私たちが高齢者の健康状態を調査した大規模研究で、1日の緑茶の摂取頻度と1ヵ月間に会う友人知人の数を質問し、現在の残存歯数との関連を解析しました。結果は、緑茶を飲む頻度が高い人ほど、また、1ヵ月に会う友人・知人の数が多いほど歯が多いというものでした。【解説】相田潤(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野教授)

解説者のプロフィール

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相田潤(あいだ・じゅん)

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野教授。北海道大学歯学部歯学科卒業、北海道大学大学院歯学研究科博士課程・予防歯科学教室修了。イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンへの留学を経て、2020年より現職。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター地域展開部門の教授も兼任している。専門分野は、歯科公衆衛生学。

緑茶を飲む頻度、友人の数、残存歯数を調べた

緑茶が歯の健康によいことは、いろいろな研究で以前から知られていました。

その一方で、交友関係が豊かな人ほど、喪失歯が少ないという報告もあります。

日本では、人に会ったときに緑茶を飲むことが多く、人に会う機会が多い人ほど、緑茶を飲む頻度も高くなると考えられます。本当にそうであれば、人によく会い、緑茶をたくさん飲む人ほど、歯の本数が多いのではないかと推測されます。

では実際に、高齢者の歯の本数は、緑茶を飲む頻度と人との交流機会の多さによって、どれくらい違うのでしょうか。

私たちはそれを調べるために、高齢者の健康状態を調査した大規模研究(日本老年学的評価研究プロジェクト2016年)で、高齢者に1日の緑茶の摂取頻度と1ヵ月間に会う友人知人の数を質問し、現在の残存歯数との関連を解析しました。

質問の回答者数は24147名、平均年齢は74.2歳で、そのうち男性が45.9%でした。また、20本以上歯があった人が、52.2%いました。

緑茶をよく飲む人は歯の本数が多い

解析の結果は、緑茶を飲む頻度が高い人ほど、また、1ヵ月に会う友人・知人の数が多いほど歯が多いというものでした。

画像: 緑茶をよく飲む人は歯の本数が多い

まず、緑茶を飲む頻度は、ほとんど飲まない、1日に1杯、2〜3杯、4杯以上の4区分に分けています。緑茶を1日4杯以上飲む人は、ほとんど飲まない人よりも、歯が約1.6本多くありました。

次に、1ヵ月に会う友人・知人の数は、0人(ほとんど会わない)、1〜2人、3〜5人、6〜9人、10人以上の5区分。1ヵ月に10人以上の人と会っている人は、ほとんど会わない人よりも、歯が約2.6本多くあるという結果になりました。

緑茶を飲む人ほど歯が多い理由は、歯に好影響の成分が入っているからだと考えられます。

一つは、緑茶ポリフェノールのカテキン。カテキンには殺菌作用があり、ムシ歯や歯周病など、歯を失う原因となる細菌を殺してくれます。

もう一つは、フッ化物(フッ素)。フッ化物には、歯の耐酸性を高めたり、再石灰化を促しムシ歯を防いだりする作用があります。フッ化物があると、歯が酸に溶けにくくなり、酸に溶けた歯の修復も早くなります。

人との交流機会が多い人ほど歯が多い理由は、いくつか考えられます。まず、人に会うためには、きちんと歯磨きをして出かける必要があります。

また、人に会うことでよい健康情報が得られたり、よい保健行動が伝播したりします。定期的に歯科医院に通っている友人とよく会えば、その友人の情報や行動が共有されるのです。

さらに、人に会うことでストレスが解消されたり、会って話して口をよく動かすことも、プラスに働くと考えられます。

友人と会わない人ほど緑茶の影響が大きく出る

この解析で私たちが意外に思ったのは、人に会う機会が少ないほど、緑茶の効果に差が出たこと。ほとんど人に会わなくても、緑茶を4杯以上飲んでいる人は、全く飲まない人に比べ、約1.3本歯が多かったのです。

反対に、人に会う機会の多い人は緑茶の影響が少なく、10人以上に会っている人は、緑茶の摂取頻度が少なくても、歯の数に差がありませんでした。

このことから、友人に会う機会の少ない人ほど、緑茶を飲んだ方がいいとわかります。

コロナ禍で自粛生活が続き、外出や人に会う機会が減っています。こういうときこそ緑茶を意識的にとるのがお勧めです。

緑茶を飲むタイミングは、朝や食後がいいでしょう。朝飲めば口内に増えた細菌を減らせますし、食後に飲めば、食べカスなどが緑茶で洗い流されます。

また、同じ量を飲むなら、何回かに分けて飲む方が効果的です。カテキンやフッ化物が何回も歯に触れることで、その都度効果を発揮します。

ただし、緑茶にはカフェインが入っているので、遅い時間に飲むと寝つきが悪くなることがあります。心配な人は、午後2時以降は緑茶を控えるか、緑茶うがいをするといいでしょう。

画像: 午後2時以降は緑茶うがいがお勧め

午後2時以降は緑茶うがいがお勧め

あくまでも、基本的に大事なのは毎日の歯磨きで、緑茶や人との交流は、それを補うもの。緑茶を上手に活用し、より多くの歯を維持しましょう。

画像: この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。

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