光明は足の外くるぶしのやや上にあり、目から遠く離れています。そんな離れたツボが目に効くのかと疑問に思われるかもしれません。私たちの実験の結果、光明への刺激によって眼底血流量が有意に増加することが確認できたのです。【解説】矢野忠(明治国際医療大学鍼灸学部教授)

解説者のプロフィール

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矢野忠(やの・ただし)

明治国際医療大学教授・同大学学長。京都府立医科大学客員教授。岐阜医療大学非常勤講師。京都大学保健医療学部非常勤講師。研究テーマは、神経機能に及ぼす鍼灸刺激の影響、レディース鍼灸学、鍼灸療法に関する疫学的研究など。著書に『女性のための東洋医学入門』(日中出版)など多数。

ほかのツボより眼底の血流量が優位に増加

足の「光明(こうめい)」というツボは、昔から目の特効ツボと考えられてきました。そもそも光明という名前自体が、「目に光明をもたらす」という、その働きからきていると考えられます。

光明は、足の外くるぶしのやや上にあり、目から遠く離れています。そんな離れたツボが目に効くのかと、疑問に思われるかもしれません。

私自身もこの点に関して興味を持ち、いくつかの実験で調べてみました。

まず行った実験では、光明のツボを鍼で刺激して、それによって眼底血流量がどう変わったかを計測しました。実験の結果、光明への刺激によって、眼底血流量が有意に増加することがわかりました。

続いて、足にあるいくつかのほかのツボと比較。光明と同様の効果が出るかどうか、確かめました。すると、ほかのツボは、目にほとんど影響を与えておらず、光明だけが眼底血流量を増加させることがわかりました。

私たちは、さらに実験を行いました。目の特効ツボとされる、手の合谷(手の親指と人差し指の骨の交わるところ)や腕の曲池(腕を曲げたときにできるシワの親指側の先端)をはじめ、ほかのツボとの眼底血流量について比較検討しました。

その結果、合谷などへの刺激でも眼底血流量は増加しましたが、光明ほど眼底血流量が増えませんでした。

こうした実験結果から、光明は目に対して非常によい影響を及ぼすツボであることが確認できたのです。

眼のピント調整機能が改善

さて、光明を刺激すると、実際にはどんな効果が期待できるでしょうか。

眼底の血流量が増加するということは、眼底だけに限らず、目全体や周辺組織の血行も改善されます。これにより、視機能が高まることは十分期待できます。実際、眼のピント調節機能の改善が確かめられました。

したがって、眼精疲労の解消や視力アップなど、多くの効果が期待できると考えられます。

また、正常眼圧緑内障では、眼底の血流が顕著に低下するとされています。ですから眼底の血流量を上げる光明への刺激は、正常眼圧緑内障にも有効ではないかと考えられるのです。

ところで、光明への刺激がこのような効果をもたらすのは、なぜでしょうか。

東洋医学的には、目と関連が深いのは、「肝の臓」とされています。光明は、胆経という経絡(一種の生命エネルギーである気の通り道)に属するツボですが、実はこの胆経というのは、肝経という経絡と表裏一体の関係にあります。

そのため、胆経の光明への刺激が肝経の気の流れをよくし、目の働きを高めるのではないかと考えられるのです。

また、西洋医学的には、光明への刺激は、脊髄(脳と体の各部を連絡する組織)を通じて、一度、脳にまでさかのぼり、次に脳から顔面神経を介して、NO(一酸化窒素)の産生を促すと推測されます。NOには、血管拡張作用がありますから、それで眼底などの血流量も増加するのではないでしょうか。

光明への刺激は「つまようじ」がおすすめ

では、光明のツボの探し方を説明しましょう。

外くるぶしの先端と、ひざを深く折ったとき、ひざ外側にできるシワ(横紋)の先端とを結びます。この線を16に分割したときの下から5番めの高さです。

おおまかにいえば、この線を三つに分割したとき、下から3分の1のポイントのやや下、ということになります。

この高さで、脛骨と腓骨という足の2本の骨のうち、後方の腓骨の前へりで、押すと圧痛のある位置です。

画像1: 光明への刺激は「つまようじ」がおすすめ

次に、光明の刺激のやり方です。

つまようじを10本ほど用意し、それを輪ゴムでしっかりと束ねます。これを使って、光明のツボを軽くトントントンとたたきます。

時間は、30秒~1分間。皮膚が赤くなってきたら、それで刺激は十分という証拠です。この刺激を1日に3~5回くり返しましょう。

画像2: 光明への刺激は「つまようじ」がおすすめ

IT社会の発展に伴い、現代は、目を酷使する時代です。目の疲れは、自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを調整する神経)の機能を低下させるなど、心身の変調を来します。そうした対策として、光明というツボをぜひ役立ててほしいと思います。

画像: この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。

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