つまようじ20本ほどを輪ゴムで一つに束ねた「つまようじ鍼」で、症状のある箇所やツボ周辺を軽くトントンとたたくだけで、血流がよくなって細胞が活性化し、かたくなった筋肉もほぐれます。また、チクチクとした気持ちのよい痛みが自律神経のバランスを整え、体調改善に寄与します。【解説】松原麻実(恵比寿からだとこころ代表・鍼灸師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

松原麻実(まつはら・あさみ)

恵比寿からだとこころ代表・鍼灸師。2009年、札幌青葉鍼灸柔整専門学校卒業、はり師・きゅう師国家資格取得。北海道釧路市の杏園堂鍼灸院およびアロマセラピースイートバジルにて鍼灸師兼アロマセラピストとして勤務。12年から、副院長・院長代理を務める。その後、東京都港区の表参治療室キノワにて鍼灸師・アロマセラピストとしての勤務を経て、21年1月、東京都渋谷区に「恵比寿からだとこころ」を開院。

チクチクとした刺激が自律神経を整える

私は、北海道釧路市の鍼灸院で働いていたころから、冷え症や不眠、めまいなどで悩む多くの人に、セルフケアの一つとして「つまようじ療法」を勧めてきました。寒さでなかなか鍼灸院に通えない人には、「楽になった」と大好評でした。

Aさん(60代・女性)もそんな悩みを持つ一人でした。夜になるといつも考えごとをしてしまい、寝つけない日が続いていました。朝の目覚めも悪く、日中は周囲がグルグル回るようなめまいに襲われることもあったそうです。

そこでAさんにつまようじ療法を教えたところ、徐々に寝つきがよくなり、めまいも起こらなくなったと喜んでいました。

つまようじ療法とは、つまようじ20本ほどを輪ゴムで一つに束ねた、つまようじ鍼(しん)(集合鍼)を作り、その先端で皮膚を軽くたたく健康法のこと。中国に伝わる梅花鍼や集毛鍼といった、鍼治療から生まれたセルフケアです。

梅花鍼は、柄の細長いハンマーのような形状で、先端の片側に小さな短い鍼がたくさんついています。柄をしならせて皮膚をトントンとたたきます。私たちは、円形脱毛症の治療によく用います。

集毛鍼も先端にたくさんの鍼がついています。鍼は梅花鍼より少し長めですが、スプリングがついており、皮膚に当たると少し引っ込むので、あまり痛くありません。

画像: 梅花鍼(左)つまようじ鍼(中)集毛鍼(右)

梅花鍼(左)つまようじ鍼(中)集毛鍼(右)

いずれも、一般的な鍼のように皮膚の上から刺すのではなく、皮膚表面を軽くたたいて、気(一種の生命エネルギー)の流れをよくする物です。

つまようじ療法は、梅花鍼や集毛鍼と同様の効果が期待できます。また、私たちが行う鍼治療による効果の持続にも役立ちますから、そういう意味でも患者さんにお勧めなのです。

やり方は、とても簡単です。症状のある箇所やツボ周辺を、1分ほど軽くトントンとたたくだけ。たたいた部分の血流がよくなって細胞が活性化し、かたくなった筋肉もほぐれます。

また、ツボを刺激すると、経絡の通りがよくなります。経絡は、東洋医学では気の通り道とされ、全身の臓器につながっています。経絡の通りがよくなれば、内臓の機能も高まります。

さらに、皮膚を軽くたたくことによるチクチクとした気持ちのよい痛みが、自律神経(意志とは無関係に、内臓や血管の働きを調整する神経)のバランスを整え、体調改善に寄与します。

つまようじ鍼の作り方

画像1: 【つまようじ療法とは】皮膚を軽く刺激するセルフケア 症状別のツボとつまようじ鍼の作り方を紹介

 
【用意する物】
つまようじ······20本
輪ゴム········1~2本

画像2: 【つまようじ療法とは】皮膚を軽く刺激するセルフケア 症状別のツボとつまようじ鍼の作り方を紹介

 
つまようじ20本を輪ゴムでしっかり1つに束ねると出来上がり。

画像3: 【つまようじ療法とは】皮膚を軽く刺激するセルフケア 症状別のツボとつまようじ鍼の作り方を紹介

 
輪ゴムは1本でも2本でもよい。

画像4: 【つまようじ療法とは】皮膚を軽く刺激するセルフケア 症状別のツボとつまようじ鍼の作り方を紹介

 
【持ち方】
つまようじ鍼の先に近いほうを手の親指と中指でつかみ、人差し指を後端部分に添える。

つまようじ療法のやり方

では、体の不調に効果的なつまようじ療法のやり方をいくつかご紹介しましょう。

つまようじ療法は、少し注意が必要です。

まず、つまようじ鍼の長さをそろえてください。1本、2本だけ飛び出していると皮膚を傷める危険があります。輪ゴムで束ねたあとに、とがっていない側をテーブルなどにトントンと当てると長さがそろいます。

次に、刺激の力加減ですが、〝軽くトントン〟を意識してください。痛気持ちがいいと思う強さで行います。

回数も1ヵ所につき1分間で十分。それでも、皮膚は少し赤くなります。強く押し当てたり、長くやり過ぎたりすると、皮膚を傷つけるので注意してください。刺激に弱い人は、とがっていない側でたたいてもいいでしょう。

