冷えによって血流が滞ると、全身の細胞にも酸素や栄養が不足し、老廃物も残ったままなので、内臓機能も低下してきます。実際、体温が1度下がると、代謝が20%も低下することがわかっています。また、冷えは自律神経のバランスを大きくくずします。【解説】班目健夫(青山・まだらめクリニック院長/自律神経免疫治療研究所所長)

解説者のプロフィール

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班目健夫(まだらめ・たけお)

1954年、山形県生まれ。80年、岩手医科大学医学部卒業。医学博士。東京女子医科大学附属東洋医学研究所、同大学附属青山自然医療研究所クリニック講師などを経て、2011年、青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所を開設。『「首のスジを押す」と超健康になる(自律神経を整えて体を活性化する)』『「湯たんぽを使う」と美人になる 4つの筋肉を温めるのがコツ!』(いずれもマキノ出版)など多数。
▼青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所(公式サイト)

どんな病気や症状も冷えの解消が最優先

「冷えくらい大したことはない」と思っている人が多いのではないでしょうか。これは大きな間違い。「カゼは万病の元」といいますが、そのカゼも含めて「冷えこそ万病の大元」なのです。

私のクリニックには、さまざまな病気に苦しむ患者さんが、全国から訪れます。その多くは、いくつかの医療機関を受診しても、症状が改善しなかった人たちです。こうした患者さんたちを触診してみると、決まって体が冷え、筋肉にコリがあるのです。

「手足が冷たい」「首や肩がこる」「腰が冷える」「体がぞくぞくする」というのは、誰もがよく経験することです。しかし、こうした状態を放置していると、冷えや筋肉のコリが慢性化します。その結果、さまざまな病気を招いてしまうのです。

つい先日も、こんな患者さんが来られました。

Aさん(女性・52歳)は、アメリカ在住の日本人です。新型コロナウイルス(COVID‐19)に6月に感染し、その後、治癒したものの、後遺症で極度の倦怠感と、体の節々に激しい痛みが残りました。いくつもの病院で診てもらいましたが、よくなる気配がありません。そこで、SNSで私のクリニックを見つけ、来日されたのです。

Aさんを触診すると冷えがひどく、後遺症は典型的な慢性疲労症候群でした。冷えからくる代表的なつらい症状です。クリニックの湯たんぽで体を温め続けたところ、その場で倦怠感も痛みもみるみる引きました。

冷えの正体と、その対処法さえ知っていれば、Aさんはこれほど長く苦しむことも、日本まで来る必要もなかったのです。

では冷えると、どうして痛みが出たり、病気になったりするのでしょう。突き詰めると、それは血流の滞りといえます。

血液は、全身の細胞に酸素と栄養を運び、それと同時に老廃物を回収します。また、免疫細胞である白血球も運んでいます。血流がよければ、これらの働きで健康を維持できます。

しかし、体が冷えると筋肉が緊張してかたくなります。すると、筋肉の中を通っている血管が圧迫されて、血流が悪くなるのです。

その結果、酸素や栄養が筋細胞に十分に届かなくなって筋肉の働きが低下します。筋肉内には老廃物が蓄積し、コリになります。このコリが末梢神経を刺激し、痛みを起こします。

さらに、コリや痛みがあると体を動かさなくなるため、さらに筋肉がかたくなり、コリが強くなります。こうした悪循環が続くことで、筋肉は衰え、痛みや疲労、倦怠感も激しくなるのです。

その代表的症状が、難病指定されている線維筋痛症や難治性の慢性疲労症候群だと私は考えています。

また、冷えによって血流が滞ると、全身の細胞にも酸素や栄養が不足し、老廃物も残ったままなので、内臓機能も低下してきます。実際、体温が1度下がると、代謝が20%も低下することがわかっています。こうして、糖尿病、高血圧などの生活習慣病や、さまざまな内臓疾患を招きやすくなります。

画像: 体温が1度下がると代謝が20%低下。

体温が1度下がると代謝が20%低下。

もう一つ、冷えは自律神経のバランスを大きくくずします。

自律神経とは、意志とは無関係に内臓や血管などの働きをコントロールしている神経です。活動時や緊張時に働く交感神経と、休息時やリラックス時に働く副交感神経の2種類があり、1日のなかで両者がバランスよく働くことによって、健康が保たれています。

ところが、体が冷えていると、交感神経が優位な状態が続きます。すると、全身の血管が収縮して血流が悪くなるうえ、白血球中のリンパ球数が減少し、免疫力が低下してしまうのです。免疫の働きは全身くまなく及んでいますから、その影響は甚大です。

現在、世界中に蔓延している新型コロナやインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。また、がんの発症や心の病気の誘因にもなります。

