大根には、イソチオシアネートという香りと辛みの成分が含まれており、優れた抗菌・抗炎症作用や、抗酸化作用、肝臓の解毒作用を促進する働きがあります。この抗炎症作用と抗酸化作用は、マウスの高脂肪食誘発性肥満を抑制することがわかっており、ダイエットの助けとなると考えられるのです。【解説】松岡寛樹(高崎健康福祉大学農学部教授)

解説者のプロフィール

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松岡寛樹(まつおか・ひろき)

高崎健康福祉大学教授。1992年、宇都宮大学農学部農芸科学科卒業。97年、東京農工大学大学院連合農学研究科修了、博士(農学)取得。高崎健康福祉大学健康福祉学部健康栄養学科助教授等を経て、2010年より同大学健康福祉学部健康栄養学科教授。19年より農学部生物生産学科教授を兼担。

消化を助け腸のデトックスを促す

大根は、私たちにとって身近な野菜の一つです。煮たり、焼いたり、漬物にしたり、あるいは干したり。昔からさまざまなかたちで食べられてきました。

大根を利用して、腸をデトックス(体内の老廃物などの排出)し、ダイエットに役立てている人も多いようです。ここでは、大根の作用とダイエットの関係について考えてみましょう。

大根の健康効果や作用は、加工や調理の方法によっても違いがあります。最初に、大根を生で食べる場合、その代表として「大根おろし」を取り上げましょう。大根おろしは、焼き魚に添えたり、和え物にしたりと、活用のしかたがたくさんあります。

特に注目したいのが、「イソチオシアネート」という成分です。これは大根の香り成分で、かつ、辛みの成分です。

大根には、イソチオシアネートの素になるグルコシノレート(辛子油配糖体)という成分が含まれていますが、これはもともとは辛くありません。刻む、おろす、かみ砕くなどすることで、イソチオシアネートが生成されて辛くなるのです。

イソチオシアネートには、優れた抗菌・抗炎症作用や、抗酸化作用、肝臓の解毒作用を促進する働きがあり、抗がん作用もあるといわれています。

このイソチオシアネートの抗炎症作用と抗酸化作用は、マウスの高脂肪食誘発性肥満を抑制することがわかっており、人にとっても、ダイエットの助けとなると考えられるのです。

イソチオシアネートは、皮、もしくは皮に近い部分に豊富で、主根部分では先端へ向かうほど多く含まれます。ですから、ダイエットを考えるなら、大根を皮つきのままおろすこと、先端に近い部分を使うことが勧められます。

ただし、その分、辛みも増します。辛過ぎるのは胃の負担となることがありますので、注意してください。

大根の食物繊維の働きも見逃せません。食物繊維は腸内の環境を整え、脂肪の吸収を抑えます。コレステロール値を下げ、糖の吸収を遅らせることで、ダイエット効果をもたらします。

その効果を高めるためには、食事の一番初めに大根おろしを食べることがお勧めです。そのあとに食べる食品の糖質や、脂質の吸収を遅らせる効果が期待できるからです。

また、大根はおろすと水分が除かれる分、グラム当たりの食物繊維の含有量が実質的に増えることになります。その量は、食物繊維の多い野菜の代表であるゴボウに迫るほど。大根おろしは、食物繊維を摂取しやすい食べ方なのです。

さらに、大根おろしに含まれる消化酵素、アミラーゼの働きもダイエットに有用です。アミラーゼはでんぷんを分解する働きがあり、食べ物の消化を助けます。それにより、腸のデトックスを促し、便秘を解消する効果が期待できます。

煮るならスープまですべて飲み干すのが理想

続いて、大根を「煮る」など加熱した場合について考えてみましょう。

加熱すると、先述したイソチオシアネートや消化酵素のアミラーゼは効果を失ってしまいます。一方で、加熱した大根には、生の大根に比べ甘みがあり、食べやすいという利点があります。まとまった量を食べられ、より多くの栄養素がとれるうえ、腹持ちもよく、ダイエットに好適です。

できれば、水溶性のビタミンやカリウムなど栄養素を余すところなくとるために、スープにして飲み干すのが理想的です。

また、大根といえば、生や加熱に加えて、天日干しした「切り干し大根」として食べるかたも多いでしょう。干すことで、また新たな作用が生じます。

大根中のグルタミンがグルタミン酸に変わり、それが転じてGABAに変化するのです。このGABAには、リラックス効果や血圧降下作用があることが知られています。

ダイエットの観点からいえば、干すことで、不溶性食物繊維の量が増加しますから、やはり便秘解消やデトックス効果が高まると考えられるでしょう。

このように、大根にはいろいろな効能があり、生でよし、加熱してよし、干してよしの食材です。大根をうまく活用し、デトックスやダイエットに役立ててはいかがでしょう。

大根デトックスの基本のやり方

「毎日1回、大根を食べるだけ!」
大根おろし、大根スムージー、切り干し大根スープなど好みの調理法、食べやすい量でどうぞ。
※生でも、加熱しても、食べやすい方法でOK!
※朝・昼・晩いつ食べてもかまいません。

画像: 大根デトックスの基本のやり方
画像: この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。

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