解説者のプロフィール

Acco MUKAWA(アッコ・ムカワ)
管理栄養士(日本)、健康指導学修士(フランス国立リュミエールリヨン第2大学大学院)、株式会社アポワンティ・フードディレクター。専門は予防栄養学と健康指導学。最新の健康科学と複合栄養学に基づき、スタイリッシュな現代食と健康を両立させる食の提案やメニュー開発を行っている。特に、内分泌疾患に関する食事療法を総合的な臨床栄養学の立場から提唱している。甲状腺疾患の栄養指導には定評がある。著書多数。
▼アポワンティ(公式サイト)
血圧や中性脂肪値を下げるオメガ3
健康づくりや病気の予防・改善のために重要な食事のポイントはいろいろありますが、中でも最近注目されているのが「脂肪酸のバランス」です。
脂肪酸は、脂肪の主要な成分で、その脂肪の性質や作用を決定づけています。つまり、その脂肪が体によい働きをするか、悪い働きをするかは、脂肪酸で決まるのです。
脂肪酸はいくつかのグループに分かれますが、その中で、現在の私たちを最も健康にしてくれるのが「**オメガ3*}」という脂肪酸です(正確には「オメガ3系多価不飽和脂肪酸」)。
オメガ3は、体に役立つ多くの作用を持っています。筆頭は中性脂肪値や血圧を下げる効果です。LDLコレステロール値も下げるか、上げないことがわかっています。これらにより、動脈硬化の抑制に役立ちます。
他にもオメガ3には、骨粗鬆症の改善効果、腸内環境を改善して免疫系を整える効果、炎症を抑える効果などがあります。また、認知症の予防、花粉症やその他のアレルギー症状の予防や抑制などのためにも、オメガ3を十分とることが大切です。
これほど重要な脂肪酸でありながら、現在の平均的な食事にはオメガ3が不足しています。
その理由は二つあります。
一つは、オメガ3が含まれる食品が限られているということです。
オメガ3が豊富な食品としては、アマニ油、エゴマ油、クルミ油といった植物油や、イワシやサバなどの青魚があります。これらの植物油にはα‐リノレン酸、青魚にはEPAやDHAというオメガ3グループの脂肪酸が豊富です。
これらの植物油は、意識しなければとれませんし、青魚を毎日欠かさずとるのも難しいでしょう。そのため、基本的にオメガ3は不足しやすいのです。
オメガ3が不足しやすいもう一つの理由として、「優先的にとらないと体内で使われにくい」ということがあります。
オメガ3には、オメガ6(オメガ6系多価不飽和脂肪酸)というライバルがいます。オメガ3とオメガ6は、体内で共通の代謝経路をたどります。いわば「同じ道」を通る必要があるので、体内で使われるためには「早い者勝ち」になります。
オメガ6は、コーン油、ヒマワリ油、大豆油など一般的な植物油、揚げ物や加工食品、インスタント食品、菓子類など、多くの食品に含まれています。そのため、現在の平均的な食生活では、オメガ6が過剰摂取されています。
その結果、オメガ3はオメガ6によって道(代謝経路)を占領され、それによってもオメガ3が不足しているのです。
オメガ6とオメガ3は、どちらも体に不可欠な脂肪酸ですが、圧倒的にオメガ6の摂取量が多く、相対的にオメガ3が不足しているのが実状です。
週2~3回を目安に飲む
そこで、オメガ3を習慣的に、かつ優先的にとる手軽な方法として、ぜひお勧めしたいのが「オメガ3コーヒー」です。これは、コーヒーにオメガ3オイルを加えた飲み物です。濃いめに入れたコーヒー30mlに、温めた無脂肪乳か低脂肪乳を150mlを混ぜます。そこに、アマニ油やエゴマ油などのオメガ3オイルを小さじ1杯加えます。好みで、オリゴ糖を小さじ1~2杯入れたり、仕上げにシナモンパウダーを振ったりしてもいいでしょう。
簡単に作りたいときは、普通のコーヒーに、オメガ3オイルを入れるだけでも構いません。これ1杯で、オメガ3の1日の必要量がとれます。
コーヒーは、最近、多くの健康効果を持つことがわかってきています。興味深いことに、その効用は、オメガ3と重複する部分が多いのです。ですから、オメガ3オイルをコーヒーに入れて朝一番に飲めば、優先的にオメガ3が摂取でき、体への効果も高まります。
オメガ3コーヒーは、週に2〜3回を目安に飲んでください。無理なく飲めるなら、毎朝飲んでも結構です。「最近、青魚を食べていない」というときや、青魚が苦手な人は、特に意識的に飲むとよいでしょう。
オメガ3といえどもとり過ぎはよくないので、その日の摂取は朝1回にとどめてください。

油っこくなく、さらっとした口当たりで飲みやすいオメガ3コーヒー。
私自身も、オメガ3コーヒーを健康のために活用しています。以前、LDLコレステロール値が166mg/dl(正常値は140mg/dl未満)になったときには、オメガ3コーヒーを飲みながら食事・運動にも気を配ったところ、3ヵ月で125mg/dlになりました。以後も習慣的にオメガ3コーヒーを飲んで、104mg/dl前後の正常値を維持しています。
また、内臓脂肪が多くて肥満していた60代の男性は、オメガ3コーヒーを飲みながら、食生活の改善やウォーキングなどを心掛けたところ、1年で10kg減量でき、おなかがスッキリへこみました。オメガ3は、筋肉疲労を取る効果もあるので、運動と組み合わせると、さらに効果的です。

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。
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