解説者のプロフィール

Naoko(なおこ)
骨盤矯正パーソナルトレーナー。1978年大阪生まれ。沖ヨガインストラクター。厚生労働省認可全国整体療法協同組合認定整体師・フットセラピスト。ハワイアンアロハ ロミロミマッサージ認定インナーコンサルタント。出産後に経験した体調不良をきっかけに、ヨガや整体などを学ぶ。近著『1分おしり筋を伸ばすだけで劇的ペタ腹!』(学研)が好評発売中。
お尻の筋肉が使えるとやせやすい体になる
「下腹や太ももを引き締めたいから、筋トレでもしようか」
そう思う人は多いのでしょうが、これはいい方法ではありません。なぜなら、おなかや太ももが太る原因は「お尻の筋肉が怠けている」ことにあるから。
その状態で、腹筋やスクワットをしても、その刺激は効かせたい筋肉にきちんと届かないのです。
それでも、ものすごーくがんばれば、いったんは引き締まるでしょう。でも筋トレをやめたら、また元通り。これはよく聞く話だと思います。
反対に、お尻の筋肉を使えるようになれば、おなかや太ももの筋肉もバランスよく動くようになります。すると、つらい筋トレなどしなくても、スルスルとやせていくのです。
つまり、おなかや下半身やせを目指すなら、怠けているお尻の筋肉をしっかり刺激して、使える状態に持っていくことが一番の早道!
それを運動習慣がない人や、体の硬い人でも、簡単に行えるようにと考案したのが、お尻を整えるメソッドである「おしり筋伸ばし」です。
このメソッドを作り上げたのは、私が30代後半の時期。その後に、私は40歳で3人目の子を出産しました。
いわゆる高齢出産ですが、妊娠中のトラブルは一切なし。出産直前までトレーナーの仕事を続け、産後も体調、体形ともにスムーズに元に戻りました。
現在は、164cmの身長に対して、体重は50kg。バスト88cm、ウエスト62cm、ヒップは90cm。仕事と子育てで多忙な毎日ではありますが、体形や体調を良好にキープできているのは、おしり筋伸ばしのおかげです。
半身のしびれで不眠に悩まされていた
でも、昔から健康的だったわけではありません。会社員だった20代の頃は、腰痛や肌荒れに悩み、体重も今より14kgも太っていました。ギックリ腰も2回ほど経験しています。
整体に通ってそのときはよくなっても、すぐに調子が悪くなる。それをくり返していました。
30歳で1人目の子を出産した後は、原因不明の体のしびれに悩まされました。左半身だけが四六時中ピリピリしていて、夜も寝られないのです。
股関節にもガクガクするような違和感があり、整形外科を受診。しかし、レントゲン検査では、異常はありませんでした。
こんなに体調が悪いのに、どこも異常がないと言われて、初めて「レントゲンに写らない不調があるんだ」と知りました。こうなったら自分で何とかしようと思い、体のことを学び始めたのは、それからです。
ヨガやピラティス、整体、解剖学、生理学など、体と心を整えるさまざまな方法と理論を次々とマスターしました。
その過程で、左半身のしびれ、不眠、股関節の違和感など、あらゆる不調が改善。やせて体形が整っただけでなく、肌もツヤツヤに。同時に、精神的にも落ち込むことが少なくなるなど、心身ともに元気になっていったのです。
骨盤のゆがみが整い姿勢がよくなる
この素晴らしさを多くの方に伝えたいと思い、私は骨盤矯正パーソナルトレーナーとしての活動を始めました。
生徒さんたちに指導する過程でこだわったのが、
①整った状態を維持する筋肉を鍛えること
②日常でゆがみの原因となるような動作をさせないこと
その上で、生徒さんたちが自分で実践できるプログラムを作ることを決意しました。
こうして出来上がったのが「おしり筋伸ばし」です。生徒さんたちに実践してもらったところ、大反響となり、あっという間に教室にはたくさんの人が集まりました。
おしり筋伸ばしを行うと、垂れていたお尻が上がるだけでなく、ウエストも引き締まり、太ももは細くなっていきます。
骨盤のゆがみも整うので、O脚やネコ背が改善し、姿勢がよくなります。すると、肩こりや腰痛、ひざ痛などもよくなっていくのです。
ひざの水を抜く処置を定期的に受けていた、60代のひざ痛に困っていた生徒さんは、水がたまらなくなり、痛みもなくなったそうです。
脊柱管狭窄症で慢性的な腰痛があった70代の生徒さんは、腰痛がよくなり、今では趣味で社交ダンスを楽しめるまでになりました。
お尻の筋肉を伸ばすと、これほど劇的に体が変わるのは、お尻が体の土台であるためです。
疲れにくくなり体が軽く感じる
人体は、お尻の上に上半身があり、下に脚が伸びています。
ハサミに例えると、お尻は中央のネジの部分に当たるのです。このネジがゆるんだり、硬くなったりしたら、ハサミは使いにくくなります。
お尻の筋肉が怠けているのは、それと同じ状態です。支点となる部位がガタガタなので、おなかや太ももの筋肉は、本来の動きができません。
なぜ、お尻の筋肉が怠けるのかというと、現代人の動作のほぼ全てが、前かがみの姿勢で行われるからです。
肩や腕、前ももなどの体の前側の筋肉ばかり使われる一方、下腹や内もも、裏もも、お尻の筋肉はほとんど使われません。そのため、どんどん衰えて、脂肪がついていくのです。
ですから、怠けているお尻の筋肉を整えることが、やせるためにも、健康のためにも、何よりも大切になってきます。
土台をしっかりさせて、筋肉がバランスよく動かせるようになれば、怠けていた部位についていた脂肪は取れていきます。 特定の筋肉にかかっていた過剰な負担も、全ての筋肉に分散されるので、疲れにくくなり、体が軽く感じられるようになります。

