肌のコラーゲン量が増える
「美肌になる食べ物」と聞いて、何を思い浮かべますか? 鶏皮やスペアリブ、または「コラーゲン」と、思いつくのではないでしょうか。
コラーゲンは、皮や骨などの材料で、そのままでは水に溶けず、吸収もされません。熱で分解されることで、ゼラチンとなるわけです。そしてゼラチンが消化酵素(プロテアーゼ)によって分解され、水に溶ける状態になったものを「コラーゲンペプチド」といいます。
このコラーゲンペプチドが、サプリメントとして売られている物になります。実際には、コラーゲンとは違う物です。
ゼラチンやコラーゲンペプチドは「肌にいい、骨にいい」といわれてきましたが、一方で、「口からとっても、消化の過程でアミノ酸に分解されるので、特別な効果は期待できない」とする説も根強くありました。
果たして、実際はどうなのでしょう? この問題を解明するために、いくつかのヒト試験が行われています。
1日10gのコラーゲンペプチドを16週間口から摂取するグループと、プラセボ(偽薬)を摂取したグループとに分けて、褥瘡(床ずれ)の治癒に効果が得られるかが調べられたのです。
その結果、コラーゲンペプチドを摂取したグループでは、プラセボ群と比較して、有意な治癒促進効果が得られました。
さらに別の実験では、45〜50歳の女性に、2.5gのコラーゲンペプチドを8週間食べさせたところ、プラセボを摂取した人に比べて、目尻のシワの容量が有意に減っていました。
しかも、その女性たちの皮膚を採取して調べたところ、コラーゲンの合成量が増えていたことが判明したのです。
コラーゲンペプチドを口から摂取すると、肌のコラーゲン量を増やし、シワを減らす効果が実際にあるということです。
その他の実験でも、コラーゲンペプチドを食べて皮膚の弾力が増した、表皮の水分量が増えた、皮膚から水分が蒸発する量(蒸散量)が減少する=皮膚のバリア機能が上がった、という結果も報告されています。
余談になりますが、これらの実験では、被験者の肌にダメージが多いときに、より効力を発揮するとの報告もあります。
なお、これらの実験に使ったのはコラーゲンペプチドですが、ゼラチンでもある程度、同じ効果が期待できます。
特殊なアミノ酸が増殖して傷を修復
「なぜ口からとったコラーゲンペプチドが直接、肌にアプローチをするのか?」。
このテーマに対し、私たちは、コラーゲンだけに存在する特殊なアミノ酸「ヒドロキシプロリン」に着目し、研究を行いました。
その結果、コラーゲンペプチドを摂取した後の、ヒトの血中のヒドロキシプロリンの約3分の1は、ペプチド型ヒドロキシプロリンとして血中に存在することがわかったのです。
ペプチド型ヒドロキシプロリンの主要成分は、「プロリン」と「ヒドロキシプロリン」が結合した「プロリルヒドロキシプロリン」であることもわかりました。
プロリルヒドロキシプロリンは、傷ができたとき、体内のコラーゲンが分解されてでき、傷の修復に重要な働きをする線維芽細胞を増殖させることが、マウスの実験でわかっています。
コラーゲンペプチドを口から摂取した場合も、その一部がプロリルヒドロキシプロリンとなって、傷を治すと考えられます。傷を修復するということは、コラーゲンペプチドを飲むことで、肌の状態もよくなるといえるでしょう。

「骨折したときは毎日欠かさず、コラーゲンペプチドをとっていました。レモン水やみそ汁に入れます」と佐藤先生。
血流をよくして血管をしなやかにする
2005年に発表したこの研究によって、「ゼラチンやコラーゲンペプチドを口から摂取しても、特別な作用はない」という定説は覆りました。
しかも、さらに詳しく調べていくと、プロリルヒドロキシプロリンは、ダメージのある箇所に存在する線維芽細胞には作用するものの、正常な細胞には影響を及ぼさないことがわかっています。
そのほか、コラーゲンペプチドは、血流をよくする、血管をしなやかにする、脳や関節にいい影響を及ぼす、といった研究報告もあります。
コラーゲンペプチドは、ウナギ、牛のスジ肉、豚、鶏、皮つきの魚など、食品からも摂取できます。別記事のスープレシピなどなら、ビタミンCを含む野菜も多く入っているため、吸収率も高いでしょう。
[別記事:ゼラチンと鶏ガラスープの素を振り入れるだけの養生スープ→]
私たちの試験では、コラーゲンペプチドを牛乳に溶かして飲んだ場合は、血中に入るペプチドの量が少なく、紅茶で飲んだ場合は比較的多いという結果も出ています。
私自身は、ゼラチンを水で溶き、レモン果汁と氷を入れて飲んだり、みそ汁に入れたりしてとっています。サプリメントとして摂取するなら、1日5~10gほどの摂取が適当でしょう。

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。
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