解説者のプロフィール

周東寛(しゅうとう・ひろし)
南越谷健身会クリニック院長。1978年、昭和大学医学部卒業。西洋医学に東洋医学を併合した医療をすすめ、ハイレベルの医療設備による病気の早期発見、早期対応の発症予防医学の重要性を提唱。心身医学療法も行い、トータルヘルスの確立に努めている。
▼南越谷健身会クリニック(公式サイト)
異なる成分としくみで動脈硬化を改善
タマネギとサバを組み合わせた「サバ缶タマネギ」。私はここに、さらに酢を組み合わせた「サバ缶酢タマネギ」を、血管の老化である動脈硬化を改善する、最高の養生食としてお勧めしたいと思います。
[別記事:切り方一つでこんなに変わる!サバ缶タマネギの作り方→]
動脈硬化は、血管の内側にプラーク(悪玉コレステロールなどのおかゆ状の脂肪)がこびりついて、血管が硬く、狭く、もろくなった状態です。
動脈硬化が進むと血圧が上がり、血管が完全に詰まってしまえば、脳梗塞や心筋梗塞(脳や心臓の血管が詰まる病気)といった重篤な症状を起こします。
そこまで行かなくても、血流が悪くなれば、酸素や栄養が不足しやすくなるために、あらゆる器官や臓器の機能が低下します。動脈硬化はまさに万病のもとなのです。
タマネギに含まれるケルセチンや硫化アリル、サバに含まれるオメガ3系脂質(DHAやEPA)、酢に含まれる酢酸やクエン酸は、それぞれが血液をサラサラにして、動脈硬化を改善する働きを持ちます。
私たち医師は、異なる成分や作用の仕方で、同じ作用を持つ薬を組み合わせた処方を行うことがよくあります。これは、少量の使用でも相乗効果で十分な作用が得られ、副作用を抑える工夫の一つなのです。
どんなによいものでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。何かに集中し過ぎれば、気づかないうちに、どこかで何かのバランスがくずれるリスクが出てきます。
サバ缶酢タマネギは、魚のたんぱく質やミネラル、野菜のビタミンや食物繊維など、お互いに不足しやすい栄養をうまく補える組み合わせです。
「血液をサラサラにして血管の柔軟性を高め、動脈硬化を防ぐ」という効果を、タマネギ、サバ、酢という異なるアプローチで目指すのは、リスクが少なく相乗効果が得やすい食べ方と言えるでしょう。
血糖値、血圧、中性脂肪値が改善
私は20年以上にわたって、タマネギを酢漬けにした「酢タマネギ」を患者さんに勧めてきました。「血圧、血糖値、中性脂肪値が下がった」「便秘が解消した」「耳鳴り、めまいが改善した」「自然にダイエットができた」といった喜びの声をたくさんいただいています。
当初、患者さんに協力していただいて取ったデータでは、
①降圧剤を飲んでいても185/92mmHgだった血圧が、酢タマネギを毎日の食生活に取り入れて、1ヵ月で152/80mmHg、2ヵ月で149/75mmHgと、大幅に正常値(140/90mmHg未満)に近づいた。
②208mg/dlあった血糖値(空腹時血糖値の正常値は110mg/dl未満)が、1ヵ月後に121mg/dlと大幅に下がり、2ヵ月後には73mg/dlと、正常値内に収まった。
③中性脂肪値が208mg/dl(正常値は150mg/dl)から、1ヵ月で188mg/dl、2ヵ月で96mg/dlと半減した。
など、非常に高い成果が得られました。
私自身も酢タマネギを常食するうちに、滞りがちだった便通の改善や、耳鳴りの軽減、激務でも疲れを感じず精力的に過ごせるようになったといった体調の変化を実感しています。
こうした効果は、タマネギに含まれる、硫化アリルやケルセチンなどのファイトケミカルによるものです。
ファイトケミカルとは、植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出した物質の総称で、硫黄化合物、ポリフェノール、カロテノイド、テルペン類、多糖類など、植物の色素や香り、苦味などを構成する成分です。
タマネギ特有の刺激臭のもととなる硫化アリルは、硫黄化合物の一種です。
血液をサラサラにして血栓(血液の塊)を防ぎ、血管を広げて血流をよくして、血圧を下げる作用があります。
また、血液中の余分な糖や脂質を減らす働きや、ミトコンドリア(細胞内でエネルギーを作り出す器官)を活性化する働きもあります。
ケルセチンは、ポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用(老化の原因となる活性酸素を抑える働き)を持ち、血管をしなやかに保つ作用があります。また硫化アリル同様に、血液中の余分な糖質や脂質を減らす働きもあります。
小腸の免疫細胞を刺激して、免疫力(病気に対する抵抗力)を高めたり、小腸のK細胞とL細胞でインクレチンを増加させて、血糖をコントロールする働きも持ちます。
糖尿病だと活性酸素が発生しやすく、自覚症状がないまま動脈硬化が進み、やがて腎臓や目(網膜)、末梢神経などに重大な合併症を引き起こします。
そのため活性酸素を消去し、血糖コントロールに役立つケルセチンは、糖尿病改善にも非常に役立つ成分だと言えます。
加えて、タマネギには、善玉菌であるビフィズス菌を増やして腸内環境をよくするオリゴ糖や、便通を促す食物繊維もたくさん含まれています。
タマネギの有効成分をもれなく利用
ただ、これらのファイトケミカルは、刺激臭や辛味や苦味の成分で、水に溶けやすい性質を持っています。
サバ缶タマネギを作るときに、生タマネギの辛味や苦味を抜くために、水にさらして調理する人が多いと思いますが、これはつまり有効成分を減らしているということになります。
そこでお勧めなのが、酢タマネギです。酢に漬けることで、タマネギの辛味や苦味が抑えられて食べやすくなります。
漬け酢ごと料理することで、溶け出した有効成分も無駄なく摂取できますし、酢そのものにも、血圧や血糖値、中性脂肪を降下させる働きがありますから、相乗効果が期待できます。
酢タマネギは簡単に作り置きができるので、日々のおかずにさっと加えられ、無理なく続けられます。酢がサバの脂を中和するので、よりさっぱりと食べられますし、しょうゆなどを追加しなくても十分おいしく満足できる味わいになり、自然と減塩できるのもメリットです。
酢タマネギの作り方
【材料】
・タマネギ……1個
・醸造酢……適量(タマネギが浸るくらいの量)
※酢は、米酢、黒酢、穀物酢など、醸造酢であればなんでもよい。
・塩……少々
・ハチミツ……大さじ1
※好みで増減してよい。

【作り方】
❶タマネギを切る
タマネギを半分に切り、さらに薄切りにする。
※縦切りでも横切りでもお好みで。みじん切りにしてもよい。

❷塩を加える
塩を振りかけ、よく混ぜる。
※時間に余裕があればそのまま30分ほど置いておくと有効成分が増える。
※塩をまぶすのは、タマネギに酢やハチミツを染み込ませやすくするためなので、塩分が気になるなら省いてもよい。

❸瓶に詰めて酢とハチミツを注ぐ
タマネギを瓶などの密閉できる容器に入れ、タマネギが浸るくらいまで酢を注ぐ。
※お好みでハチミツを加えるとより食べやすくなる。

※お好みでハチミツを加えるとより食べやすくなる。

❹ふたをして冷蔵庫で保存する
※漬けて2時間ほどから食べられるが、5日ほど漬け込んだ方が、味がマイルドになって食べやすくなる。
※冷蔵庫で10日は保存可能。

※1日に50~100g程度を目安に食べるのがお勧め。漬け酢も料理などに活用できる。


この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。
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