解説者のプロフィール

川﨑知寿(かわさき・ちず)
治療院鍼灸Tsubomi主宰。鍼灸師、薬剤師。女性の体や心に現れた症状、美容に関する悩みを解消すべく、東洋医学の理論に基づき鍼やお灸を使い治療を行う。また、薬剤師としては、女性健康サポーターとして、漢方相談や薬膳指導、サプリメント指導などを行っている。お灸を使った、セルフケアサポーターとしてのセミナーも長崎市内「Kuriya」にて随時開催。川﨑先生の治療は、セミナー教室を受講した女性のみに限定しています。問い合わせはsinkyu.tsubomi@gmail.com
男女を問わず尿トラブルの解消に有効
頻尿や尿もれなどの解消には、男性は加齢や運動不足で、女性は加えて妊娠や出産などで衰える骨盤底筋の強化が欠かせません。
しかし、骨盤底筋は体の深部にあり、どこにあるか、自分では意識しづらい筋肉です。骨盤底筋の体操にはいろいろありますが、骨盤底筋を動かしている実感がなかなかわかないことから、効いているのか、自分のやり方で合っているのかわからず、モチベーションを維持しにくいというかたが多くいます。

また、効果を発揮するには継続して行うことがたいせつですが、簡単で楽しくないと、長く続けるのは難しいものです。
私の患者さんでも、尿トラブルで悩んでいる人は多く、何かいい方法がないかと考案したのが、リズミカルに楽しくできる「お尻フリフリ体操」です。
骨盤底筋を鍛えるには、おなかの腹横筋、お尻の大殿筋、太もも内側の内転筋を連動させて動かすことが重要になります。
こうしたことから、お尻フリフリ体操は、ピフィラテス(アメリカの泌尿婦人科専門医、外科医のブルース・クロフォード氏が開発した骨盤底筋エクササイズ)、特にプライオメトリックストレーニング(筋肉の瞬発力を高めるトレーニング)を参考にしました。
お尻をパルス運動(リズミカルに弾むような運動)で前後に振ることで、先の四つの筋肉が連動して鍛えられるのです。
加えて、腰に手を置いて腎兪(じんゆ)というツボを押しながら行うのもポイントです。
東洋医学の観点でいうと、尿トラブルと特に関係が深いのは、五臓六腑の腎と膀胱です。腎は、運ばれてきた水分を必要な物と不要な物とに分け変化させます。膀胱は、尿を蓄えたり排泄したりします。この二つが連携して排尿をコントロールしています。
しかし、腎の働きが悪くなると、膀胱の不要な水分を尿や汗として排出する気化作用や、汗や尿の量を調節する固摂作用が低下します。それが、尿トラブルを引き起こすのです。
そこで、腎の治療に効果的な腎兪のツボを押しながら行うことで、腎の働きをますます高めます。一石二鳥でトレーニングの効果を発揮できるわけです。
また、ストレス等で五臓の肝が高ぶると、肝と腎の臓器に潤いがなくなります。すると、熱が生じて膀胱の気化作用に不全が起こり、少ない尿量でも尿意を感じたり残尿感が出たりすることもあります。
お尻フリフリ体操で筋肉を使えば、肝の高ぶりを鎮められます。男女を問わず、尿トラブルの解消が期待できるでしょう。
腰痛や肩こり、ネコ背、便秘、むくみにもおすすめ
「お尻フリフリ体操」のやり方は、下記をご覧ください。
ひざ立ちになり、太ももの内側とお尻、尿道に力を入れながら上半身をまっすぐにして頭を上へ伸ばすイメージで行うことで、骨盤底筋を意識しやすくなります。
遠くを見ながら、骨盤底筋も上へ引っ張るように意識しましょう。キュッ、キュッとリズミカルに行うのがコツですが、ゆっくり行ってもОKです。
お尻フリフリ体操は尿トラブルだけでなく、腰痛にも有効です。胸を開くことで、慢性の肩こり、ネコ背、便秘、足のむくみなど、骨盤底筋の衰えによるさまざまな不調の改善も期待できます。おなかやお尻の筋肉も鍛えられるので、ポッコリ腹が解消し、ヒップアップにも役立ちます。
お尻フリフリ体操のやり方
【ポイント】
・常に上半身はまっすぐにし、頭および骨盤(底筋)を上へ引っ張るイメージで行う。
・腹式呼吸を心がける。鼻から吸うときにおなかを緩ませ、口から息を吐くときにおなかをへこませる。
❶ヨガマットを敷くか、ラグやカーペット、畳などの上で、ひざ立ちする。腰に両手を添えて、親指を左右の腎兪に当てる。顔は正面に向け遠くを見る。

【腎兪の場所】おへその高さの背中側で背骨から指2本分外側。

❷鼻から息を吸い、太ももの内側とお尻に力を入れ、腰だけを前に出す。

❸口から息を吐き、おなかをへこませながら、腰だけを後ろに引く。

❹②~③をリズムカルにくり返す。慣れないうちは10~20往復行う。慣れてきたら、腰が痛くならない範囲で少しずつ回数を増やす。最長5分程度が目安。

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。
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