解説者のプロフィール

勝野浩(かつの・ひろし)
ヒロ整形クリニック院長。1962年、愛知県出身。88年、浜松医科大学卒業。94年、浜松医科大学大学院卒業。医学博士。大学院在学中に、ハーバード大学ボストン子供病院に留学し、骨代謝の研究を行う。98年、ヒロ整形クリニックを開院。腰痛や四十肩などの一般的な整形外科疾患はもとより、 スポーツ整形と骨粗鬆症に力を入れている。『1日10分の「ふくらはぎ+太もものばし体操」で若返る』(SBクリエイティブ)など著書多数。
▼ヒロ整形クリニック(公式サイト)
缶詰なら骨も皮も丸ごと食べられる
腰痛やひざ痛など、関節の痛みに悩んでいる患者さんから、「関節痛の改善に役立つ食品はないですか?」と尋ねられることがよくあります。
そんなときに私がよくお勧めしているのが、「魚の缶詰」と「タマネギ」です。
関節痛の原因はさまざまですが、多くの場合、体を支える骨や靱帯(骨と骨とつなぐ繊維状の組織)、軟骨、筋肉の衰えが関わっています。
これらの器官の衰えを助長するのは、加齢だけではありません。組織を作っているたんぱく質などの栄養不足が、大いに影響しています。
例えば、靱帯の主成分であるエラスチンというたんぱく質が不足すると、靭帯から弾力が失われて、硬く厚くなります。
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルや、骨の柱となるコラーゲンなどのたんぱく質が不足すると、骨がもろくなり、変形や圧迫骨折が起こりやすくなります。
骨と骨の間でクッションの役割をしている軟骨の主要な成分であるコラーゲンやコンドロイチンなどが不足すれば、体を動かしたときの体重の衝撃を受け止めきれなくなります。
関節痛を予防・改善するには、食事で十分な栄養をとり、骨や筋肉の衰えにブレーキをかけることが大切です。
骨や筋肉に必要な栄養を簡単にとるのに最適なのが、丸ごとの魚です。
魚肉は骨や筋肉の材料となるたんぱく質が豊富ですし、皮には靱帯の弾力性や筋力の維持に必要な、エラスチン、コラーゲンが含まれます。
骨には骨の主成分であるカルシウムとカルシウムの吸収を促すマグネシウムのほか、コラーゲンやコンドロイチンも含まれています。

ただ、ちりめんじゃこのような小魚以外で、骨と皮も含めて丸ごと食べられるように魚を調理するのは、なかなか難しいところがあります。
アジの開きやサンマの塩焼き、サバみそ煮などで、皮も骨も残さず食べるという人は少ないと思います。
そこでお勧めなのが、魚の皮、身、骨が全て入ったまま調理された缶詰です。
缶詰は、高圧で加熱処理されているため、骨や皮が軟らかくなっていて、無理なく丸ごと食べることができるからです。
また、特にサバやサンマなどの青背の魚の脂に多く含まれるDHAやEPAといったオメガ3系の脂質は、炎症を抑え、血液をサラサラにして血流を改善する働きがあります。
痛みの部位は、血流が悪くなっており、組織の酸素不足を招きやすいだけでなく、炎症や痛みを起こす物質が停滞しやすい状態です。血流が改善することで、組織の修復や、発痛物質の排出も進みやすくなります。
血流改善、炎症抑制作用を持つタマネギ
こうした血流改善、炎症抑制効果は、タマネギにもあります。
タマネギを切ると目や鼻がツーンとして涙が出てきます。この特有の香り成分が「硫化アリル」で、血液をサラサラにする働きがあります。
また、タマネギに含まれるポリフェノール(植物の色素成分)の「ケルセチン」には強い抗酸化作用(老化の原因となる活性酸素を抑える働き)があります。
このケルセチンの抗酸化作用が、炎症を抑えたり、痛みの原因となる細胞の酸化を防いだりしてくれるのです。また、動物実験ですが、ケルセチンの摂取が骨密度の低下を抑えるという報告もされています。
変形性膝関節症の患者さんに、軟骨のグルコサミンとコンドロイチンとともに、ケルセチンをとってもらったところ、3ヵ月で痛みが軽減したという研究もあります。
サバ缶とタマネギを組み合わせた「サバ缶タマネギ」は、関節痛の予防改善に役立つ、まさに特効食と言えるでしょう。ぜひお試しください。
[別記事:切り方一つでこんなに変わる!サバ缶タマネギの作り方→]
■イラスト/高橋陽子

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。
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