そして、まゆや目の周囲を刺激するときは、鏡を見ながら注意して行いましょう。

もう一つ、現在は感染症が気になる時代です。つまようじ鍼はほかの人と共有せず、自分専用の物を使ってください。

つまようじは安価で手に入りやすいですし、つまようじ鍼は簡単に作れます。こうした注意を守り、ぜひ皆さんもつまようじ療法を試してください。
 

イライラ、不眠、めまい

テレワークなどで一日中自宅にいると、生活の切り替えがうまくできず、自律神経のバランスが乱れてきます。その結果、イライラしたり、眠れなくなったり、めまいを起こしたりする人も少なくありません。

そうした症状があれば、つまようじ鍼で頭頂部をトントンとたたくといいでしょう。頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」のツボは、自律神経のバランスを整え、頭部の邪気(悪い気)を発散させます。百会をつまようじ鍼で刺激することで、イライラや不眠、めまいの解消に役立ちます。

前述のAさんのように、考えごとをして寝つけない人は寝る直前に、興奮して眠れない人は、寝る1時間以上前に行うと効果的です。

画像1: ❶ イライラ、不眠、めまい

【百会】頭のてっぺんで、左右の耳の穴を結んだ線と頭の正中線が交わるところ

画像2: ❶ イライラ、不眠、めまい

百会のツボの辺りを、1分ほど軽くトントンとたたく。

疲れ目、かすみ目、老眼、ドライアイ

まゆの上には、「攅竹(さんちく)」、「魚腰(ぎょよう)」、「絲竹空(しちくくう)」という三つの目の特効ツボがあります。攅竹はまゆ頭、魚腰はまゆ頭とまゆ尻の真ん中(瞳の上)、絲竹空はまゆ尻にあります。

ですから、まゆ全体をつまようじ鍼でトントンとたたいて刺激することで、気の流れがよくなり、疲れ目やかすみ目、老眼、ドライアイなどの改善に有効なのです。また、まゆを刺激すると目の周辺の筋肉の緊張がほぐれて血流がよくなり、目の病気の予防にもなります。

画像1: ❷ 疲れ目、かすみ目、老眼、ドライアイ

【攅竹】まゆ頭
【魚腰】まゆ頭とまゆ尻の真ん中(瞳の真上)
【絲竹空】まゆ尻

画像2: ❷ 疲れ目、かすみ目、老眼、ドライアイ

攅竹、魚腰、絲竹空のツボを意識しながら、左右のまゆ全体を、1分ずつ軽くトントンとたたく。
※鏡で場所を確認しながら行う。

食いしばり、歯ぎしり

朝の起床時にあごがだるい、口が開きにくいという患者さんが増えています。そういう人の多くは、ほおから下あごにかけての筋肉(咬筋)が緊張してかたくなっています。ストレスの影響などで、知らぬ間に食いしばりをしたり、就寝中に歯ぎしりをしたりしているのです。

こうした症状に特効なのが、「下関(げかん)」というツボです。下関は耳の穴からほお骨に向かって指幅3本分ほど移動した場所で、口を開けると骨が盛り上がるところ。下関をつまようじ鍼で刺激すると、咬筋が緩んで血流がよくなり、食いしばりや歯ぎしりの改善につながります。

画像1: ❸ 食いしばり、歯ぎしり

【下関】耳の穴からほお骨に向かって指幅3本分ほど移動した場所

画像: 口を開けると骨が盛り上がるところ

口を開けると骨が盛り上がるところ

画像2: ❸ 食いしばり、歯ぎしり

左右の下関のツボとその周囲を、2分ずつ軽くトントンとたたく。

冷え症

冷えには、手足の爪の生え際にある「井穴(せいけつ)」というツボがよく効きます。ここをつまようじ鍼でたたくと血流がよくなり、手足の指先から体がポカポカ温まってきます。

私は北海道にいたころ、足の井穴をつまようじ鍼でたたいてから出かけたものです。おかげで足が温まり、冬でもつらくありませんでした。冷えが強い人は、特に足指の井穴を毎日刺激してください。

画像1: ❹ 冷え症

【井穴】左右の手足にあるすべての指の爪の生え際の両側

画像2: ❹ 冷え症

手足のすべての指の爪の生え際をまんべんなく、3分ほど軽くトントンとたたく。足の指だけでもよい。

肩・首のコリ、円形脱毛症

肩や首のコリがひどい人や、円形脱毛症の人は、患部の血流が悪くなっています。コリを感じるところ、脱毛している部分をつまようじ鍼でトントンと刺激してください。血流がよくなり、症状が改善してきます。

画像1: ❺ 肩・首のコリ、円形脱毛症
画像2: ❺ 肩・首のコリ、円形脱毛症

肩・首のコリは、コリのあるところをまんべんなく、2~3分軽くトントンとたたく。

画像3: ❺ 肩・首のコリ、円形脱毛症

円形脱毛症は、脱毛している部分をまんべんなく、1分ほど軽くトントンとたたく。

画像: この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年4月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.