マイタケの成分、βグルカンの精製中に得られた「MDフラクション」という物質に、乳がん、肺がん、肝臓がんなどの腫瘍が縮小する例が確認されています。また「MXフラクション」という物質には、糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化といった生活習慣病の改善に非常に役立つ可能性があります。【解説】難波宏彰(神戸薬科大学名誉教授)

解説者のプロフィール

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難波宏彰(なんば・ひろあき)

神戸薬科大学名誉教授。京都大学農学部で「ウイルスの増殖抑制」を学ぶ。神戸女子薬科大学(現神戸薬科大学)でマイタケの研究を始め、免疫活性化物質「MDフラクション」の抽出に成功。この功績により1995年、米国代替がん治療学会特別賞を受賞。2010年、世界初のグランド・ライナス・ポーリング賞を受賞。マイタケ研究の第一人者の評価を受けている。

36種のキノコの中で最強の抗腫瘍性を持つ

以前から、キノコ類に含まれるβグルカンという多糖類が、がんの増殖を抑制するのではないかと注目を集めてきました。

そこで、私たちの研究室では、36種のキノコの抗腫瘍性を調べる動物実験を行いました。そして、その中でもマイタケに、がん細胞の増殖を最も強力に抑える作用があることを見出したのです。

次に、マイタケの成分のβグルカンの精製中に、さまざまな物質を得ました。それを順番にA、B、C……と名付けて実験をくり返していくと、4番目に得られた物質に、非常に強い抗腫瘍性が認められました。

そこで、この物質を、マイタケのMと合わせて「MDフラクション」と命名したのです。

現在、このMDフラクションは、アメリカなどの医療現場の一部で活用されています。そして、一定期間投与した患者さんの中には、乳がん、肺がん、肝臓がんなどの腫瘍が縮小する例が確認されています。

このほか、エイズや急性白血病の改善例も報告されており、がん患者の化学療法薬の副作用を緩和させ、末期がんの痛みを取る作用があるということもわかっています。

画像: 高い抗腫瘍性と抗ウイルス性を持つ。

高い抗腫瘍性と抗ウイルス性を持つ。

ウイルス感染への防御力を高める

このような効果が得られるのは、MDフラクションに、私たちの体の免疫細胞を活性化させる働きがあり、これにより正常な細胞が守られるからだと考えられます。

私たちの体に病原菌やウイルスなどの異物が侵入すると、最初にマクロファージという白血球の一種が発動し、異物の一部を取り込んで消し去ります。それとともに、免疫機能の指揮官であるヘルパーT細胞へ異物の侵入を伝えます。

ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞という二つのタイプがあります。

Th1細胞は異物侵入の知らせを受けると、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞を活性化します。

一方、Th2細胞は、リンパ球の一種のB細胞を刺激します。これによりB細胞が異物に対する抗体を作りだします。

この免疫のシステムの中で、MDフラクションは、Th1細胞を増加させたり、活性化させたりする働きをします。

つまり、ウイルスに感染したり異常を来たしたりした細胞への攻撃力を高めてくれるのです。

実際、富山大学が行った動物実験においては、MDフラクションを投与すると、インフルエンザウイルスの感染を防御できることが判明しています。

このことからすると、まだ実験で証明されていませんが、現在流行中の新型コロナウイルスの感染防止にも関与できる可能性があるかもしれません。

画像: マクロファージの作用

マクロファージの作用

画像: すい臓中のナチュラルキラー細胞数

すい臓中のナチュラルキラー細胞数

さらに、マイタケのβグルカンを精製して得られる物質の一つに、「MXフラクション」があります。

MXフラクションは、糖やコレステロールの合成を抑制することがわかりました。さらに、臓器や血液中の余分な脂質の分解を促進し、体外に排出しやすくする作用もありました。

つまり、MXフラクションは、糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化といった生活習慣病の改善に非常に役立つ可能性がある成分だと言えます。

MDフラクションもMXフラクションも、現時点では他のキノコ類には含まれていない、マイタケだけに含まれると考えられる成分です。

そして、MDフラクションもMXフラクションも,「キチン」という成分でできた強固な細胞壁に包まれているため、調理時に、その細胞壁をしっかり壊しておかないと、せっかくの成分を摂取することができません。

そのため、マイタケを水とともに長時間(30分以上)煮出すか、圧力鍋で10分以上加圧加熱調理をしましょう。

そして、必ず煮汁と具の両方を食べるようにしてください。MDフラクションもMXフラクションも水溶性の成分なので、煮汁の中に溶け出すからです。

より効率的に成分を摂取するには、ミキサーにかけてから煮込むのもお勧めです。 

ただし、全ての人に必ず同様の効果が得られるわけではなく、人の免疫反応性や病態、進行度合によって効果の出方は異なり、無効の場合もあります。

補完療法の一つとして、主治医と相談しながら、活用してください。

画像: この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。

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