誤解を恐れずに言えば、コーヒーは「薬」です。特に効果が顕著なのは、肝臓の病気です。肝臓は、糖尿病と並んでコーヒーの効果が最もよく研究されている分野で、B型・C型肝炎から肝硬変、肝臓がんまで、ほぼ全ての肝疾患に予防・改善効果があるのです。【解説】石原藤樹(北品川藤クリニック院長)

解説者のプロフィール

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石原藤樹(いしはら・ふじき)

北品川藤クリニック院長。医学博士。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。診療のかたわら、ほぼ毎日更新している『北品川藤クリニック院長のブログ』は、現在毎日15000アクセスを超える人気ブログに成長。著書に『コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?』(PHP)などがある。
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脂肪の燃焼を促し代謝を高める

誤解を恐れずに言えば、コーヒーは「薬」です。

これまでに報告されたコーヒーに関する信頼できるデータを見ると、コーヒーはほとんどの生活習慣病の死亡リスクを下げ、総死亡リスクも低下させています。

薬にもサプリメントにも、これほど効果のあるものは見当たりません。

特に効果が顕著なのは、肝臓の病気です。肝臓は、糖尿病と並んでコーヒーの効果が最もよく研究されている分野で、B型・C型肝炎から肝硬変、肝臓がんまで、ほぼ全ての肝疾患に予防・改善効果があるのです。

これだけでも特筆に値しますが、さらに目を引くのは、肝臓病を患っている患者さんほど、コーヒーの効果が強く現れることです。

慢性の肝疾患を持っている人が、1日3杯のコーヒーを飲むと、肝臓の線維化を防いで肝硬変への進行を予防したり、肝細胞がんの発生を抑えて、寿命を延ばしたりする効果があると報告されているのです。

肝臓に対するコーヒーの効果が初めて報告されたのは、1986年のこと。コーヒーを飲む人は、γ‐GTPの数値が低いことがわかりました。

その後多くの国の疫学調査(集団を対象に病気の原因や発生状態を調べる統計的調査)で、コーヒーを飲む人はGOT(AST)、GPT(ALT)、γ‐GTPのいずれもが低いという結果が出ています。

近年急増している非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)にも、コーヒーは有効です。

これは、アルコールを飲まないのに脂肪肝になり、そのうちの一部が重症化して非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進展するという病気です。NASHになると、肝硬変や肝臓がんのリスクが高くなります。

脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまった内臓肥満の状態です。糖尿病の項で述べた通り、コーヒーには脂肪の燃焼を促し、糖やエネルギー代謝を高めてメタボを解消する作用があります。

また、ラットを使った実験では、コーヒーが肝臓の炎症を抑え、脂肪の蓄積を改善して脂肪肝を元に戻すような作用があると報告されています。

慢性のウイルス肝炎に対しては、B型にもC型にも改善効果が認められています。

特に臨床データが多いC型肝炎では、コーヒーを飲む習慣のある人は、飲まない人より、肝臓の線維化や肝硬変への移行が少ないと報告されています。

コーヒーには、抗ウイルス作用のあるカフェインやコーヒー酸が含まれています。コーヒー酸はコーヒーを焙煎したときに産生される成分で、これらが肝炎ウイルスの増殖を抑えるのです。

嫌いな人が無理に飲む必要はない

肝臓の線維化が進むと、肝硬変になったり、肝細胞がんになるリスクが高まったりして、死に至ることがあります。

しかし、これまでの研究で、「コーヒーを常飲している人に進行した肝臓の線維化や肝硬変は少ない」ことがわかっています。

それを裏付けるように、2015年に発表された論文には、コーヒーを飲むことによって、線維化の危険性が27%、肝硬変の危険性が39%低減すると報告されています。

また、別の論文では、コーヒーを3杯以上飲むと、肝細胞がんのリスクを56%も減らせるそうです。コーヒーが、肝臓病の終末像である肝硬変や肝臓がんを予防する効果が高いことがうかがえます。

画像: コーヒーはまさに肝臓の薬!

コーヒーはまさに肝臓の薬!

こうした効果を得るには、コーヒーをどのくらい飲んだらいいのでしょうか。

「1日2杯以上のコーヒーは、ほとんどの肝臓病によい」というデータがありますから、2杯以上で効果はあると思いますが、多くのデータが3〜4杯を推奨しています。

肝臓病や糖尿病を含めて、コーヒーが病気の予防や改善効果を発揮するのは、1日3〜4杯を常飲することです。5杯を超えると、一部の病気(大動脈弁狭窄症)にマイナスになることもありますが、3〜4杯であれば全ての病気に、プラスになることはあってもマイナスになることはありません。

ただし、カフェインが入っているので、妊娠中の女性や小学生以下の子どもにはあまり勧められません。コーヒーを1日1〜2杯にとどめるか、カフェインレスコーヒー(デカフェ)にすることをお勧めします。腎不全や心臓病のある人は、主治医に相談してください

なお、デカフェでもインスタントコーヒーでも、報告された健康効果は大きくは変わりません。飲むタイミングは、いつでもいいでしょう。できれば、ブラックで飲んでください。

ただし、コーヒーが嫌いな人が、健康のために、無理して飲む必要はありません。コーヒーはあくまで嗜好品で、味や香りを楽しむもの。おいしいと感じることが大前提です。

画像: この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。

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