口内が酸性に傾きpHが6.6以下になると、ムシ歯や歯周病の原因になる悪玉菌が増殖しやすくなります。重曹で歯磨きやうがいをすれば、pHが上がってアルカリ性になり口内環境が整います。重要なのは、口内全ての菌を殺すのではなく、悪玉菌だけがすみづらくなるよう環境を整えるという点です。【解説】倉本弘樹(倉本歯科医院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

倉本弘樹(くらもと・ひろき)

倉本歯科医院院長。1981年に日本歯科大学を卒業後、歯科鈴木医院で6年間修業を重ねる。1987年6月に、地元である世田谷区・千歳烏山にて、現在の医院を開業。ムシ歯や歯周病治療などを行うかたわら、「重曹磨き」などのセルフケアも指導。「口腔は全ての分野における健康増進の源」をモットーに、30余年にわたり、地域に根付いた診療を行っている。
▼倉本歯科医院(公式サイト)

重曹が口内を中和し悪玉菌を遠ざける

掃除や洗濯などで活躍する「重曹」が、口のケアにも役立つことをご存知でしょうか。

アメリカでは、1970年代後半にこの説が広まり、重曹入りの歯磨き粉が市販されました。私も当時、飛行機内でその歯磨き粉を使用したところ、ネバついた口が驚くほどスッキリした覚えがあります。

以来、今に至るまで、重曹を用いた口内ケアを、治療と並行して勧めています。実際に試した患者さんからは、「歯ぐきの出血が止まった」「歯周病が早く改善した」などの好評をいただいています。

では、なぜ重曹が口内ケアに役立つのでしょうか。その理由は、酸性・アルカリ性などの度合いを示す「pH(ペーハー)指数」が関係しています。

pHは7.0が中性で、これより低い値が酸性、高い値がアルカリ性です。口内が酸性に傾き、pHが6.6以下になると、ムシ歯や歯周病の原因になる悪玉菌が増殖しやすくなります。

そもそも、成人の口内には、100~300種もの細菌が存在しています。そのうちの悪玉菌の多くは、自身の周囲に酸性の物質を放出し、自分たちにとってすみ心地のよい環境をつくります。

さらに、菌が食べカスを分解する際に酸性物質を放出する、食べ物自体に酸が含まれるなどの理由でもpHが下がります。

そうして口内にたまった酸は、通常ならば唾液で押し流されます。しかし、加齢やストレスで唾液の量が減ると、口が酸性に傾きやすくなるのです。

歯磨き粉と重曹を使う「重曹磨き」がお勧め

そんな口内の中和に役立つのが、重曹。pHが9.3程度ある重曹で歯磨きやうがいをすれば、口内のpHが上がってアルカリ性になり、口内環境が整います。

重要なのは、この「口内環境が整う」という点です。

市販のうがい薬には、口内を殺菌・消毒する作用があります。しかし、これらは使い過ぎると、口内環境の維持に役立つ共生細菌まで殺してしまいます。実際、それが原因で口腔カンジダ症などになる例も少なくありません。

一方重曹は、口内全ての菌を殺すのではなく、悪玉菌だけがすみづらくなるよう、環境を整えます。

画像: 口内をアルカリ性にすると、悪玉菌がすみ着きにくくなる。

口内をアルカリ性にすると、悪玉菌がすみ着きにくくなる。

私が患者さんによくお勧めするのが、下項で紹介している「重曹磨き」です。これは、歯磨き粉(ペースト)を乗せた歯ブラシに、重曹を耳かき2杯程度振りかけて、歯を磨くという方法です。

これを朝晩2回行うだけで、口内環境が整い、ムシ歯や歯周病の予防につながります。さらに重曹には、歯の再石灰化を促す効果や、口内の雑菌の繁殖を抑える効果もあるので、口臭や起床時の口のネバつきの改善も期待できます。

重曹は、医薬用・食品用・掃除用(工業用)の3種類ありますが、口内ケアには医薬用を使ってください。医薬用の重曹はドラッグストアなどで「日本薬局方 炭酸水素ナトリウム(重曹)」として販売されています。

また、重曹を保管する入れ物は、100円ショップなどで販売されている、調味料用ボトルがお勧めです。これを使えば、いちいち計量しなくても、適当に振りかけて使えます。

歯磨き粉をつけず、重曹だけで歯を磨くという方も多いようです。しかしこれは、長く続けると歯の表面のエナメル質を傷つける可能性があり、注意が必要です。人によっては、重曹特有のコンニャクのようなにおいも気になるかもしれません。

その他のケアとしては、同じく下項で紹介している「重曹うがい」も、手軽でお勧めです。

重曹磨きをする人は口がきれいなピンク色

私は歯科医として、多くの患者さんの口内を診てきました。

そこで感じているのは、重曹磨きをしている方の口内は、明るいピンク色だということ。通常、歯ぐきに炎症があると、毛細血管が増えて、歯ぐきが赤黒く見えます。しかし、重曹磨きをしている方の歯ぐきは、そういった特徴が見られません。

また、中には、歯周病による歯の根元の膿が消え、歯を延命できた方もいます。

重曹うがいに関しては、昔からカゼやインフルエンザの予防策として勧められていました。実際の効果は、検証していないためわかりませんが、ムシ歯菌などと同様、口内のpHが上がれば、これらの細菌・ウイルスも増えづらくなるのでしょう。

なお、歯ぐきが炎症を起こすと血管が広がるため、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。重曹による口内ケアで、歯ぐきの炎症を抑えれば、ある程度はウイルスの侵入も防げるかもしれません。

ただ、重曹による口内ケアは、あくまで補助的なもの。毎日の歯磨きや歯間掃除、定期的な歯科医院でのケアは、怠らずに受けることをお勧めします。

また、重曹には、体内に入ると血圧を上げるナトリウムが含まれています。歯磨きやうがい程度なら問題ないと思いますが、気になる方は血圧をチェックしながら続けてください。

重曹磨き&重曹うがいのやり方

重曹磨き

画像: 【重曹で歯磨き】耳かき2杯でOK!口内環境を中和しムシ歯や歯周病を防ぐ 口のネバつきもスッキリ

【用意するもの】
・歯ブラシ
・重曹
・歯磨き粉
※写真のような調味料ボトルに重曹を入れておくと使いやすい。

歯ブラシの上に、歯磨き粉を適量乗せる。

画像1: 重曹磨き&重曹うがいのやり方

①の上に耳かき2杯分の重曹を振りかけ、歯を磨く。

朝晩2回磨く。
重曹は、ドラッグストアなどで販売されている医薬用のものを使う。
 ※一般的には、「日本薬局方 炭酸水素ナトリウム(重曹)」の名称で販売されている。
歯磨き粉は、基本的には何を使ってもよい。ただし、塩粒が入っているタイプのものは、ナトリウムの摂取過多になる恐れがあるため、避けた方がよい。

重曹うがい

【用意するもの】
・500mlのペットボトル
・水道水
・重曹

画像2: 重曹磨き&重曹うがいのやり方

水道水を入れた500mlのペットボトルに、重曹をティースプーン1杯分程度入れ、よく振る。この水で約30秒ぐちゅぐちゅと口をゆすぐ。

歯を磨いた後に行う。
重曹うがいの水は、冷蔵で3~4日保存可能。ただし、直接口を付けると雑菌が繁殖するため、コップに移すのがお勧め。

画像: この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。

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