尿もれのタイプが腹圧性にせよ、切迫性にせよ、骨盤底筋がきちんと働かないと、尿道を締める力が弱まり、尿がもれやすくなるのです。そして、頻尿の原因となる過活動膀胱も、骨盤底筋の緩みと無関係ではありません。このため、いずれの症状にも、骨盤底筋体操を勧めています。【解説】佐藤亜耶(自由が丘ウロケアクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

佐藤亜耶(さとう・あや)

自由が丘ウロケアクリニック院長。2006年、日本大学医学部卒業。08年、日本大学医学部板橋病院泌尿器科医局に入局。その後、東京都保健医療公社豊島病院、日本大学医学部附属練馬光が丘病院、埼玉県立小児医療センター、新都心むさしのクリニック女性泌尿器科などでの勤務を経て、19年に自由が丘ウロケアクリニックを開院。日本泌尿器科学会認定専門医。医学博士。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学会、日本夜尿症学会に所属。女性と小児の泌尿器科を専門とする。

ストレスをためず腹巻きや回路で体を温める

私は、女性と小児の泌尿器科クリニックを開業しており、幅広い年齢層のかたが受診されます。40~60代の患者さんから相談されることの多い症状が、トイレの回数が増える「頻尿」と尿失禁、いわゆる「尿もれ」です。それぞれについて、原因と対策を解説しましょう。

【頻尿】

読んで字のごとく、頻繁に強い尿意が起こる症状です。摂取する水分量にもよりますが、一般的には、トイレの回数が1日に8回以上だと、頻尿の可能性があります。

腎臓で作られた尿は、膀胱にたまります。排尿の回数が多いと、膀胱の中にあまり尿がたまらないので、1回の排尿量は少ないことが多いものです。

頻尿の原因には、膀胱が過敏になり過剰に収縮する「過活動膀胱」があります。

過活動膀胱の患者さんは、会議中や電車の中など、時と場所を選ばずに強い尿意を催すので日常生活に、支障を来します。

原因には、加齢やストレス、冷えなど、複数の要素があり、複合的な刺激で膀胱が過敏になった結果、過剰な収縮が起こると考えられています。

画像: ストレスをためず腹巻きや回路で体を温める

頻尿に対して有効なのが、薬による治療と、生活習慣の改善です。薬による治療の場合、主な処方は、二つあります。

一つは、副交感神経による刺激を抑える、抗コリン薬です。膀胱の過剰な収縮を抑え、過活動による切迫した尿意を和らげる目的で使われます。

もう一つは、交感神経を刺激して膀胱を緩ませ広げることで尿をためられる容量を増やす、β3刺激薬です。

頻尿の治療では、必要に応じてこれらの薬を処方しつつ、生活面のアドバイスをします。

極力ストレスをためず、体を冷やさないことが肝心。腹巻きを着用し、下半身をカイロで温めるなどの方法がお勧めです。入浴は、シャワーで済まさず、湯船に浸かるといいでしょう。

頻尿だからと、水分を制限するのはNGです。私は患者さんに、ノンカフェインのほうじ茶や麦茶、ルイボスティーなどをホットで飲むことを勧めています。カフェインを含む飲料は、それが刺激となり、症状が悪化するおそれがあるからです。

こうした生活上の工夫は、このあと説明する、尿もれの改善にも、同様に役立ちます。

尿もれはトイレを少し我慢するのも効果的

【尿もれ】

尿もれも、頻尿同様、訴えの多い症状です。尿もれはそのタイプにより、「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の二つに分けられます。

腹圧性尿失禁は、尿意はなくても、おなかに圧がかかることで、尿がもれる症状です。

特に、出産経験のある女性なら、セキやくしゃみをしたとき「今、もれたかも?」と感じたことが、一度はあるのではないでしょうか。重い物を持つなどして、おなかに力が入ったときにも、もれやすくなります。

