解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
薬草コンサルタント。昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演など行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
目、耳、髪、精力など老化による症状に著効
滋養強壮に優れ、老いを遠ざけ、いつまでも健康と若さを保つのに欠かせない薬草が「ネズミモチ」です。
私がお世話している「薬草の会」では、「ネズミモチを飲まない人は、もぐりね」なんて冗談が出るぐらい、皆で愛飲しています。
ネズミモチは、「女貞子」という名の生薬(漢方薬の原材料となる天然物)としても知られています。中国最古の薬物学の書である『神農本草経』にも「補中を司り、五臓を安んじ、精神を養ひ、百病を除く」とあり、『本草綱目』には「久しく服すれば、身を軽くし老いず」と記されています。
女貞子の「女貞」とは、女の人の貞操という意味で、「子」は種子のこと。一説には、この実を食べると、夫が妻をいつまでもかわいがれるので、妻は浮気をすることなく貞操を守り抜くことから、こう呼ばれるようになったといいます。
車も年式が古くなると部品にガタがくるように、人間の体も年をとると、あちこちが弱ってきます。ネズミモチは内臓に作用し、弱ったところを元気にする働きがあります。
男女の若返り、精力増強だけでなく、白髪や薄毛、耳鳴り、眠りの浅さ、虚弱など、老化に伴って起こる体の不調を予防・改善するのには、ネズミモチがもってこいなのです。
もちろん目の老化の改善にも非常に効果的です。老化と密接な関係がある、目の2大症状といえば、老眼と白内障ですね。
長年、ネズミモチを活用してきた薬草の会の会員さんたちは、70歳、80歳でも老眼鏡いらずで新聞が読めたり、白内障が進行せず、手術を何年も延ばせたりといった効果を実感している人がたくさんいます。
野鳥と争うように実を採取する
このように卓越した「不老長寿の秘薬」であるネズミモチは、実は大変身近な植物です。
公園や街路の植栽によく使われているモクセイ科の常緑樹で、紫がかった黒い実がネズミのフンに、葉はモチノキに似ているところから、この名がつきました。
以前は関西よりも西に生えるといわれていましたが、昨今の温暖化で、関東辺りまでは見かけるようになりました。
5〜6月に白い小花を咲かせ、冬になると紫黒色の実をつけます。野鳥もこの実が大好物で、おいしく熟すと、たった一晩で食べ尽くしてしまうこともあるほどです。
そのため、一度ネズミモチの薬効を体感した人は、野鳥と争うようにして、実を採取するようになります。

夏には黄緑色の実が冬になると紫黒色に色づく
ネズミモチは煎じて飲んだり酒に漬けたり、いろいろと活用できますが、最も簡単で飲みやすいのが「ネズミモチコーヒー(作り方の詳細は下項)」。
入れ方や見た目はコーヒーに似ていますが、強い苦味や癖はなく、香ばしさがほんのり感じられて飲みやすい味です。
ネズミモチコーヒーは、今日飲んだら、明日よく見えるようになるというものではありません。飲み続けているうちに、気がついたら改善していたと、ふと感じるものです。ですから、飲みやすく続けやすいというのは、大きなメリットなのです。
1日に飲むネズミモチコーヒーの量は約5g。私はお湯を注ぎ足しながら、朝昼晩と飲んでいます。いつ飲んでもいいのですが、空腹時に飲む方が、薬効は吸収しやすくなります。
ただし、あまり飲み過ぎると、のぼせて眠れなくなるので、1日の摂取量が10gを超えないよう注意が必要です。
ネズミモチの薬効をしっかり得るには、十分に成分が充実したものを採取することです。しっかり熟した時期に採取することが、とても大切です。
その目安としては、九州南部や長崎は12月13日頃、九州北部が12月20日頃、四国や本州(関東以西)なら12月末~1月上旬頃が、採取に適した時期になります。
一粒ずつほぐしてきれいに洗い、乾燥させたネズミモチを、厚手の鍋かフライパンで、弱火で1時間半から2時間、じっくり乾いりしましょう。
種を一つ割ってみて、種子の中まで茶色~黒っぽくなっているのが、いり上がりの目安です。白っぽい部分があるときは、まだ加熱が足りません。ぜひお試しください。
ネズミモチコーヒーの作り方

❶よく熟したネズミモチの実を採取し、実を一つ一つほぐして、水できれいに洗う。

❷ネズミモチの実をカラカラになるまで乾かす。ホットカーペットの上に新聞紙を敷き、その上にネズミモチを広げて1週間「強」で加温し、乾燥させる。網やザルに入れ、風通しのよいところで日干ししてもよいが、乾燥するまで2ヵ月ほどかかる。

❸フライパンや厚手の鍋に、②のネズミモチの実を入れ、弱火でかき混ぜながら、香ばしい匂いがしてから1時間半〜2時間ほど焙煎する。一つ割ってみて、種の中まで茶色~黒っぽくなっていたらいり上がり。

❹コーヒーミルや粉砕器で細かくひく。
※煮出して飲む場合は、粉にしなくてもよい。

❺ネズミモチの粉3~5gを、普通のコーヒー粉と同様にペーパーフィルターに入れる。最初に粉が湿る程度に熱湯を注いで20秒蒸らしてから、残りの熱湯を注いでドリップする。同じ粉で3杯分はくり返しドリップできる。これを1日量として飲む。
※普通のコーヒー粉に混ぜてドリップしてもよい。

❻ネズミモチコーヒーの出来上がり。強い苦味や癖はなく、香ばしくて飲みやすい。

この記事は『安心』2021年2月号に掲載されています。
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