「首の過前傾」によって、首や肩の筋肉の補助なしで目の筋肉が働かなくてはならなくなり、ピント調節力が低下するのです。また、肺が膨らみにくくなり、肺活量が落ちて目への酸素供給量が低下するため、視力に大きく影響します。【解説】山本卓弥(視力回復研究所代表)

解説者のプロフィール

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山本卓弥(やまもと・たくや)

視力回復研究所代表。八王子で視力回復トレーニングを20年指導する中で、ピント調節機能における首、肩、背中の筋肉の重要性に気づき、「僧帽筋を伸ばし過ぎない」姿勢を維持するためのオリジナルエクササイズを考案。日常生活での姿勢の指導と合わせ、視力回復に高い成果をあげている。
▼視力回復研究所(公式サイト)

首の筋力低下が目のピント調節力を弱める

近視や老眼など、視力が低下する根本原因は、「首の過前傾」からくる首、肩、腰の筋力低下と、肺活量の低下にある。これが、私の20年以上にわたる視力回復研究で得た結論です。

首の過前傾とは、頭がしっかりと背骨の真上に乗っておらず、前に下がった状態のこと。スマートフォンの操作やパソコン作業、読書などに集中していると、下の写真のように、頭が前に落ちがちです。

画像: 頭がガクンと下がり、首と肩の筋肉が伸びてしまった姿勢が視力低下の元凶。

頭がガクンと下がり、首と肩の筋肉が伸びてしまった姿勢が視力低下の元凶。

頭の重さは体重の約1割、4~7kgあります。こうした重たい頭の重量を背骨が真下から支え、首の後ろから肩、背中に広がる筋肉(僧帽筋や菱形筋)が、柔軟に頭の位置を保つのが本来の役割分担です。

ここで、あなたが柱の上に荷物を置いて、落ちないようにしたい場合を考えてみましょう。

まっすぐ立った柱の上に荷物を載せたときには、荷物の重さの大部分は、柱が支えてくれます。あなたは荷物が柱から落ちないように、軽い力でバランスを取ればいいだけです。

しかし、柱が傾いていたら、柱で支えるべき荷物の重さの大部分を、あなたが引っ張り上げ続けなければなりません。長時間その状態が続けば、クタクタに疲れ果ててしまうでしょう。

このクタクタになるような姿勢が、あなたの首、肩、腰の筋肉を弱めています。

遠くを見たり、近くを見たりするときの目のピント調節は、レンズの役割をする水晶体と、水晶体の厚みを調整する毛様体筋、そして眼球を動かす外眼筋が担っています。

遠くを見るときは、毛様体筋がゆるんで水晶体を引っ張って薄くし、近くを見るときは、毛様体筋が収縮して水晶体を厚くして、ピントを調整しています。同時に、見たいものとの距離に合わせて寄り目を作る力(輻輳力(ふくそうりょく)という)も必要です。

従来の視力回復トレーニングは、ほとんどがこうした目の筋肉だけに注目したものでした。

ですが、筋肉というのは単独で働くことはなく、ほとんどの場合、他の筋肉と連動して働きます。目のピントをしっかりと合わせるためには、目だけでなくもっと広く、首の後ろから肩の筋肉、さらにはそれらを支える腰、足の筋肉までを連係して働かせる必要があるのです。

筋肉が力を発揮するのは、収縮したときです。しかし、首の過前傾によって疲れ果て、伸びてしまった首や肩の筋肉は十分に使えなくなり、筋力が低下します。

その結果、首や肩の筋肉の補助なしで目の筋肉が働かなくてはならなくなり、ピント調節力が低下するのです。

呼吸が浅くなると目への酸素供給が減る

首の過前傾のもう一つの問題は、本来首の後ろから肩で支えられるはずの重さが、胸に乗り続けることで肺が膨らみにくくなり、肺活量が落ちて酸素供給量が低下するということです。

深呼吸をする際に、息を深く吸うときには自然とあごが上がり、胸を開くでしょう。この姿勢を後ろから見ると、頭がしっかりと背骨の真上に乗り、首と肩の筋肉がギュッとコンパクトになっています。

