粗熱が取れたら、梅干しごとふたつきの容器に移し、冷蔵庫で保存。3~4日は日もちする。

ミネラルと酸が血行を促進し胃腸の働きを改善

私の梅干しだしは、別記事の作り方と異なり、酒やしょうゆ、塩を加えています。味がピタリと決まるようにと試作を重ねてそうしましたが、血圧が高めの人は塩分を減らしてもかまいません。

梅干しだしは、使う梅干しによって、だしに移る塩分量が大きく変わります。塩分濃度の低い梅干しを使えば、もちろん、塩分控えめになります。

とはいえ、減塩を売りにするあまり、化学調味料や合成保存料などの添加物を使った梅干しは、お勧めしていません。甘味料を添加した、いわゆる「はちみつ梅」なども同様です。

そもそも梅干しに塩分が多いのは、保存性をよくするためです。現代人の好みに合わせて塩分を減らす一方、長期にわたり市場に流通させようと思ったら、ほかの方法で品質を保持する必要があります。そのため、添加物が使われるのです。

私が使う梅干しは、塩分20%程度の昔ながらの梅干しです。高血圧のかたは、だしに梅干しを入れて20~30分煮たら、味見をしましょう。梅干しを入れたままで保存すると、日が経つうちに味が濃くなるので、それも考慮に入れたうえで、しょうゆや塩を加えてください。

だしをしっかり、濃いめに取るのも、塩分控えめに仕上げるコツです。だしの旨みのおかげで物足りなさを感じることなく、減塩に取り組めるでしょう。

梅干しには、カリウムやカルシウムなどのミネラルが含まれています。カツオ節やコンブなどのだし素材も同様です。

こうした微量栄養素は、酸っぱさの元であるクエン酸と相乗して、体内の代謝サイクルを高めます。血行を促進し、胃腸の働きをよくするので、疲れ取りや、コリや痛みの緩和、食欲増進などの効果が期待できます。

梅干しには抗菌・抗ウイルス作用があることも、ご存じのとおりです。梅干しを弁当に入れたり、体調の悪いときに焼き梅干しを食べたりする習慣も、こうした効能を知っていた昔の人の知恵といえます。梅干しだしは、カゼなど感染症対策の一助にもなるでしょう。

おいしくて栄養のある梅干しだしを、ぜひ料理に取り入れ、健康に役立ててください。

梅干しだし絶品レシピ

小松菜とシイタケのおひたし

画像: エネルギー:12kcal(1人分)

エネルギー:12kcal(1人分)

【材料】(2人分)
小松菜…120g
シイタケ…2個
梅干しだし…大さじ3
しょうゆ…小さじ1/2

【作り方】
小松菜はやわらかくゆで、水に取って冷ます。水気をしぼり、3㎝長さに切る。
シイタケは軸を取り、笠の部分をトースターかグリルで焼き、薄切りにする。
梅干しだしとしょうゆを合わせ、①と②を和えて、器に盛る。

春野菜のサラダ

画像: エネルギー:116kcal(1人分)

エネルギー:116kcal(1人分)

【材料】(2人分)
キャベツの葉…2枚
スナップエンドウ…40g
ニンジン…40g(4cm)
煮出したあとの梅干し…1個
マヨネーズ…大さじ1
梅干しだし…大さじ2
卵…1個

【作り方】
キャベツと、すじを取ったスナップエンドウは、さっとゆでる。キャベツは短冊切り、スナップエンドウは食べやすく切る。ニンジンは短冊切りにしてからゆでる。
梅干しは梅肉を細かくたたき、マヨネーズと和え、梅干しだしを加えて混ぜる。
卵は固ゆでにして、輪切りにする。
①を②で和えて、器に盛り、③を添える。

鶏肉とチンゲンサイの炒め

画像: エネルギー159kcal(1人分)

エネルギー159kcal(1人分)

【材料】(2人分)
鶏むね肉…100g
塩…少々
チンゲンサイ…2株
シメジ…20g
赤ピーマン…1個
ゴマ油…大さじ1
赤唐辛子(輪切り)、ショウガ(せん切り)…各少々
梅干しだし…100ml
しょうゆ…大さじ1/2
片栗粉…小さじ2/3

【作り方】
鶏むね肉はそぎ切りにし、塩を振る。
チンゲンサイは5cm長さに切り、軸の太いところは2~3本に切る。シメジは石突きを取り除いてほぐす。赤ピーマンは薄切りにする。
フライパンにゴマ油と赤唐辛子、ショウガを入れて熱し、香りが立ったら①を入れて炒める。肉の色が変わったら②を加えて炒め、梅干しだしとしょうゆを入れて2〜3分煮る。同量の水で溶いた片栗粉でとろみをつけ、器に盛る。

カブとソラマメの梅煮

画像: エネルギー:60kcal(1人分)

エネルギー:60kcal(1人分)

【材料】(2人分)
カブ(根の部分。葉は使わない)…150g
ソラマメ(さやから出す)…50g
アサリ(むき身)…30g
梅干しだし、(普通の)だし…各100ml
 みりん…大さじ1/2
 しょうゆ…小さじ1/2

