ニンニクのアリシンはビタミンB1と体内で結合して、糖代謝の機能を飛躍的に高めます。また体温が上昇し免疫力を高めるため、冷えの解消やガン・感染症の予防にも役立つでしょう。血中のコレステロールを低下させる作用もあり、これらは動脈硬化や高血圧の予防・改善に有効です。【解説】小林順子(医師・ダイエットインストラクター)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

小林順子(こばやし・じゅんこ)

医師。一般社団法人「日本栄養バランスダイエット協会」特別講師・名誉インストラクター。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に基づき「黄金バランス」を栄養指導に導入。自身がやせた経験を生かし、「Dr.じゅんじゅん」として「食べてやせるダイエット」を提唱している。
▼「医師が教える健康ダイエット」(公式ブログ)

ニンニクのにおい成分で糖代謝が飛躍的にアップ

私は医師であり、ダイエットインストラクターとしても活動しています。特に、「食べることを楽しみながらやせたい」と願う人から、日々、ダイエット相談を受けています。

開講するセミナーやブログなどで、ダイエットに役立つ料理を紹介することも、少なくありません。なかでも、皆さんに広く勧め、喜ばれているのが「ニンニクスープ」です(作り方は下項を参照)。

ニンニクに着目したのは、私自身のダイエットがきっかけです。私は、ダイエット指導において、栄養のバランスを重視しています。ニンニクは栄養価が高いうえ、その強烈なにおい成分に、優れた薬効があります。

ニンニクには、アリインという物質が含まれています。ニンニクを切ったりつぶしたりして細胞を損壊すると酵素が働き、アリインが、アリシンという物質に変わります。これが、あのにおいの元になる成分です。

アリシンには実にさまざまな働きがありますが、特筆すべきは、体内の糖をエネルギーに変える糖代謝の機能を、飛躍的に高める作用です。これについて少し説明しましょう。

糖や脂質をエネルギーに変えるにはビタミンB群が必須ですが、特に糖を代謝する際、補酵素として欠かせないのが、ビタミンB1です。チアミンとも呼ばれるこのビタミンは、疲労回復、筋肉のコリや痛みの改善、脳を含む神経の正常化などに役立ちます。

ビタミンB1は、豚肉や大豆製品、ナッツ類などに比較的多く含まれますが、水溶性なので体内に蓄積されません。

ここで注目なのが、先述したニンニクのアリシンです。アリシンは化合物としては不安定ですが、ビタミンB1と結合するとアリチアミンという物質に変化し、安定するのです。

ビタミンB1同様の働きは維持したまま、血中にとどまりやすくなります。脂溶性になることで、体内での吸収率がアップ。糖代謝が格段に高まるのです。

スープなら胃を傷めずにより効果が高まる

ニンニクを積極的に摂取すると、アリシンがビタミンB1と体内で結合して代謝をよくするので、やせやすい体づくりに大いに貢献します。

そして、糖代謝の向上は糖尿病対策の一助になります。糖がエネルギーになる際に熱が産生されるので、体温が上昇。アリシンの血管拡張作用も加わり、冷えが解消されるのです。

体温の上昇は免疫力を高めるので、ガン予防にもなります。今なら、新型コロナなどの感染症予防にも役立つでしょう。

体温が上がると、血行が促進されます。そのうえアリシンには血液凝固を阻害し、血中のコレステロールを低下させる作用もあります。これらは動脈硬化や高血圧の予防・改善に有効です。

また、肝細胞に働きかけて肝臓の解毒機能の維持・向上を助けます。ニンニクの薬効は、枚挙にいとまがありません。

ただ、アリシンは刺激が強くニンニクを生でとると、胃を傷めるおそれがあります。加熱してスープにすれば胃を傷めず、物理的にも体が温まり、より高い効果が期待できるのです。

ニンニクの主な薬効

代謝を改善!
 冷え解消、肥満・糖尿病を撃退
免疫力がアップ!
 ガン、新型コロナやインフルエンザなどの感染症を予防
血行を促進!
 動脈硬化や高血圧を予防・改善
肝臓をデトックス!
 肝機能の維持・向上をサポート

画像: 【ニンニクスープでダイエット】糖代謝と体温が上がってやせやすくなる 不眠の改善にもおすすめ

私が、こうしたニンニクの働きを味方につけ、食事を見直してダイエットに成功したのは、10年ほど前の45歳のときです。

徐々に太っている自覚はありましたが、子供の卒業式の前日に、着ようとしていたスーツが入らないことに愕然。このときダイエットを決意しました。

ジム通いから始まり、置き換えダイエットや、夜だけ糖質制限、断酒など、いろいろ試しましたが、長続きしません。少しやせても、すぐにリバウンドします。

そのうち、やたらとカゼをひいたり、ひと冬に2回もインフルエンザにかかったりと、医師としてあるまじき体調不良が続発。「ダイエットが健康を害している」と気づいたのです。

健康を向上させるための食事に目が向いた私は、そこで初めて、厚生労働省が5年ごとに改訂している「日本人の食事摂取基準」を熟読しました。そして、必要な食べ物を必要なバランスでとることを、地道に実践。その過程でニンニクスープも、大いに活用しました。

すると、1ヵ月に1kg程度のペースでスルスルとやせ始め、8ヵ月かけて、10kgの減量に成功したのです。こうした自らの経験を生かし、「食べて健康的にやせる」ダイエットを、セミナーで提唱しています。

