2012年にアメリカの医学誌に掲載された論文以降、コーヒーが健康によいという論文が相次ぎました。その中で、明確な予防効果が示されたのが糖尿病です。コーヒーを1日3杯飲む人でほぼ2割、5杯飲む人で3割、2型糖尿病のリスクが低下すると報告されています。【解説】石原藤樹(北品川藤クリニック院長)

解説者のプロフィール

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石原藤樹(いしはら・ふじき)

北品川藤クリニック院長。医学博士。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。診療のかたわら、ほぼ毎日更新している『北品川藤クリニック院長のブログ』は、現在毎日15000アクセスを超える人気ブログに成長。著書に『コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?』(PHP)などがある。
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コーヒーが寿命を延ばすという論文が発表された

コーヒーは刺激が強く、体に悪い──。なんとなく、そう思っている人は多いのではないでしょうか。

私も、コーヒーの研究を始めるまではそう思っていました。ところが、実際に臨床でコーヒーのデータを集めたところ、意外な結果が出たのです。

その話をする前に、私がコーヒーの研究をするようになったいきさつをお話ししましょう。

私は学生時代から、コーヒーを1日に10杯は飲む大のコーヒー好きで、この習慣は今でも続いています。こうした嗜好品や生活習慣は、健康にどのような影響を及ぼすだろうか。あるときそう考えて、問診で、患者さんにコーヒーの摂取量を聞き、糖尿病との関連を調べました。

なぜ糖尿病かといえば、私は長年、内分泌や糖代謝の研究に携わっていたからです。この調査を10年にわたって行い、5000件を超えるデータが集まりました。

それを分析した結果は、驚くべきものでした。コーヒーを飲む人ほど、糖尿病になるリスクは低く、1日に3杯以上飲む人は、全く飲まない人より、2割以上もリスクが減っていたのです。こんな結果は、当時見たこともありませんでした。

もちろん、この調査は大学で行うような本格的な臨床研究ではありませんが、コーヒーは決して体に悪くない。むしろ健康によいのではないかという確信を、私はひそかに持つようになりました。

それ以来、コーヒーに関する文献や論文を読みあさるようになりましたが、その頃は、健康に否定的な論文が大多数でした。

その潮目を変えたのが、2012年に、アメリカの有名な医学誌(ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に掲載された論文です。

40万人以上に行った健康調査で、コーヒーを1日6杯以上飲む人は、全く飲まない人に比べて、糖尿病、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患、感染症などによる死亡リスクが低下し、総死亡のリスクも低くなることがわかったのです。

コーヒーは、糖尿病だけでなく、あらゆる病気によって起こる死亡のリスクを減らし、寿命を延ばす。そういう画期的な結果が出たのです。

画像: 1日に3杯以上飲む人は糖尿病のリスクが低い。4

1日に3杯以上飲む人は糖尿病のリスクが低い。4

血糖値が気になる人は食前に飲むとよい

この論文以降、コーヒーが健康によいという論文が相次ぎました。

その中で、明確な予防効果が示されたのが糖尿病です。糖尿病専門誌に掲載された論文には、コーヒーをたくさん飲む人ほど2型糖尿病になりにくく、1日3杯飲む人でほぼ2割、5杯飲む人で3割、リスクが低下すると報告されています。

これは110万人以上という膨大なデータを解析したもので、その結果は、私が行った調査とほぼ一致しています。

また、コーヒーに含まれる成分が糖尿病のリスクを下げるという論文も発表されました。

コーヒーには、クロロゲン酸というポリフェノールが含まれています。クロロゲン酸には強い抗酸化作用、抗炎症作用があり、動脈硬化の予防効果が認められています。

これを1日1200mg、3ヵ月間飲んでもらったところ、インスリンの効きがよくなり、血糖値が低下することがわかりました。

しかし、これまでの論文を読むと、クロロゲン酸だけではコーヒーほどの効果はありません。しかも、コーヒー1杯に含まれるクロロゲン酸の量は、多く見積もっても150mg程度。おそらくクロロゲン酸の作用に加えて、コーヒーに含まれるさまざまな成分が体内で活性を持ち、糖代謝をよくしているのでしょう。

また、コーヒーは、糖尿病だけでなく肥満の解消にも有効だと考えられます。コーヒーをブラックで飲めば低カロリーですし、コーヒーに含まれるカフェインには、脂肪を燃焼させてエネルギー代謝を促す作用があります。

また、苦味は甘味の感受性を高めるので、コーヒーと一緒に甘い物を食べると、少しの甘さで満足できます。

最近の治験では、コーヒーにシミを予防する美肌効果があることも報告されています。

コーヒーは、基本的にはいつ飲んでも構いません。ただ、クロロゲン酸に食後血糖値を下げる効果があることがわかっていますから、血糖値が気になる人は食前に飲み、それから食事をするといいでしょう。

また、コーヒーを飲むほど糖尿病のリスクが低くなるという結果が出ていますが、私のように1日10杯も飲む必要はありません。いろいろな調査を総合すると、3〜4杯が最も健康効果が高いことがわかっています。

画像: この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年4月号に掲載されています。

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