GLP-1というホルモンは通称「やせホルモン」と呼ばれ、血糖値が上がる要因を減らし、下げる要因を増やすという作用から、糖尿病の治療薬としても活用されています。EPAが豊富なサバ缶と、酪酸を作り出しやすい腸内環境を作るタマネギは、GLP-1の分泌を促すとてもよい組み合わせです。【解説】白澤卓二(白澤抗加齢医学研究所所長・お茶の水健康長寿クリニック院長)

解説者のプロフィール

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白澤卓二(しらさわ・たくじ)

白澤抗加齢医学研究所所長・お茶の水健康長寿クリニック院長。1958年神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年、同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。2007年より15年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。一般向けのわかりやすい医学解説が好評を博し、著書はなんと300冊を超える。千葉大医学部予防医学センター客員教授を兼任。

肥満を改善するホルモンの分泌を促す

健康で長生きしたい。それは多くの人が抱く願いでしょう。健康長寿に対する日々の食生活の影響は非常に大きく、世界中でさまざまな研究が進められています。

最近話題なのが、サバなどの青魚です。これらの魚の脂肪には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの、オメガ3系脂肪酸が多く含まれています。

以前から、DHAやEPAは脳や目の網膜などの神経を活性化する効果や、血液をサラサラにして血管の柔軟性を高める効果が知られてきました。

近年になって、特にEPAに、GLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)というホルモンの分泌を促す働きが判明して、大きな注目を集めました。

GLP-1は肥満改善に著効があり、通称として「やせホルモン」などと呼ばれることがあります。

GLP-1には、脳の食欲中枢に働きかけて、満腹感を感じやすくしたり、胃から腸に食べ物が排出される時間を遅らせて、食後の血糖値の上昇をゆるやかにしたりする働きがあります。

血糖値の急上昇は、余分な糖が中性脂肪として体に蓄積されやすくなりますから、肥満を招く大きな要因です。食欲が無理なくコントロールできれば、体重管理はしやすくなります。

また、GLP-1は 膵臓に働きかけて、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を高めるだけでなく、血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンの分泌を抑える働きがあります。

血糖値が上がる要因を減らし、下げる要因を増やすという相乗効果で、高い血糖上昇を抑える作用から、糖尿病の治療薬(GLP-1受容体作動薬)としても活用されています。

血糖値が高めの方にとっても、GLP-1の分泌を増やすことは、非常に重要なのです。

画像: 酸化しやすいDHAやEPAをとるにはサバ缶をそのまますぐ食べるのが最適。

酸化しやすいDHAやEPAをとるにはサバ缶をそのまますぐ食べるのが最適。

また、DHAやEPAなどオメガ3系脂肪酸の摂取が、うつ病予防にも有効という新たな知見が出てきました。

オーストラリアの大学での研究で、加工食品を日常的に食べている島の住民に比べ、主に魚介類を食べている島の住民のうつ病の発症率はおよそ5分の1に抑えられていたそうです。

解析の結果、加工食品をよく食べる島民の血液中には、食用油に含まれるオメガ6が多く、魚を食べる島民には、DHA、EPAなどのオメガ3が多いことがわかったのです。

このように、健康維持に不可欠なDHAとEPAですが、体内では合成できず、食事で補わなければなりません。しかも、油や水に溶けやすく、さらに酸化して壊れやすいため、調理法が非常に重要となります。

そこで私がお勧めしたいのが「サバ缶」です。サバを生のまま詰め、空気を抜いて加熱するので、DHA、EPAが壊れずに残りやすいのです。

DHA、EPAを酸化させないためには、缶から出したサバをそのまますぐに食べるのが最適です。

タマネギと組み合わせて相乗効果を発揮

サバ缶だけでもこれだけのメリットがあるのですが、さらに一工夫して、サバ缶に野菜をプラスしてみてください。

GLP-1は、小腸の下部にあるL細胞から分泌されます。腸内環境をよくしておくことで、より分泌が促進されることがわかっています。

腸内の善玉菌を増やすオリゴ糖や、食物繊維が豊富な野菜を組み合わせることで、よりGLP-1の分泌を促すことができるということです。

最適なのが「タマネギ」です。タマネギを加熱すると非常に甘くなりますが、これはタマネギにはオリゴ糖が豊富に含まれているからです。

また、食物繊維が腸内で分解されると、酪酸などの短鎖脂肪酸になります。この酪酸にもGLP-1分泌促進作用があります。

EPAが豊富なサバ缶と、オリゴ糖や食物繊維が豊富で酪酸を作り出しやすい腸内環境を作るタマネギは、GLP-1の分泌を促すとてもよい組み合わせです。サバ缶もタマネギも、一年を通して安価に手に入るのもメリットです。

味の相性もよいので、シンプルにそのまま食べてもよし、アレンジを加えてもよし。ぜひ毎日の食卓に活用してください。

[別記事:切り方一つでこんなに変わる!サバ缶タマネギの作り方→

画像: この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。

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