マスクをつけたときに感じる口臭は、主に唾液の減少が原因です。会話の減少、口呼吸、ストレスなどは、唾液の分泌を減らします。大事なのは、歯磨きや歯間清掃を丁寧に行って、歯や口を清潔に保つこと。もう一つお勧めしたいのが「舌磨き」。起床直後、かつ朝食前に行うとよいでしょう。【解説】川口陽子(東京医科歯科大学名誉教授)

解説者のプロフィール

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川口陽子(かわぐち・ようこ)

歯学博士。1979年、東京医科歯科大学歯学部を卒業。東京医科歯科大学歯学部予防歯科学講座助手や講師、メルボルン大学歯学部客員研究員などを経て、2000年に東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授に就任。2003年、同大学歯学部附属病院の「息さわやか外来」診療科長に就任。2020年、同大学名誉教授。口臭の治療や予防を専門とし、テレビや雑誌などのメディアにも多数出演している。

口臭の原因はさまざま

自分では気づきにくいのに、知らないうちに他人を不快にさせているかもしれない「口臭」。原因としては、次のようなものがあります。

生理的口臭

時間や生活サイクルが関係する口臭です。朝起きたときに、口のにおいが気になることはありませんか。これは、夜間に唾液の分泌量が減ることで口の中に汚れがたまり、細菌がその汚れを分解して増殖し、におい物質をつくるのが原因です。

この口臭は、食事や歯磨きで、においの発生原因となる汚れなどを飲み込んだり、吐き出したりすることで弱まります。

また、空腹時やストレスを受けたときも、唾液の分泌量が減るので、口臭が強くなります。このような生理的な口臭は、誰にでもみられるものなので、あまり心配はいりません。

飲食物・嗜好品による口臭

ニンニクやニラ、ネギといった、においの強いものを食べた後や、お酒やタバコなどの嗜好品を楽しんだ後に発生する口臭です。こうした口臭は一時的なものなので、時間とともに弱まっていきます。

病気が原因の口臭

口や鼻、呼吸器などの病気が原因で起こる口臭です。そのうちの9割以上は、歯周病や進行したムシ歯、多量の舌苔の付着といった、口の中の病気が原因となっています。

中でも見落とされがちなのは舌苔です。舌苔とは、舌の表面にある、白や淡い黄色をしたコケのようなもの。これは、細菌の死骸や、はがれ落ちた粘膜細胞、食べカスなどでできた汚れです。舌苔は、細菌によって分解されると、口臭の原因になるにおい物質を発生します。

次いで多いのが、副鼻腔炎などの耳鼻咽喉系の病気。また、「臭い玉」と呼ばれる、膿栓が原因の口臭もあります。

膿栓とは、のどの奥(扁桃)のくぼみにたまる白っぽい塊のことで、細菌の死骸や食べカスなどからできています。膿栓のできやすさは、人によって異なります。

糖尿病の人は、独特の口臭が認められる場合があります。

なお、「胃が悪いと口臭が強くなる」と考える人もいるようですが、これは誤り。食道と胃の境目(噴門部)は、通常は括約筋で閉じられており、げっぷ以外で胃の中の空気が口から出てくることはありません。

こういった病的な口臭については、原因となる病気を治療することが必要です。

コロナ禍の今は、「マスクをつけると自分の口臭が気になる」という人も多いようです。マスクをつけたときに感じる口臭は、主に唾液の減少が原因です。人との会話の減少、息苦しさ回避のための口呼吸、ストレスなどは、唾液の分泌を減らします。

さらに、マスクの内側に自分の唾液の飛沫がついて細菌が増殖し、マスク自体がにおうという場合もあります。

口腔ケアで口臭は予防・改善できる

口臭は、ある程度であれば自分で改善できます。最も大事なのは、歯磨きや歯間清掃を丁寧に行って、歯や口を清潔に保つこと。

口腔ケアでもう一つお勧めしたいのが、「舌磨き」。前述した舌苔は、うがいや歯磨きでは取り除けないからです。

舌磨きは1日1回、歯を磨く前に行います。口臭が一番強くなる起床直後、かつ朝食前に行うとよいでしょう。

画像: 舌磨きでこんなにきれいに!

舌磨きでこんなにきれいに!

やり方としては、舌をできるだけ前へ出し、水でぬらした小さい歯ブラシや舌ブラシを舌の奥に当てます。そこから手前へ軽い力で舌をこすります。

注意してほしいのは、一方向にこするということ。舌乳頭(舌の表面にある組織)は、手前から後方に傾いているので、その流れに逆らうように前方にかき出すつもりでブラシを動かして、舌苔を取りましょう。

また、舌の奥にブラシを当てると、嘔吐反射が起こることがあります。その場合は、息を止めて磨くようにしましょう。

舌苔が多いと、味を感じ取る器官(味蕾)が汚れで覆われてしまい、味がわかりづらくなります。舌磨きを行うことで、食べ物の味を十分に楽しめるようになるでしょう。

しかし、強い力で舌磨きを行うと、味蕾を傷つけてしまう恐れがあります。そのため、1日に何回も行わず、1回にしてください。

また、ヘラのような硬い道具で舌をこするのも厳禁です。舌がヒリヒリしたり、血がにじんだりした場合、1週間は舌磨きを休むようにしてください。

舌磨きのやり方

舌の奥に、水でぬらした小さめの歯ブラシか舌ブラシを当てる。
※大きめの歯ブラシだと、嘔吐反射が起こりやすくなる。
舌の奥から手前に向かって、一方向に歯ブラシを動かす。このとき、舌が傷つかないよう、優しい力で軽くなでるようにして動かす。
※手前から後方に傾いている「舌乳頭(舌の突起)」の流れに逆らうように、ブラシを動かす。

画像: 【マスクが臭い】起床直後の「舌磨き」がおすすめ 安全で効果的なやり方を口臭予防の専門家が解説

舌磨きの回数は、1日1回。何度も行うと、舌にある味を感じ取る器官(味蕾)を傷つける恐れがある。
舌苔(舌についた白や黄色のコケのようなもの)がついていない場合は、行わなくてよい。
行うタイミングは、朝起きてすぐ、朝食前がお勧め。
嘔吐反射を防ぐため、舌を磨く最中は息を止めるとよい。
舌苔がしっかり取れているかどうか、鏡で舌の奥の方を観察しながら磨く。
舌磨きの後は、汚れを口から出すためにうがいをする。
ヘラのような硬い道具を使うと、舌が傷つくおそれがあるため、絶対に避ける。力の入れ過ぎも厳禁。
ブラシが上あごに触れないよう、注意して行う。
舌がヒリヒリする、表面に血がにじむなど、少しでも異変を感じたらすぐにやめ、1週間は休む。

ある程度の口臭は誰にでもある

生活上のポイントとしては、入れ歯の清掃や栄養バランスのよい食事、規則正しい生活、ストレスの軽減も口臭改善に役立ちます。自分に合った口腔ケアを教わるために、定期的に歯科検診を受けることも必要です。

疲労時などの生理的口臭を指摘され、口のにおいに悩むようになったという方も多いようです。口臭が気になり、会話ができなくなった方もいました。

しかし、口を動かさなければ唾液の分泌が減り、口臭はますます強くなります。ある程度の口のにおいは誰にでもあるものと、割り切ることも大切です。

画像: この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年3月号に掲載されています。

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