解説者のプロフィール

工藤孝文(くどう・たかふみ)
工藤内科漢方医。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院や地域の基幹病院を経て、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来、漢方治療を専門に地域診療を行っている。『高野豆腐ダイエットレシピ』(河出書房新社)を始め、著書多数。テレビなどのメディアにも多く出演している。
コーヒーのクロロゲン酸が代謝を高める
コーヒーは、上手に飲めばダイエット効果が期待できます。その秘密は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸とカフェインという成分です。
食後に血糖値が上がると、体はインスリンを分泌して、血液中の糖を脂肪に変えてため込みます。血糖値が急上昇すれば、インスリンは多く分泌されるため、太りやすい体質に。クロロゲン酸は、この食後の血糖値の急上昇を防ぎます。
さらにクロロゲン酸は、肝臓での脂質の代謝を高めて、脂肪を燃えやすくします。カフェインは、リパーゼという酵素を活性化して脂肪をエネルギーに換えやすくします。
この効果は、ある食品をちょい足しすると、さらに高まります。それは「緑茶」と「おからパウダー」です。
どちらもコーヒーに合わせる印象はないかもしれませんが、効果は抜群。「緑茶コーヒー」「おからコーヒー」を試した私の患者さんは、どちらも1ヵ月で平均ほぼ6kgやせています。
緑茶コーヒー
私自身、緑茶コーヒーで25kgのダイエットに成功しました。
2015年のことです。当時の私は、糖尿病内科の勤務医として、患者さんに勧めるダイエット法を探していました。コーヒーと緑茶、どちらの効果が高いのかと迷った私は、「どうせなら一緒に飲んでしまえ」と思ったのです。
そこで、まず自分で試すことに。当時の私の体重は92kg(身長は178cm)。激務のため、食事制限や運動はできません。そこで、1日に3~4杯の緑茶コーヒーを飲んだところ、10ヵ月で67kgに減ったのです。
前述のように、コーヒーのクロロゲン酸は食後の血糖値の急上昇を防ぎます。ただ、カフェインは一時的に血糖値を上昇させます。
ところが、コーヒーに緑茶を加えると、緑茶のカテキン(エピガロカテキンガレート)が小腸での糖質の吸収を減少させて、血糖値の急上昇を防ぐのです。つまり、カフェインのマイナスの作用を、緑茶のカテキンが防いでくれるわけです。
緑茶にもカフェインは含まれていますが、その量はコーヒーの約3分の1と少なめです。カフェインにはダイエット効果もありますが、とり過ぎると交感神経(全身の活動力を高める神経)が過敏になり、ストレス食いを招きます。
緑茶には、テアニンというリラックス効果のある成分も含まれており、ストレス食いを防いでくれます。
また、クロロゲン酸は、牛乳のたんぱく質と合わさると、体内での吸収率が落ちます。緑茶コーヒーはミルクも砂糖も使いませんが、それでも飲みやすいのが利点です。「コーヒーのブラックは苦手でも、緑茶コーヒーは飲みやすい」という方は少なくありません。
緑茶コーヒーは、緑茶とコーヒーを1対1で割るだけ。大きめのマグカップで1日3回、食前にたっぷりと飲んでください。コーヒーや緑茶は、インスタントでも構いません。

おなか周りが引き締まる人が多い
おからコーヒー
低糖質で食物繊維の多いおからは、ダイエットにうってつけの食品です。近年の研究では、脂肪を燃焼させる、アディポネクチンというホルモンの分泌を促すことがわかってきました。
アディポネクチンは内臓脂肪から分泌され、増加すると運動時と同様の脂肪燃焼効果があります。ただ、内臓脂肪が肥大している人は分泌が減ります。
おからなどの大豆製品に含まれるβ‐コングリシニンは、アディポネクチンの分泌を増やします。さらに近年の研究では、コーヒー自体にもアディポネクチンを増やす作用があることがわかっています。
おからコーヒーは、コーヒー1杯に対して、小さじ1杯のおからパウダーを入れるだけ。おからパウダーは溶けないので、かき混ぜながら飲んでください。
ブラックコーヒーよりもマイルドな風味で飲みやすいですが、好みでオリゴ糖やハチミツなどを加えてもよいでしょう。
おからコーヒーは1日3回、食前に飲めば、おからの食物繊維の作用で、過食や、食後の血糖値の急上昇も防げます。
緑茶コーヒー・おからコーヒーは、どちらも3日~1週間ほどで何らかの変化を実感できるでしょう。私の患者さんの場合、おなか周りが引き締まる方が多いようです。
両者を試して、ご自分に合う方を続けてください。もちろん、日によって変えても構いません。なお、むくみがちな人は緑茶コーヒー、便秘がちな人はおからコーヒーがお勧めです。

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。
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