今回は、運動が苦手な人でも行いやすい、3種類の動きをご紹介しました(次項以下を参照)。
「基本の呼吸」は、最初のうちは、横隔膜の伸びを感じにくいかもしれません。ですが続けるうちに、どんどん呼吸が入ってくるようになります。
「おしり筋伸ばし」で刺激したいのは、深部にあるインナーマッスルです。体の硬い人は、お尻を左右に細かく揺らすだけでも十分刺激ができますので、無理のない範囲で行いましょう。
「もも裏筋伸ばし」はお尻をしっかり床につけた状態で、足を蹴り上げてください。
なお、痛みがある場合は、決して無理をせず、痛みがないところで動きを止めましょう。
ゆがみを整えながら、気持ちよく伸ばして、同時に筋肉を鍛えることができるのが、おしり筋伸ばしです。ぜひ毎日、行ってみてください。
Lesson1
基本の呼吸
❶
壁に上半身をつけて立つ。両足は骨盤幅に開き、1~2歩分、前に出す。お尻と頭をしっかり壁につける。この状態でまず、鼻から息を吸い、ゆっくり吐く。

❷
次に、おなかをへこませた状態で、鼻から息を吸う。(※両腕は自然に下に垂らしていてもよい)

❸
ゆっくり息を吐く。このとき、おなかを壁にできるだけ近づけるようにする(壁にくっつける必要はない)。みぞおちが内側に入っていくのを意識する。

※②~③をくり返し1分ほど行う。

息を吸ったときに肋骨が広がり、吐いたときに肋骨が縮んでみぞおちが内側に入る。
Lesson2
おしり筋伸ばし
❶
正座をして、そのまま横座りの姿勢になり、片足を後ろに出す。

❷
手を前方につき、曲げた方の足のひざは、できるだけ外側に出す。

この姿勢がきつい人は、手をもっと前方に出す。もしくは、両ひじを床につける。

❸
ゆっくりとお尻を左右にゆらす。1分行う。

つらい人は、曲げた足側のお尻の下に、タオルを敷いて高さを調節するとよい。

後ろから見た図
曲げた側のお尻を床につけたり、浮かせたりする。もしくは、小刻みに左右に揺らしてもよい。大きな動きでも、小さな動きでも、心地よい方を行う。

※反対側も同様に行う。
Lesson3
もも裏筋伸ばし
❶
あおむけに寝て、ひざを立てる。片足の裏にタオルを引っかけ、タオルの両端を握る。

❷
息を吐きながら、タオルをかけた側の足を上方に蹴り上げるようにゆっくりと伸ばす。蹴り上げた足とお尻、頭と曲げている足でそれぞれ引っ張り合う力を感じる。

※5~7呼吸行ったら、反対側も同様に行う。
NG
両手で引っ張ったり肩に力が入ったりするのは×!

体が硬い人は
長めのタオルを使い、両端を握る。さらに、足の角度を体に対して鈍角にするとよい。

慣れてきたら
余裕のある人は、タオルを短く持ち、反対側の足を伸ばして行う。


この記事は『安心』2021年2月号に掲載されています。
www.makino-g.jp