解説者のプロフィール

清水ろっかん(しみず・ろっかん)
ろっかん塾院長。明治大学柔道部在籍中より、さまざまな整体術を学び、独自理論による整体術を確立する。体のゆがみや体形のくずれの根本として、「股関節の開きと骨盤のゆがみ」に着目。また、前頭骨と側頭骨の矯正、目と鼻の陥没の矯正など、顔を立体として捉えたアプローチを考案し、他に類を見ない即効性のある独自の骨格矯正テクニックで、モデルやタレントの駆け込み寺として活躍する、元祖「ゴッドハンド」。著書に『坐骨に敷くどこでも腰楽パッド』(主婦と生活社)がある。
頭蓋骨のズレが目の症状にも影響
私は20年以上前に「小顔矯正」というキーワードを考え、一つのジャンルとして確立しました。
それが後に日本中でブームになりましたが、私がしている小顔矯正は、頭蓋骨の骨の結合のずれを取って、顔を小さくするというものです。それに加えて、くぼんだ目鼻を前に出し、顔を立体的にします。
顔は言うまでもなく、頭蓋骨の一部です。頭蓋骨のずれを取ると、若々しい小顔になるのはもちろんですが、それだけではありません。
「視界が明るくなった」「視力が上がった」「目の疲れがらくになった」という声が非常に多く聞かれます。中には、「眼圧(眼球内部の圧力)が改善した」「緑内障の進行が止まった」という人までいます。
このように、美容のために始めた小顔矯正が目の症状まで改善するのは、私の施術が、体のゆがみを取る根本療法だからです。
意外に思うかもしれませんが、頭蓋骨は少しずつ形を変えています。生まれたときは、産道を通りやすくするために、少し縦長ですが、出産後はスッと横に膨らんで理想的な形になります。
ところがその後、成長とともに頭蓋骨は少しずつゆがんでいきます。
その原因は、骨盤です。悪い姿勢で座っていると、仙腸関節(骨盤の仙骨と腸骨をつないでいる関節)が開いて、骨盤が不安定になります。
すると、骨盤が後ろに倒れてネコ背になったり、骨盤が前に閉じる「巻き込み骨盤」になったりして、股関節の位置がずれてきます。
こうして骨盤から始まったゆがみは全身に連鎖して、頭蓋骨までゆがませるのです。
血流の悪化がクマやシミの原因に
頭蓋骨の骨は、毎日の生活の中でずれていきます。下を向くだけで、額(前頭骨)には上から圧がかかります。また、頭自体も、水をとり過ぎたり頭を使い過ぎたりすると、むくんで膨らみます。
こうした圧力がかかって、額は前に押し出された後、下に落ちていきます。
すると、その下にある目の周りの骨が、あたかも海洋プレートが沈み込むように、前頭骨の下にもぐり込み、くぼんでいきます。
また、前頭骨が下に落ちてくると、眼球が入っているポケット(眼窩)が上から押されてつぶれ、奥の方に引っ込みます。
こうして眼窩がくぼんで小さくなると、眼球が押されて眼圧が上がります。また、目の周りの毛細血管も圧迫されて、血流が悪くなります。

①前頭骨が前に出て下に落ちる

②その下の骨が内側に引き込まれていく

③眼窩が押されてつぶれ、奥の方に引っ込む
それが目の機能を障害して、目の見えにくさ、視力の低下、眼精疲労、眼圧の上昇などにつながっていくのです。目の周りのシミやくまも、この血流の低下によって起こります。
しかし、頭蓋骨のずれを取れば、眼窩が広がって目のくぼみが矯正されます。そして、目の機能もよくなるのです。
私は、当院に来られる方には必ず、自分でできる矯正法を教えて、自宅でやっていただいています。自宅でも続けることで、施術の効果が持続するからです。
まずは顔のゆがみをチェックしよう
そこで今回は、誰でも簡単にできる、眼窩を広げる自己矯正法「頭蓋骨押し」をお教えします。まずはその前に、自分の顔のゆがみを、鏡でチェックしてみましょう。
チェックするのは、左右のまゆと目の位置、目のくま、頬骨の位置の3点です。目がくぼむと静脈が圧迫されて、くまが濃くなりますから、くまの目立つ方が、よりくぼんでいることになります。
おそらく多くの方は、左側が下がったりくぼんだりしているのではないでしょうか。
ヒトは二足歩行になって、体の左側に重心がかかるようになりました。そのため、左側の筋肉がこって、縮みやすくなっています。その影響が頭蓋骨まで及ぶと、前頭骨の左側が下から引っ張られ、ずり落ちてくるのです。
頭蓋骨押しは、両側に行うのが基本ですが、先の3つの左右差をチェックして、下がっている方、くぼんでいる方に、より強いアプローチをします。
やり方は次の3つのステップで行います。
①頬骨を押し上げる
ひじをテーブルにつき、手のひらの母子球(親指の付け根の膨らんだところ)を頬骨に当て、指で顔を包むようにしてグーッと押し上げます。ひじをついて行うことで、力をかけやすくなります。
②眼窩の上を引き上げる
母子球を、まゆ頭の下の鼻骨にかかる骨のくぼみに当て、上にグッと引き上げます。
③眼窩を前に引き出す
②をやりながら、反対側の手のひらを頬骨に当て、斜め下に押し下げます。眼窩を上げ、頬骨を下げて眼窩を前に出します。両側に行います。
①~③を1セットとして、3セット行います。下がっている方、くぼみの強い方は、回数を多くするといいでしょう。やればやるほど効果がありますから、何回行っても構いません。
頭蓋骨押しは、力の加減を自分でコントロールできるので、事故を起こすことも、やり過ぎの害もありません。我慢できる範囲で強い力をかけて行う方が、効果は高くなります。
やった後は目がパッチリ開き、視界が明るくなるのを実感できると思います。また、眼瞼下垂の予防や改善にも役立ちます。
骨はそう簡単には動きませんが、そんなに強くない力でも、続けて圧をかけることで、スーッと動いてくれます。ですから毎日続けることが大事です。
頭蓋骨押しのやり方
●行う前に、まずは顔の左右差をチェック
ポイント1:左右のまゆと目の位置
ポイント2:左右の頬骨の位置
ポイント3:左右の目のくまの濃さ
【全体のポイント】
※①~③を1セットとして、3セットずつ、両側に行う。
※左右両側に行うが、下がっていたり、くまが濃い側を多めに行うと、より効果的。
※1日のうちいつ、何回行ってもよい。
※強めの力で行う方が効果が高い。

①頬骨を押し上げる
【押す場所】頬骨

【押し方】

テーブルなどにひじをつき、刺激する側と同じ側の手のひらの母子球を頬骨に当て、指で顔を包むようにして、上にグーッと押し上げる。そのまま30秒ほど圧をかけ続ける。
②眼窩の上を引き上げる
【押す場所】まゆ頭下のくぼみ

【押し方】

刺激する側と同じ側の手のひらの母子球をまゆ頭下のくぼみに当て、上にグーッと押し上げる。そのまま30秒ほど圧をかけ続ける。
③眼窩を前に引き出す
【押す場所】まゆ頭下のくぼみ、頬骨

【押し方】

刺激する側と同じ側の手のひらの母子球をまゆ頭下のくぼみに当て、反対側の手のひらの母子球を頬骨に当てる。まゆ頭の手は上に引き上げ、頬骨の手は斜め下に押し下げる。そのまま30秒ほど圧をかけ続ける。眼球が前に押し出されるイメージで行うとよい。

この記事は『安心』2021年2月号に掲載されています。
www.makino-g.jp