腹圧性尿失禁の原因は、はっきりしています。骨盤底筋の緩みによる、尿道括約筋などの、筋力の低下です。

女性は出産すると、子宮や膀胱、尿道などを支える骨盤底筋が、傷ついたり伸びたりして、緩みます。また、加齢や肥満も緩む一因となります。

骨盤底筋が緩み、尿道を締める働きが低下すると、おなかに少し圧がかかっただけでも、尿がもれやすくなるのです。

画像1: 尿もれはトイレを少し我慢するのも効果的

そして、もう一つのタイプの尿もれが、切迫性尿失禁です。

これは、おなかに圧がかかってもいないのに、強い尿意が急に起こり、トイレが間に合わず尿がもれる……といった事態がしばしば起こる症状です。

このタイプの尿もれは、過活動膀胱の影響を受けています。膀胱が過敏になっていると、チョロチョロという水の流れる音や、手を洗った水の冷たさなどが刺激になり、切迫性のある尿意が、急に起こります。

正常な状態であれば、排尿を我慢する信号が脳から送られることで、骨盤底筋の尿道括約筋が機能し、尿道が締まります。

けれども、骨盤底筋がきちんと働かないと、尿道を締める力が弱まります。その結果、下着を濡らしてしまうのです。

過活動膀胱の原因はさまざまで複合的、と先述しましたが、骨盤底筋の緩みにより膀胱が下垂すると、これも過活動膀胱を引き起こす原因となります。

切迫性尿失禁の場合、過活動膀胱が尿意の引き金となることから、頻尿と同様に、薬が効くケースも少なくありません。

また、尿意を感じても少し我慢し、トイレに行く間隔を伸ばしていく「膀胱訓練」も、膀胱の容量を増やし、頻尿や尿もれの改善に役立ちます。まずは自宅で行うとよいでしょう。

画像2: 尿もれはトイレを少し我慢するのも効果的

体操やストレッチ、生活習慣の見直しで改善

尿もれのタイプが腹圧性にせよ、切迫性にせよ、骨盤底筋の働きはとても重要。ですから、尿もれに有効な治療法は、なんといっても、骨盤底筋を自力で鍛えることです(やり方は下項を参照)。

そして、頻尿の原因となる過活動膀胱も、骨盤底筋の緩みと無関係ではありません。このため私は、尿もれと頻尿、いずれの症状にも、骨盤底筋体操を勧めています。

若い人のほうが比較的早く効果が出ますが、年配のかたでも2~3ヵ月続ければ、多くの場合、いい効果が現れます。患者さんの例を紹介しましょう。

60代の女性・Aさんは、頻尿に加え、排尿時の違和感や残尿感があり、受診されました。

このかたは体操やストレッチの実践に加え、腹巻きを着用。入浴時は湯船に浸かり、温かい物を飲むようにしました。すると、徐々に頻尿が改善し、違和感や残尿感もなくなりました。

30代の女性・Bさんは、産後の腹圧性尿失禁に悩んでいましたが、骨盤底筋体操にしっかり取り組み、わずか1ヵ月で尿もれが解消。今では、尿をもらす心配をせず、安心して、お子さんと縄跳びができるそうです。

セルフケアに不安がある場合は、恥ずかしがらずに泌尿器科を訪ねてください。悩みを相談するだけで、きっと心も症状も軽くなるでしょう。

骨盤底筋体操のやり方

画像1: 骨盤底筋体操のやり方

【基本の姿勢】
あおむけになり、両足を軽く開き、ひざを立て、片手をおなかにのせる。腹筋に力が入らないよう、リラックスして行う。

画像2: 骨盤底筋体操のやり方

【やり方】
おならをこらえるイメージで、肛門を締める。
※筋肉の収縮する感覚がわからない場合は、指先で肛門の縁に触れながら行うとわかりやすい。

肛門の収縮が確認できたら、おしっこを我慢するようなイメージで、膣と尿道を締める。

肛門と尿道を引き上げ、全体を内側に引き込むイメージで、骨盤底筋を締める。そのまま10秒キープする。

①~③を10回行う。これを1セットとし、1日に5~10セット行う。
慣れたら立って、または座って行ってもよい。電車などでの移動中や、テレビを見ながらなど、行うタイミングはいつでもOK。

画像: この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。

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