【作り方】
カブはくし形に切る。
ソラマメはかためにゆで、薄皮をむく。アサリはさっと水で洗う。
鍋に①とⒶを入れ、やわらかくなるまで煮る。②を加え、3分ほど煮て、器に盛る。

豚しゃぶの梅ソースがけ

画像: エネルギー:212kcal(1人分)

エネルギー:212kcal(1人分)

【材料】(2人分)
豚肩ロース肉(しゃぶしゃぶ用)…150g
ショウガ、ネギの青い部分(肉の臭み取り用)…各少々
アスパラガス…80g
煮出したあとの梅干し…1個
梅干しだし…大さじ3
しょうゆ…小さじ2
おろしショウガ…1/2片分
ミニトマト…4個(好みで湯むきする)

【作り方】
鍋に湯を沸かし、臭み取りのためショウガとネギを入れ、豚肉を広げながら入れる。色が変わり火が通ったら水に取り、水気を切って食べやすい大きさに切る。
アスパラガスはやわらかくゆで、食べやすく切る。
梅干しは梅肉を細かくたたき、梅干しだしとしょうゆ、おろしショウガと合わせる。
器に①と②、ミニトマトを盛り、③をかける。

サワラの梅煮

画像: エネルギー:162kcal(1人分)

エネルギー:162kcal(1人分)

【材料】(2人分)
サワラ…2切れ
ネギ…1/3本…20g(水洗いする)
ワカメ(塩蔵)
梅干しだし…150ml
 煮出したあとの梅干し…1個
 しょうゆ…大さじ1/2
 みりん…小さじ1
 ショウガ(薄切り)…数枚

【作り方】
ネギは4cm長さに切る。
鍋に①とⒶを入れて煮立てサワラを入れてふたをし、中火で8分ほど煮る。
ふたを開け、食べやすく切ったワカメを加え、さっと煮る。ショウガは除いて、器に盛る。

豆腐とレタスのスープ

画像: エネルギー:42kcal(1人分)

エネルギー:42kcal(1人分)

【材料】(2人分)
絹ごし豆腐…1/3丁(100g)
レタス…60g
キクラゲ(乾)…2個
赤ピーマン…1個
しょうゆ…小さじ1/2
梅干しだし…200ml
 水…100ml
 中華だしの素(粉末)…小さじ1/3

【作り方】
レタスは小さくちぎる。キクラゲは水で戻して小さく切る。赤ピーマンは薄切りにする。
鍋にⒶを入れて火にかけ、①を加えて煮る。赤ピーマンがしんなりしたら、食べやすく切った豆腐を加え、しょうゆで味を調えて器に盛る。

茶碗蒸し

画像: エネルギー:48kcal(1人分)

エネルギー:48kcal(1人分)

【材料】(2人分)
卵…1個
梅干しだし…150ml
ニンジン…10g(薄切り4枚)
シメジ、糸ミツバ…各10g
焼き麩…小2個

【作り方】
ニンジンは好みで型抜きし、さっとゆでる。シメジは石突きを取り除きほぐす。焼き麩は水で戻して絞る。
卵は溶き、梅干しだしを入れて混ぜ、網でこす。
茶碗に①を入れ、②を注ぐ。蒸気の上がった蒸し器に入れ、強火で2分、弱火にして10~12分蒸す。蒸し上がったら糸ミツバを飾る。

五目冷やしうどん

画像: エネルギー:356kcal(1人分)

エネルギー:356kcal(1人分)

【材料】(2人分)
うどん(ゆで)…2玉(400g)
鶏もも肉…100g
塩…少々
白菜…140g
ニンジン…50g
シイタケ…2個
サヤインゲン…20g
煮出したあとの梅干し…2個
梅干しだし…400ml
 (普通の)だし…200ml
 しょうゆ、みりん…各小さじ1

【作り方】
鶏もも肉はそぎ切りにし、塩を振る。
白菜はそぎ切り、ニンジンは短冊切り、シイタケは薄切りにする。
サヤインゲンはさっとゆでて斜め切りにする。
鍋にⒶを入れて火にかけ、①と②を加えて煮る。野菜がやわらかくなったら火を止めて冷まし、③を加える。
器にうどんを入れ、④をかけ、中央に梅干しをのせる。

梅干しだし茶漬け風

画像: エネルギー:340kcal(1人分)

エネルギー:340kcal(1人分)

【材料】(2人分)
梅干しだし…300ml
ご飯…茶碗2杯分(300g)
小松菜、ニンジン…各20g
温泉卵…2個
焼きノリ…適宜(ちぎる)

【作り方】
小松菜はゆでて3cm長さに切る。ニンジンは末広切りまたは短冊切りにしてゆでる。
器にご飯を入れ、①と温泉卵をのせ、熱々に温めた梅干しだしをかけて、焼きノリを散らす。

■スタイリング・栄養計算/(有)ヘルスプランニング・ムナカタ

画像: この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年5月号に掲載されています。

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