実際、受講生の皆さんにも、3ヵ月から半年で、3~6kgほどやせるかたが、多く見られます。下項では、食事にニンニクスープを取り入れることで、やせた、健康になったという数々の声もご紹介しましょう。

ニンニクスープの作り方

画像1: ニンニクスープの作り方

【材料】(4食分)
ニンニク…4片
水…1L
オリーブオイル…大さじ1
塩、コンソメ(粉末)…各小さじ1
コショウ…適量
刻みパセリ(あれば)…適宜

画像2: ニンニクスープの作り方

【作り方】
ニンニクはみじん切りにする。
鍋にオリーブオイルと①を入れ、中火で炒める。薄く色づいたら水を注ぎ、沸騰したら弱火にし、7~8分煮る。
塩とコンソメを加え、2~3分煮る。
コショウを加え、好みでパセリを散らす。

冷えの解消が健康を左右する

私がダイエット指導に取り入れている「ニンニクスープ」は、やせる以外にも多くの健康・美容効果をもたらします。

ニンニクスープを継続してとることで、体にさまざまな変化が現れますが、最もわかりやすいのが「冷えの解消」です。

冷えは、ダイエットを阻む大きな要因です。体が冷えている人は、たいてい基礎代謝が低下しています。基礎代謝とは、内臓の機能や体温の維持といった生命活動を行うために必要な、最低限の代謝のことです。

体内で糖や脂肪をエネルギーに変換する際、熱が産生されますが、代謝が悪ければ体が冷えがちになります。糖や脂肪が体に蓄積されやすくなり、なかなかやせることもできません。

また、「冷えは万病の元」といわれるとおり、代謝の低下は血行を悪化させ、免疫力を落とし、多くの疾病を招きます。冷えの解消が、健康を左右するといっても過言ではないのです。

ニンニクに含まれるにおい成分のアリシンは、末梢血管を拡張させます。血行促進に即効性があるので、「飲んだ翌日、いつもより手足がポカポカした」と報告してくださるかたも、多くいらっしゃいます。

ニンニクスープを積極的にとることで冷えが解消し、やせやすく、健康的な体に変わっていくのです。ここでは、ニンニクスープを飲んで変化を実感したかたがたの例を挙げましょう。

60代の女性・Aさんは、低体温症でした。平熱が35度台で、体温を上げるためにさまざまな方法を試したそうですが、どれも効かなかったといいます。

そんなAさんも、積極的にニンニクスープをとるうちに体温が上昇。最近では、36度台に上がったそうです。「コロナ禍で毎日体温を測っているので、間違いない。あれほど悩んでいた低体温がすんなり解消できた」と、喜んでいます。

40代の女性・Bさんは、ひどい冷え症でした。毎年12月に入ると電気毛布が必須。それでも寝つきが悪く、眠りも浅いことに悩んでいました。寝つけずに起きた際は、夜食を口にしてしまい、自己嫌悪に陥っていたそうです。

けれども、ニンニクスープをとるようにしたところ、体質が変わってきました。電気毛布を使うと汗をかくようになり、そのうち、真冬でも、電気毛布なしでぐっすり眠れるようになったのです。「自分の体温で布団を温められるようになった」とBさん。夜食をとらなくなったことも手伝い、スムーズに7kgやせることができました。

自律神経のバランスが整い睡眠の質も向上

実は、冷えと睡眠には深い関係があります。内臓や血管の働きは、交感神経と副交感神経からなる自律神経により、意志とは無関係に調整されています。

活動時に優位になる交感神経は、夜になると、副交感神経に切り替わります。体がリラックスモードになるにつれて熱が放散され、体温が低下。通常は、こうした体温の変化により、睡眠が促されるのです。

けれども、常に体が冷えている人は、この日中から夜にかけての自律神経の切り替えがうまくできず、それが睡眠障害につながります。冷えの解消は、よい睡眠をもたらし、それがダイエットにもつながります。

40代の女性・Cさんは、夜中に目が覚める睡眠障害と、無意識のうちにお菓子を過食する摂食障害に悩んでいました。しかし、ニンニクスープを中心に食事を改善するよう指導したところ、半年ほどで眠れるようになり夜中の過食がストップ。その結果、4kgやせることに成功したのです。

過食と嘔吐をくり返す摂食障害を、毎日1杯のニンニクスープで克服した例は、ほかにもあります。代謝がよくなることで、生体リズムが整いやすくなり、自律神経やホルモンのバランスが改善されることが奏効していると考えられます。

ニンニクスープをダイエットに活用しつつ、健康診断の数値を改善させたかたもいらっしゃいます。

60代の女性・Dさんは、中性脂肪値とコレステロール値が高く悩んでいましたが、ニンニクスープを中心に、ダイエットを実践。すると、3ヵ月後の健康診断で、いずれの数値も改善したそうです。

「数値が下がったのは初めて」と感激するDさんは、3kgのダイエットにも成功。看護師さんから「どうやってやせたの?」と質問攻めにあったそうです。

私がダイエット指導で勧めるニンニクスープはいくつかの種類がありますが、今回は最もシンプルなレシピを紹介しました。ニンニクはとり過ぎても胃を傷めるので、1日に1片くらいが適量でしょう。

冷蔵庫で3~4日は日もちするので、作りおきして、毎日1杯飲むことをお勧めします。ニンニクスープを積極的にとり、ダイエットに、健康づくりにとぜひ活用してください。

画像: この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。

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