解説者のプロフィール

たや まさこ
1966年、生まれ。生後3ヵ月から6歳まで食通の家で育つ。1995年、予約制惣菜店、地元食材を使った「美食倶楽部」開業。2002年、調理師免許取得。2013年からは、こうじの分解力を活かした消化にやさしい発酵料理も提供。2019年からは、「発酵舎mamma」を拠点に発酵料理教室や、発酵料理会、季節の仕込み事を通して発酵のすばらしさや奥深さを発信している。
発酵料理を取り入れて私も母も体調が大改善
私が生まれ育った滋賀県高島市は、寒暖の差が大きく、昔から発酵食がさかんな地域です。
祖母の家では、みそやたくあん漬けといった、手作りの発酵食が食卓に並ぶのが日常。鮒寿司をアテに、大人たちが地酒を酌み交わしたり、ご近所同士で漬物の物々交換を行ったり。そんな地域に根づく発酵食文化に触れながら、私は育ってきたのです。
2013年、全国発酵食品サミットが高島で開催されたのをきっかけに、発酵についてあらためて学んだ私は、その奥深さにいっそう魅了されました。
それまでは、いわゆる「発酵食品」を毎日の食事に取り入れることが中心でした。しかし、発酵をより深く学んでからは、微生物の分解力を生かした調理法で、消化・吸収を助ける「発酵料理」を作り、生活に取り入れるようになったのです。
すると、自分の体が確かに変わっていくのを実感しました。まず、胃もたれをしなくなりました。私はもともと消化力が弱く、以前は焼肉やフレンチを食べると、そのあと2日間くらい、胃がもたれて何も食べられなかったものです。
それが、今では夜9時に食事をしても、翌朝にはスッキリ。栄養がきちんと吸収されるようになったのでしょう。標準よりかなり少なかった体重も、3kg増えました。
体温は36度から36.8度に上がり、それまであまり汗をかかなかったのが、食事をしただけで「暑い!」と感じるようになりました。ほおに二つあった濃いシミが薄くなり、一つはほぼ消えかけているのも驚きの変化です。
体力がつくと忍耐力も強くなるのか、クヨクヨしなくなり、夜もよく眠れるので、疲れもたまりにくくなりました。
実は今、胃がんの手術をしたばかりの母を在宅介護していますが、母も私の発酵料理を食べることで、みるみる元気に。訪問介護のかたから驚かれるほどです。肌もツヤツヤしています。このことからも、あらためて発酵の力を感じています。
ニンニク風味の塩水もニンニク自体もフル活用
さて、塩こうじ・しょうゆこうじ・甘酒などを活用して、食べ物の栄養を分解して活用するほかに、私はさまざまな食材を使った発酵調味料も作っています。今回は、そのなかでも近年多くのかたからご好評をいただいている「塩ニンニク」を紹介しましょう。(作り方は下項を参照)。
一度に使う量が少ないニンニクは、冷蔵庫の中で忘れられ、腐らせてしまいがち。でも、この塩ニンニクは、塩水に漬けておくことによる塩の防腐効果で長期保存ができます。
ガツンとニンニクを効かせたいときは、塩水に漬けておいたニンニクをそのまま煮込み料理に入れたり、すりおろして使うのがお勧めです。
ニンニクの香りがついた塩水を調味液として使うことも可能。ドレッシングやマヨネーズ、唐揚げの下味、魚のムニエルの仕上げなどに使えば、ほどよい風味づけができます。
便利に使えて、おいしく、栄養素を無駄にせず上手に利用できるのが、この塩ニンニクの利点です。ニンニクの持つ滋養強壮、血流をよくする効果なども期待できるでしょう。愛用してくださるかたからは「カゼをひかなくなりました」とか「体がポカポカします」といった声もいただきます。
手軽に作れておいしい塩ニンニクで、ぜひ発酵の力を体感してください。
「塩ニンニク」の作り方
【材料】
ニンニク(小房に分けた物)、水(できれば浄水)、塩(できれば自然塩)・・・それぞれ適量

【分量の例】(写真は450ml瓶1つ分)
ニンニク…100g(1.5〜2玉分)
水…300ml
塩…約18g(※)
※上記の例では、瓶にニンニクと水を入れて重量を量り、瓶の重さを引くと約360g。その5%に当たる約18gが塩の分量となる。瓶の大きさや底面積、ニンニク、水の量で塩の分量は変わるので、ご自身で量り、様子を見ながら分量を決めてください。

❶瓶はあらかじめ煮沸消毒する。瓶の重さを量る。
❷瓶の底がこんもり埋まるくらいのニンニクを入れる。
❸瓶の8分目くらいまで、水を加える。
❹③の重さを量り、その重量から①の瓶の重さを引いた重量の5%分(1/20)の重さの塩を加える。
❺ふたをして、軽く振る。常温でおき、1日1回ふたを開けて様子を見る。
❻4〜7日間でシュワシュワと小さな泡が出る。ニンニクのおいしそうな香りがすれば完成。冷蔵庫で保存する。

※3ヵ月ほどで食べ切る。
※好みで、塩を3%の重量にしてもよい。その場合、早めに食べ切る。

この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。
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