それに対して、息を吐き切ろうとしたときには、首が前に落ちて頭の重さで胸郭を押しつぶし、肩も前に巻き込まれて、肺を絞るような姿勢になっているはずです。後ろから見ると、首と肩の筋肉が引き延ばされています。

息を吐き切ろうと、一時的にこうした姿勢になるのは構いません。しかし、首の過前傾というのは、常にこの息を吐き切るときの姿勢を取っているようなもので、気づかぬうちに呼吸が非常に浅くなっています。 

目は、脳(視神経)の出先機関です。脳が大量の酸素を必要とするのと同様に、目にも酸素不足は大敵で、視力に大きく影響します。

■視力が低下する姿勢
頭が前に落ち、首・肩の筋肉が引き延ばされている。

画像: 息を吐き切ったときのように、首と肩で肺を押しつぶす姿勢を取っていると、視力は下がっていく。

息を吐き切ったときのように、首と肩で肺を押しつぶす姿勢を取っていると、視力は下がっていく。

■よい視力を保つ姿勢
頭が背骨に乗り、首・肩の筋肉が締まっている。

画像: 大きく息を吸ったときのように、首や肩の筋肉がコンパクトに維持できる筋力を取り戻すと、視力が改善。

大きく息を吸ったときのように、首や肩の筋肉がコンパクトに維持できる筋力を取り戻すと、視力が改善。

大きく息を吸い胸を膨らませる

つまり、視力回復には、重力に抵抗し、頭をしっかりと背骨の上に乗せる姿勢(抗重力身体バランス)が不可欠なのです。

弱ってしまった首、肩の筋肉の力を取り戻し、上半身を骨盤でしっかり支えられるようにして頭の位置を背骨の真上にキープし、肺活量を上げる。そのために考案したのが、「視力アップ体操」です。

ポイントは、体操で力を入れるときにできるだけ大きく息を吸い、胸を膨らませること。そして、体操で力を抜くときに、「息を吐く」のではなく、「息が自然に抜けるのに任せる」ということです。

ただし、低視力や高齢の方、首や肩の筋肉が弱いと実感されるている方は、けっして無理をせずに、少しずつ首の過前傾を改善し、息を吸う力と良好な視力を取り戻していきましょう。

肺活量を高めておくことは、新型コロナ肺炎などへの備えにもなると思われます。ぜひ取り組んでみてください。 

視力アップ体操のやり方

あご上げ体操

絶対に無理をしないこと
10秒でもきつく感じるなら、もっと短い時間から始めたり、あごを上げ過ぎないようにしたりして、体操の強度を調節する。

画像1: あご上げ体操

いすに深く腰掛け、腕の重さを肩にかけないように両手を足の付け根に置く。

画像2: あご上げ体操

肩甲骨を中央に寄せながら肩を耳に近づけるように引き上げて、③で後頭部を預ける土台を作る。

画像3: あご上げ体操

鼻から息を大きく吸いながらゆっくりとあごを上げ、②で作った肩の土台に後頭部を預ける。あご上げ姿勢を10秒キープするところから始め、3分を目標に少しずつ時間を延ばしていく。

ゆっくりと顔と肩を下ろす。このとき息を吐き過ぎて、頭が落ちないように特に注意。時間を空けて、1日3回行う。

画像4: あご上げ体操

肩甲骨寄せ体操

画像1: 肩甲骨寄せ体操

いすに深く腰掛け、へその裏辺りで、左手首を右手で軽く握る。

画像2: 肩甲骨寄せ体操

肩甲骨を中央に寄せながら、ひじとひじを近づけ、鼻から息を大きく吸いながらゆっくりとあごを上げる。そのままゆっくり2回呼吸し、①に戻り、手を持ち替えて同様に行う。左右交互に5回ずつ行うので1セット。時間を空けて、1日3セット行う。

腰上反らし体操

画像: 腰上反らし体操

足を肩幅に開いて立ち、お尻の筋肉を締めながら、腰の上を反らす。その姿勢のまま、鼻からゆっくり息を大きく吸い、自然に息が抜ける程度に軽く吐く。2回呼吸したら、ゆっくりと立ち姿勢に戻る。時間を空けて1日5回行う。
※転倒が心配な人は、壁やいすの背などにつかまりながら行う。

画像: この記事は『安心』2021年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年2月号に掲載されています。

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