解説者のプロフィール

立花愛子(たちばな・あいこ)
りゅうえい治療院副院長。鍼灸師免許、管理栄養士免許、医薬品登録販売者資格を取得。鍼灸治療とともに東洋医学の知識を取り入れた栄養指導を行う。そのほか、お灸講座講師、執筆、メディア取材などを通して、簡単で効果的な東洋医学の活用方法を紹介している。著書に『目がスカッと!耳がスッキリ!のツボ』『顔ツボでぐんぐん脳活! すぐに実践できる脳活ツボ・マッサージ』(ぶんぶん書房)など。
適度な圧と刺激で血流を促し筋肉をほぐす
脊柱管狭窄症は、脊髄が通っている管(脊柱管)がなんらかの原因によって狭くなり、神経が圧迫されて、足腰に痛みやしびれが起こる病気とされています。
重症化すると、尿もれなどの排尿障害が起こることもあり、日常生活にも大きな支障を来します。ですから、脊柱管狭窄症の患者さんは、悪化しないように、早めに対策を取ることが必要です。
脊柱管狭窄症の典型的な症状に「間欠性跛行」があります。これは、しばらく歩いたり立っていたりすると、足腰に痛みやしびれが現れ、歩行や立っていることが困難になる症状です。少し休むと、再び立って歩くことができますが、しばらく歩くと、また、同じ症状がくり返されるのです。
足腰に痛みやしびれを感じ、それに始終悩まされるようになると、患者さんは、「また、痛みやしびれが出るのではないか」と怖くなり、だんだん歩かなくなります。大事をとって安静にしがちなのですが、これがよくありません。
歩かなくなると、足の筋力がしだいに低下します。その状態が進行すると、いよいよ歩くのが困難になるという、悪循環に陥ります。すると、痛みやしびれが以前より起こりやすくなり、もっと歩けなくなります。こうして、脊柱管狭窄症は悪化していくケースが多いのです。
脊柱管狭窄症の初期~手術手前の段階で行われている治療といえば、消炎鎮痛薬と血流を促す薬の投与です。つまり、痛みを和らげ、血流をよくしたうえで、歩いて運動機能を保つことが大切なのです。それが脊柱管狭窄症の悪化を食い止め、症状の改善につながります。
今回は、そのために役立つ「つまようじ療法」というセルフケアを紹介しましょう。つまようじ20本くらいを輪ゴムでくくり、一つにまとめます。これを使って皮膚を刺激するという、とても簡単な方法です。
脊柱管狭窄症で痛みやしびれが出ている部位の筋肉は、緊張し、かたくこわばっています。そうなると、痛みなどの症状が出やすいので、その緊張を解くことが大事です。
つまようじ鍼で皮膚を軽くトントンとたたくと、その適度な圧と刺激で、血流がよくなり、筋肉のこわばりをほぐす効果があります。そうした効果で痛みやしびれが減れば、歩いたり運動したりする機会を増やせます。それが脊柱管狭窄症の改善に結びつくのです。
つまようじ療法のやり方
刺激する場所
脊柱管狭窄症の人が刺激するとよい場所は、基本的に痛みやしびれの出ている場所、症状のある筋肉がかたくなっている場所です。
たいていの場合、痛みやしびれが出ているのは、左右どちらかの片側になります。ですから、刺激するのは、症状の出ている側だけでかまいません。
やり方
つまようじ鍼で皮膚を軽くトントンとくり返したたきます。力加減は、少しチクチクするけれど、心地よく感じられる程度。強過ぎると皮膚を傷つけます。気をつけてください。
各場所を1~2分ずつ、1日3回、朝昼晩と時間を決めて行うといいでしょう。実際に痛みやしびれが出ているときに行うと、症状の緩和に役立ちます。
つまようじ鍼の先端に近いところを親指と中指で握り、人差し指をつまようじの後端部分に添えると、刺激がしやすいでしょう。
初期
脊柱管狭窄症は、その進行によって段階的に症状が出る傾向があります。最初は、腰から、足の裏側、特にふくらはぎに痛みやしびれが出てきます。筋肉でいえば、脊柱起立筋、大腿二頭筋、ヒラメ筋や腓腹筋になります。その場合は、腰からふくらはぎまでをまんべんなく刺激します。


中期
さらに進行すると、症状は太ももの外側やすねに出てきます。太ももの太い筋肉である大腿四頭筋は、四つの筋肉からなりますが、このうちの外側にある外側広筋に症状が現れます。すねのわきを走っている前頸骨筋に症状が現れることも少なくありません。この段階では太ももの外側やすねのわき、ふくらはぎと広く刺激することが必要となります。



太ももやふくらはぎは、かなりの広いゾーンになります。刺激する位置を少しずつズラしながら、上下にいったりきたりして、全体をまんべんなく刺激するといいでしょう。痛みがあるところを集中的に刺激してください。ふくらはぎ、太ももの外と、各場所1~2分行ってください。
つまようじ療法の効果を高めるツボの温熱療法
最後に、つまようじ療法の効果を高める方法として行ってほしいツボの温熱療法を紹介しましょう。この温熱療法を行ったうえで、つまようじ療法を始めると、その効果がより実感できるはずです。
腰痛や脊柱管狭窄症の特効ツボとして知られる、おなかの「関元(かんげん)」と、腰の「腰仙点(ようせんてん)」という二つのツボを使い捨てカイロ(貼るタイプ)で温めます。
関元はへそから指幅4本分だけ下がったところ、腰仙点は腰の左右真ん中で、骨盤の上端の高さにあります。押すと、痛みを強く感じるところです。
カイロは、低温ヤケドを防ぐため、下着を2枚重ねた上から貼ってください。


なお、腰痛は感染症やがんなど内科疾患が原因のケースもあります。気になる場合は、一度病院で検査を受けることをお勧めします。

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。
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