解説者のプロフィール

勝部美佳(かつべ・みか)
マクロビオティック料理研究家。2000年にマクロビオティックに出合い、陰陽五行論に基づいた料理のおもしろさに魅了される。料理教室で6年間主任講師を務め、約2000人に指導。14年、大阪市内に玄米菜食を基本としたカフェ&マクロビ料理教室「メリーモモ」をオープン。食材本来の力とおいしさを生かしたヘルシーな料理が、人気を呼んでいる。
天日干しでビタミンやミネラルが増える
私は現在、マクロビオティック料理研究家として、大阪でレストランと料理教室を主宰しています。マクロビオティックとは、食文化研究家の故・桜沢如一氏が提唱した「自然と調和しながら健康の根源を支える長寿法」のことをいいます。それに基づく生活術の一つが、玄米菜食を中心とした食事です。
そうしたわけで、お客様や生徒さんから、健康や美容に関する相談を受けることがよくあります。食生活や体調を伺ったうえで、その人その人に合った食事をお勧めしていますが、なかでも多くの人に試していただいているのが「切り干し大根スープ」です(基本の作り方は下項を参照)。
ご存じのとおり、切り干し大根は、せん切りにした大根を天日干しにして乾燥させた、日本古来の乾物です。
大根には、脂肪を溶かす酵素が含まれているそうです。マクロビオティックでは、「天日干しにした大根をとることで、体の中心部まで太陽のエネルギーが届き、内臓脂肪を溶かす働きが生まれる」と、いわれています。
また、日光に当てて干すことで、栄養が凝集し、ビタミンやミネラルの含有量が増えます。
加えて、切り干し大根を煮出すと、ファイトケミカルと呼ばれる植物由来の化学成分が溶け出してきます。ファイトケミカルには、強力な抗酸化作用、がん抑制作用、解毒作用、免疫増強作用、脂肪溶解作用など、さまざまな機能があるそうです。
切り干し大根スープを作る際は、大根をみじん切りにしてから煮込みます。こうすることでファイトケミカルが、より溶け出しやすくなります。
豊富な食物繊維が便秘やむくみを改善
また、切り干し大根には、食物繊維も豊富です。食物繊維には、水溶性と不溶性の二つがあり、切り干し大根には、その両方が含まれています。
スープを飲むと、水溶性食物繊維の働きで便がやわらかくなり、スムーズな排便が促されます。デトックス効果が抜群なので、便秘解消のほか、むくみが取れた、美肌になったという声も多く聞かれます。
スープだけでも優れた効能がありますが、こしたあとに残った大根も、活用しましょう。不溶性の食物繊維が豊富なので、みそ汁に入れたり、ハンバーグに混ぜたりして食べると、これもまた、便秘の解消に役立つのです。便秘解消は、ダイエットにもつながります。
切り干し大根スープを初めて飲まれたかたは、皆さん、その甘さに驚きます。これは、天然の甘みです。
このスープを飲むのを習慣化すると、甘い物への欲求が満たされるため、砂糖の入ったお菓子などを過剰に欲することがなくなります。お菓子が好きな人は、それまで食べていた分を切り干し大根スープに置き換えることで、ダイエット効果がグンと上がるでしょう。
こうしたことから私は、やせたいという人や、内臓脂肪や中性脂肪値が気になる人に、特に切り干し大根スープをお勧めしています。

空腹時に飲むのがお勧め!
私の主宰する料理教室に来ているKさん(54才・女性)も、切り干し大根スープでみごとダイエットに成功しました。64.5kg(身長は165cm)まで増加していた体重が、気づくと12.5kgも減り、52kgになったのです。
彼女は毎朝、食事がわりにこのスープを飲むようにしていたそうです。飲んでいるうちに、味覚が変化したのか、大好きだった甘い物を欲しいと思わなくなった、と驚いていました。そのあともリバウンド知らずで体形をキープできている、と喜んでいます。
また、カフェの常連のYさん(56才・女性)は、8kgのダイエットに成功しました。朝作った切り干し大根スープを会社に持参し、小腹の空く午後3時ごろ飲むようにしたところ、64.5kg(身長は158cm)だった体重が、半年かけて56.5kgまで減ったそうです。
Yさんは、疲れを感じにくくなったと話してくれました。ほかにも、多くのかたから、「ダイエットに成功した」と喜びの報告を受けています。
ダイエットに効くというと、早く結果を出したいと望まれるかたが、多くいらっしゃいます。しかし、体質を根本から変えるには、時間がかかるものです。少なくとも、2~3ヵ月は継続してください。根気よく続けるうちに、体の変化に気がつくはずです。
1日に飲む量は、カップ1杯程度で十分。タイミングは朝昼晩のいつでもけっこうですが、空腹時に飲むのが肝心です。そのあとに何か食べる場合は、最低でも、30分おいてください。そう考えると、就寝前に飲むのがベストといえます。
切り干し大根スープは、簡単でおいしく、効果が高い点が長所です。ぜひ皆さんも、お試しになってはいかがでしょうか。
基本の切り干し大根スープの作り方

【材料】(カップ2杯分=2日分)
切り干し大根…10ɡ
水…400ml

【作り方】
❶切り干し大根はよくほぐし、分量のうち100mlの水を加えて戻す。5分ほどおいたら、大根を軽くしぼる。戻し汁は取っておく。

❷①の大根を、みじん切りにする。

❸①の戻し汁と②、残りの水300mlを鍋に入れる。弱火で、5分くらいかけて、ゆっくりと沸騰させる。沸騰したら鍋にふたをして、15〜20分間、ふつふつと煮る。

❹③を、ざるでこし、出来上がり。

【飲み方】
●1日にカップ1杯を、温めて飲む。飲むタイミングは空腹時が望ましい。特に就寝前がお勧め。
●密閉容器に入れ冷蔵庫で保存。3〜4日は日もちする。
●こしたあとに残った切り干し大根は、みそ汁に入れる、ハンバーグの具材にするなどして活用するとよい。

この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。
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