近年注目の発酵性食物繊維は、腸内環境を改善するだけでなく、全身の免疫を高め、健康長寿に寄与します。そして、発酵性食物繊維を多く含む代表的な食品が、脂肪燃焼リゾットの主食である大麦をはじめとした、全粒穀物です。【解説】内藤裕二(京都府立医科大学消化器内科学教室准教授)

解説者のプロフィール

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内藤裕二(ないとう・ゆうじ)

京都府立医科大学消化器内科学教室准教授、同大学附属病院内視鏡・超音波診療部部長。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病。長年、腸内細菌を研究し続けている腸のスペシャリスト。

腸内でゆっくり発酵し全身の免疫を高める!

[別記事:おいしい最強の減量食!脂肪燃焼リゾット→

脂肪燃焼リゾット」は、料理研究家の宮崎香予さんが考案された、ダイエット向けのメニューとのこと。消化器内科を専門とし、腸内細菌の研究に携わる私にとって、たいへん興味深いレシピです。

使用する食材は、押し麦と鶏むね肉、トマト、シメジ、塩コンブ。材料の多いオリジナル版のレシピでは、これに、切り干し大根と梅干しが加わるそうです。いずれにしろ、食物繊維の豊富な食材が多く使われています。

日本では、食物繊維は水溶性と不溶性に大別されます。水溶性は、便に水を含ませてやわらかくしたり、便の滑りをよくしたりといった作用があります。

また、水溶性は特に、腸内で善玉菌のエサになることで、腸内環境を整えます。

かたや、不溶性は水に溶けにくく、便のかさを増すことで、腸を刺激。ぜん動運動(内容物を送り出す動き)を促進します。どちらの食物繊維も、腸内環境の改善に欠かせません。

一方、世界的に見ると食物繊維の分類基準は、日本と多少異なります。「粘性がある(でんぷん性)か」、さらに「水溶性か」「腸内で発酵しやすいか」といった観点で分けるのです。

ある食物繊維が二つの分類にまたがる場合もあり、ややこしいものですが、近年注目なのが水溶性食物繊維のうち、腸内でゆっくり発酵を起こす「発酵性食物繊維」です。

私たちの研究で、発酵性食物繊維を多く摂取している人は、腸内細菌叢(腸内に棲む細菌の生態系)に酪酸産生菌が多いことが判明しました。酪酸は、腸の粘膜を保護し、炎症を抑制したり、免疫機能を高めたりする作用があります。

発酵性食物繊維の積極的な摂取は、腸内環境を改善するだけでなく、全身の免疫を高め、健康長寿に寄与するのです。

糖尿病と肥満対策に最適な大麦が生きるレシピ

そして、発酵性食物繊維を多く含む代表的な食品が、今回のリゾットの主食である大麦をはじめとした、全粒穀物です。

押し麦は、大麦を食べやすいように、平たく加工した物。リゾットにすればさらに食べやすくなるうえ、腸内での機能性を考えても二重丸です。水分を多めにとることで、より便秘解消に役立つでしょう。

また、発酵性食物繊維の働きで酪酸を含む短鎖脂肪酸が産生されると、GLP-1というホルモンの分泌が促されます。このホルモンは、膵臓で作られるインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる働きをします。

血糖値の上昇率を示す「GI値」という指標がありますが、大麦のGI値が穀類のなかでも特に低いのは、こうした作用があるからです。

「セカンドミール効果」も注目ポイント。これは、大麦を食べると満腹感が持続し、次の食事のあとも血糖値が上がりにくいというものです。血糖値の乱高下はインスリンの過剰な分泌を招き肥満にもつながります。

加えて、大麦には、コレステロール値を下げる作用も確認されています。糖尿病と肥満対策に、最適といえるでしょう。

鶏むね肉は脂質が少なく、ダイエットに適した部位です。たんぱく質は筋力の維持に不可欠なので、ダイエット中も、しっかりとりたいところです。

トマトは、体内でビタミンAになるβカロテンや、ビタミンCを含んでいます。抗酸化作用が強力で、代謝の向上、血圧の降下など、さまざまな効果が確認されています。

シメジなどのキノコ類は、食物繊維が多いことで知られますが、なかでもβグルカンを含むのが特徴。βグルカンは大麦にも豊富で、大麦は水溶性なのに対し、キノコの場合は不溶性です。シメジを入れることで、不溶性食物繊維もとれ、バランスがよくなりました。

塩コンブは、リゾット全体の味を調え、旨みを加えるのに役立っています。加えて、アルギン酸やフコイダンといった水溶性食物繊維も豊富です。これらの成分には、血圧降下作用があることが確認されています。

そもそもこのリゾットは、ダイエット食です。肥満が解消すれば、血圧も下がると期待していいでしょう。ただ、高血圧の人は、塩分に注意が必要です。

糖や脂肪を抑え、食物繊維を強化して、たんぱく質をプラスしたこの脂肪燃焼リゾットは、海の物と山の物をうまく選んで組み合わせてあり、賢いレシピだと思います。

おいしく食べて免疫力を高め健康的にやせられれば、いうことありません。このリゾットを上手に活用してください。

画像: 【大麦の健康効果】腸粘膜を保護しつつ血糖値の上昇を抑制 リゾットにすると便秘解消にも役立つ

大麦はココがすごい!
・酪酸パワーが腸粘膜を保護
 免疫力をアップ
・血糖値の上昇を抑制
 糖尿病対策に有効
・コレステロール値を下げる
 肥満を防止
・便秘を解消
 代謝が向上してやせる
 高血圧も改善

画像: この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年3月号に掲載されています。

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