解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。You Tubeチャンネル「マチコばあちゃんの薬草歳時記」https://www.youtube.com/channel/UCWmVBcoVkyKIDB06keRqhNg
今が摘みどき、作りどき!
「タンポポ」
【効果・効能】健胃、利尿、強壮、解熱、内臓強化、解毒
四季を通して採集できる身近な薬草
2月初めの立春を過ぎれば、暦の上では春になります。でも、その頃が一年で最も底冷えを感じる時期です。薬草摘みに出かける腰も、少し重たくなりますね。こんなときは、どこにでも生えているタンポポで、体調を整えることにしましょう。
タンポポは、知らない人はいない身近な植物です。繁殖力が強く、一年を通じてさまざまな種類のタンポポを見ることができます。
在来種のニホンタンポポは、年々、数が減ってきており、反対に優勢になってきているのが、セイヨウタンポポなどの外来種です。
セイヨウタンポポがいつ頃から日本に入ってきたのか、はっきりわかっていませんが、北海道から広まったという説があります。その説によると、札幌農学校で教師だったアメリカ人が自国から種を取り寄せたとのことです。北海道は長らく、冬野菜が乏しかったので、野菜代わりの食用としたのでしょう。
タンポポの種は綿毛がついていて、風が吹くと、ふわふわとどこにでも飛んでいきますね。そうやって、日本中に広がったのではないでしょうか。ちなみに、北海道にはコウリンタンポポといって、赤いタンポポもあります。これも外来種です。
そうした外来種と在来種をどこで見分けるかというと、花の「がく(花びらの付け根にあって支える役割を持つところ)」です。がくが上を向いているのが在来のニホンタンポポで、反り返っていて、下を向いているのがセイヨウタンポポです。薬草としての使い方に変わりはなく、同じように使えます。
タンポポの効能は、「苦味健胃(くみけんい)」といい、苦味で胃を刺激して機能を促進させる働きがあります。
外国では、タンポポを食用にしている国も珍しくないですから、野菜と同じように、油炒めや、おつゆの具、おひたしなど、いろいろな料理に使えます。やや苦味がありますが、気になるなら、さっとゆでこぼすか、油炒めにするとよいでしょう。春先の軟らかい葉っぱは、生でも食べられますから、サラダに向いています。
花もきれいに洗い、水気を切って、がくからほぐしたものを、食用菊のように白あえなどのあえ物に混ぜても、なかなか洒落ています。また、薄い衣をつけて天ぷらにすると、苦味が飛んでおいしくいただけます。
苦味は油で和らぎますから、タンポポに限らず、苦い薬草を使いあぐねたときは、天ぷらにすると、間違いなくおいしくいただけます。
根っこを使ったコーヒーは栄養が豊富
タンポポは、根っこも大きいです。これはコーヒーにします。群生しているので、すぐにそれなりの量が集まるでしょう。
採取した根はきれいに洗って、ハサミで1cmくらいに切り、天日干し、またはホットカーペットに新聞紙を広げた上に並べ、よく乾かします。カラカラになるまで、数日はかかります。
乾燥したら、厚手の鍋で香ばしい匂いがしてくるまで焙じてください。これをミキサーで粉にすれば、タンポポコーヒーの完成です。粉は保存容器に入れて、普通のコーヒーのように保管してください。
注意点は、香ばしい匂いが立ちだすまで、気長に焙じることです。これをやらないと、草っぽい臭さが残って、おいしくありません。
そして、しっかり薬効を得たいと思うなら、素手で鍋肌に触れられるくらい、柔らかな火で焙煎すること。強火で焙じると、薬効はずいぶん減りますから、とろ火でゆっくり焙じることです。私はそれをずっと前から言ってきましたが、この頃ようやく偉い先生たちもそういうことを言い始めましたね。
タンポポコーヒーは、鉄分が多く、ビタミンやミネラルも豊富です。ノンカフェインですから、時間を気にせず、誰でも飲めるところが利点です。
飲むことで、胃が軽くなったり、胃腸の調子がよくなったりという声はよく聞きます。
薬効を落とさないタンポポコーヒーの作り方
【用意するもの】
・タンポポ(品種は問わない)……適量
【作り方】
①タンポポを根だけ切り離し、よく洗って長さ1cmくらいに切る。天日干しでカラカラになるまで干す

②乾いた根をとろ火でじっくり焙じ、ミキサーで粉にする

③1杯あたり約10gを使い、コーヒーと同じように入れて飲む

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。
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