ですから私は、どんな病気や症状でも、体の冷えを解消させることを最優先にします。体を芯から温めることが、いかなる治療よりも勝るのです。

冷えの原因を遠ざけてこまめに体を温める

自分の体が冷えているかどうかは、わきの下と、冷えが強く現れやすい「おなか」「お尻」「太ももの前面」「二の腕」に手のひらを当てて、皮膚表面の温度を比較するといいでしょう。

朝の起床時に布団の中で行ってください。わきの下より冷たい部位が1ヵ所でもあれば、体が冷えています。

冷えの主な原因として、運動不足、現代人の生活様式、ストレス、薬の服用、寒冷刺激などが挙げられます。

運動不足

私たちの体には、食事でとり入れた栄養を原料にして、熱エネルギーを作る働きがあります。熱エネルギーは、主に筋肉の収縮・弛緩運動によって産まれ、血流に乗って全身に運ばれます。そうして体温が保たれているのです。

ところが、運動不足になると、熱産生の原動力である血流が滞り、冷えが生じます。肉体労働や歩くことが減った現代人の起床時体温は、昭和40年代の人(平均36.7度)に比べ、1度以上も低下したといわれています。

私たちが冷えを改善するには、意識して運動する必要があるでしょう。ところが、痛みやコリのひどい人は、運動どころか日常の動作もうまくできないでしょう。そのような人は、まず湯たんぽで体を温めると、体を動かしやすくなります。

現代人の生活様式

季節を問わず、冷蔵庫で冷やした飲み物を飲んだり、冷たい物を食べたりする人が少なくありません。こうしたことを続けていると、冷えの原因になります。また、夏場の薄着も体を冷やします。

冷やした飲み物や食べ物は、常温に戻してからとりましょう。薄着の季節も上着をはおり、首やおなか、手足を冷やさないように気をつけましょう。

ストレス

ストレスは、自律神経のバランスをくずす主要因。人間関係の悩みや働き過ぎ、睡眠不足などのストレスが、交感神経を過度に緊張させると、血流が悪くなり、冷えから逃れられなくなります。

ストレスを断ち切るのは難しいですが、ストレス源に近づかないことで、その悪い影響を減らせます。また、早寝早起きをしたり、睡眠時間を確保したりすることでも、自律神経のバランスは整います。

薬の服用

鎮痛剤やステロイド剤などの薬を飲んでいる患者さんは注意しましょう。飲めば血流量が抑えられ、一時的に症状は治まりますが、薬が切れれば痛みは増し、体の冷えも強まります。できるだけ薬に頼らないことです。

寒冷刺激

冬の寒さは冷えの大きな要因になります。屋外から暖かい部屋に入っても、体は体温を保つために、体の中心部や脳に血液を集めます。このため、手足の末梢血管は収縮したままで冷えています。

この現象は一時的なものですが、くり返されるうちに自律神経のバランスがくずれ、こうした調整が効かなくなります。その結果、暖かい部屋にいても手足の冷えが続くのです。

まずは寒さを避けることが大事です。外気温が15度になったら、外出時は耳を覆う帽子、マフラー、手袋を身につけましょう。下着を1枚プラスする重ね着もお勧めです。

日ごろから、こうした冷えの原因を遠ざけ、そのうえで、こまめに体を温めて、冷えを取り去ることが大切です。次項では、冷えの解消に最も効果的な湯たんぽの活用法をご紹介します。

冷えの主な原因と対策

運動不足 ── 熱産生の原動力である筋肉の動きがないと、血流が滞る。
対策:意識して運動を行う。運動前に体を温めるとよい。

現代人の生活様式 ── 季節を問わず冷たい物をとる、薄着をするなど。
対策:冷たい物は常温に戻してとる。夏でも上着をはおり、首やおなか、手足を冷やさない。

ストレス ── 自律神経のバランスをくずし、血流が悪化。
対策:ストレス源に近づかない工夫をする。早寝早起き、睡眠時間を確保。

薬の服用 ── 鎮痛剤などは血流を抑制し、冷えを招く。
対策:できるだけ薬に頼らない。

寒冷刺激 ── 冬の寒さは冷えの大きな要因。
対策:外気温が15度以下なら、外出時に耳を覆う帽子、マフラー、手袋を身につける。

最も効果的な冷えの解消法は「湯たんぽ」

体が冷えているのに、全く自覚がない人がいます。冷えを長い間放置していたために、体が冷えていることを認識できなくなっているのです。私のクリニックの患者さんにはそういう人が多く、体の表面温度を遠赤外線(非接触型遠赤外線放射温度計)で調べると、必ずといっていいほど低い値を示します。

