解説者のプロフィール

パン・ウェイ
料理研究家。中国・北京生まれ。季節と身体をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、現在は東京・代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。『きょうの料理』(NHK)等のテレビ出演や著作活動、講演会のほか、企業向けのレシピ開発やコンサルタントでも活躍中。
ネギやニンニク、唐辛子、根菜類もお勧め
私は中国の薬膳や食養生の考え方をもとに、季節に適した料理や食生活を提案しています。
中国では、薬膳や食養生は学校で習うものではなく、各家庭で教わるもの。私もおばあちゃんから、「病気になる前に食養生で予防をすることが大事」と教わってきました。
例えば、「今日は寒いから、体を温める羊肉にショウガ、ネギ、ニンニクをいっぱい入れて食べよう」といった会話が、日常的に交わされています。薬膳や食養生は、特別なことではなく、病気や不調を予防するための家庭の知恵なのです。
私の料理教室では、寒さで血流が滞りやすい1、2月に備えて、11月から血液をサラサラにするそばの実や、そば粉が入った料理、そば茶を出しています。ドロドロ血液や血栓を予防するために、3ヵ月前から食生活を変えて、体の準備しているのです。
体質を変えるには3年、病気や不調の予防をするには3ヵ月かかります。
また、今日の体調は、直近3日間の食事や水分補給、睡眠時間、会った人、出かけた場所などの生活の結果です。体調がいいときや悪いときに、この3日間の食事や生活を振り返ると、根本の原因がわかり、自分にとってよくないものは取り除けるようになります。
冷えが気になるなら、日ごろから自分の手を触って、冷たくないかチェックしてください。もし今、手が冷たいなら、体も冷えています。衣服や靴下を1枚多めに着込んで、しっかり睡眠を取り、適度な運動を心がけましょう。
さらに体を温める作用のある「陽」の食べ物をとってください。ネギやショウガ、ニンニク、唐辛子や、根菜類の大根やニンジン、カブ、イモ類はお勧めです。
ホウレンソウ、セリ、セロリ、クレソンなどの冬の緑の野菜は春の病気予防によいとされてきました。レタスやキュウリ、トマトなどの夏野菜は、体を冷やす作用のある「陰」の食べ物なので、冬はできるだけ避けてください。
飲み物も、冬は体を冷やす作用がある緑茶や、冷たい物は避け、体を温める作用がある煎った番茶やほうじ茶、発酵茶を飲みましょう。
冷え症の人は、栄養面ではたんぱく質と鉄分が足りていない場合が多いようです。肉や魚、豆類といったたんぱく質をとり、レバーやホウレンソウ、青ノリで鉄分を補給しましょう。
体を温める作用がある食材の代表がショウガ、ネギ、ニンニクです。いずれもふだんの料理にたっぷり入れてとるのがお勧めです。私が見る限り、日本のかたは、とる量が非常に少ない気がします。
90歳近くになる私の両親は、今もショウガスライスや、黒酢に漬けたニンニクを小皿に盛り、食後に必ず食べて、体を温め、カゼや病気の予防をしています。
ショウガの手軽なとり方
特にお勧めの温め食材であるショウガの手軽なとり方を紹介します。
ショウガは、生と加熱した物では効能が違います。生は一度発熱作用が働いたあと、逆に解熱作用が生じます。このため、カゼをひいたときの対処に使われます。
一方、加熱した物は、体を継続して温める作用があるのです。ふだんから体温が高い人は、生のショウガでも問題ないのですが、冷え症の人は、生だと体を冷やしてしまうので、一度蒸した物や、ショウガパウダーなどの加熱したショウガを使いましょう。
❶ショウガスライス

蒸した皮つきショウガをスライスし、米酢やしょうゆ、ポン酢などに漬け込んで食べやすくした物。朝食後に毎日2、3枚食べると、体を温めてくれます。ただし食前に食べるのは、刺激が強く、胃が荒れる可能性があるので、避けてください。
❷ショウガパウダー

ショウガを蒸すなどの加熱する手間がめんどうなかたは、市販のショウガパウダーをいつものお茶やスープ、和え物など、あらゆる料理に振りかけましょう。
❸ショウガ湯

私は毎朝、白湯を飲んでいますが、白湯に皮つきショウガをすって入れることがあります。寒い日に特にお勧めです。
いずれもふだんの食生活に取り入れ、自分の体調をしっかり観察してみてください。もしイライラしたりするようなら、とる量が多過ぎるので、控えめに。手がまだ冷たいようなら、逆に量が足りないので、増やしてください。
食養生で体を芯からしっかり温め、免疫力を上げて、病気になりにくい体をつくりましょう。

この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。
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