しかも、「私は汗をよくかくから冷え症じゃない」という人ほど、体の表面温度は低い傾向があります。それは、体が冷えることで体内に水分がたまりやすくなるからです。そうした水分が汗の元になっていると考えられます。

冷えはないと思っている人も自覚できない冷えが見つかります。その場合は、あなたが抱える病気や痛みなどの症状は、そのせいである可能性が高いといえます。

私は、長年にわたり冷えが関係しているさまざまな病気・症状の研究・治療を行ってきました。そのなかでたどり着いた最も効果的な冷えの解消法が「湯たんぽ」による加熱です。湯たんぽで体を温めると、多くの病気が改善に向かうので、ぜひ皆さんにもお勧めします。

湯たんぽは、数ある温熱器具のなかでも熱量が抜群に大きく、効果的に筋肉を温めることができます。また、体を温めたあとはゆっくり冷めるので体への負担がないことも魅力です。

2L程度入る物が理想ですが、重く感じる場合は小さくてもかまいません。素材は使いやすい物がいいでしょう。ただ、湯たんぽを体に当てるだけでも痛いという人は、ウエットスーツ製が当たりもやわらかくてお勧めです。

湯たんぽには、できるだけ沸騰したお湯を入れてください。90度以下になると温熱効果が弱まります。同じ理由で、お湯の入れ替えも4時間くらいを目安に行いましょう。

湯たんぽ加熱のやり方

湯たんぽで特に温める部位は、おなか、太ももの前面、お尻、二の腕(力こぶができる位置の裏側)の4ヵ所です。これらは、特に大きな筋肉がある場所だからです。大きな筋肉に熱を加えると、熱をたくさん吸収できます。

加熱時間は、1ヵ所につき3~10分程度で、順番に温めます。「あと5分で汗をかきそう」というくらい温まったら、次の部位に湯たんぽを移動させます。

これを毎日くり返せば、1度程度の体温上昇が期待できます。体温1度の上昇で、代謝が20%も上がります。体調にもよい変化が現れるでしょう。

なお、この湯たんぽは、1日に何度やってもかまいませんが、入浴前に行うと効果的です。体が芯から温まり、入浴後も体が温まった状態を長く維持できます。

画像: 湯たんぽ加熱のやり方

イスに腰かけて、①おなか、②太ももの前面、③お尻、④二の腕(力こぶができる位置の裏側)の4ヵ所を、湯たんぽを順に移動しながら温める。

加熱時間は1ヵ所につき3~10分。「あと5分で汗をかきそう」というくらい温まったら、湯たんぽを移動。
湯たんぽのお湯は、4時間おきに入れ替える。
入浴前に行うと保温効果が高まる。それ以外にも、1日に何度もこまめに行う。

体が温まると自然に動けるようになった

それでは、湯たんぽによって症状が改善した例をご紹介しましょう。

●肺がん(Dさん・女性・59歳)
Dさんは、乳がんが肺に転移して、私のクリニックを受診。初診時には、リンパ球の数が血液1ml当たり約670個しかありませんでした。リンパ球は、免疫機能の中核部隊で、私はその理想的な数は血液1ml当たり2100~2400個と考えています。

それが670個ということは、Dさんの自律神経はかなりバランスがくずれ、免疫力が低下していることになります。

そこで、Dさんに湯たんぽで体を温めるよう指導したところ、2日後にはリンパ球が2432個まで増加しました。

●糖尿病(Kさん・女性・66歳)
糖尿病で来院されたKさんは、過去1~2ヵ月の血糖状態を示すヘモグロビンA1cが10%を超えていました(基準値は4.6~6.2%)。医師の指導どおり食事療法を続けていても、数値が下がらなかったといいます。

Kさんはかなりの肥満体で、全体にむくみも見受けられました。そのため、体を動かすこともあまりなかったようです。こういう場合は、冷えによって代謝が落ち、血糖値を下げるインスリン(膵臓から分泌されるホルモン)の分泌量も低下していることが少なくありません。

Kさんは、湯たんぽで体が温まると自然と体を動かすようになり、週4回ウォーキングをするようになりました。1回7000~8000歩、ときには1万2000歩も歩くそうです。その結果、体重は徐々に減り、体型もスッキリしました。4ヵ月後にはヘモグロビンA1cも6.6%まで下がっています。

このように湯たんぽで冷えを取り、健康を取り戻した人は、数多くいらっしゃいます。皆さんも、体の冷えを助長する薬にはあまり頼らないで、まずは湯たんぽで体から冷えを取り除くといいでしょう。

なお、湯たんぽを使用する場合、低温やけどには注意してください。1ヵ所に長時間当てないようにしましょう。

画像: この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。

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