ストレスで顔がこわばるとき、同時に頭皮や頭の筋肉も緊張しています。髪ひっぱりは「筋膜リリース」の手法の一つ。頭の筋肉をほぐし、縮こまった頭蓋骨を広げて、脳を開放する効果があります。それによって脳がリラックスし、不眠やイライラといった症状が改善するのです。【解説】金谷康弘(かなや整骨院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

金谷康弘(かなや・やすひろ)

かなや整骨院院長。昭和36年生まれ。柔道整復師。学習塾講師、大学受験予備校講師を経て、関西医療学園専門学校卒業。平成2年大阪市に「かなや整骨院」を開設。自院での施術のほかに、広島市「ふじわら医院」でも定期的に施術を行う。一般社団法人「日本頭蓋仙骨療法協会」代表理事。
▼かなや整骨院(公式サイト)

髪の毛を引っ張ると頭の筋肉がほぐれる

私の治療院には腰やひざの痛みを訴えるだけでなく、不眠や頭痛、めまいといった不定愁訴をお持ちのかたがおいでになります。

そうしたかたに私が主に使っているのは、「頭蓋仙骨療法」という治療法です。頭や骨盤に手を軽く触れるだけで、心身の緊張が改善し、喜んでいただいています。

そして治療効果を長続きさせるためのセルフケアとして、ご自身の頭への手当法を自宅でも実践していただくよう、お伝えしています。今回は、そのなかから二つのセルフケア法を紹介しましょう。

一つめは、「髪ひっぱり」です。これは、ストレスなどによる不眠やイライラなどの症状でお困りのかたにお勧めのセルフケア法です。

コロナ禍ですから、どうしても不安を抱えてしまうといった人が少なくないでしょう。そういった場合にも、ぜひ試していただきたいと思います。

やり方は、両手で髪の毛をつかんで、痛くない程度に握るだけです(くわしいやり方は下項を参照)。

強いストレスで顔がこわばるのは、経験があるかたも多いかと思います。このとき、同時に頭皮や頭の筋肉も緊張しています。その緊張は頭蓋骨や脳にまで及び、さまざまな悪影響を心身に及ぼすのです。

髪ひっぱりは、筋肉のこわばりをほぐす「筋膜リリース」の手法の一つ。頭の筋肉をほぐし、縮こまった頭蓋骨を広げて、脳を開放する効果があります。それによって脳がリラックスし、不眠やイライラといった症状が改善するのです。

芸術家などが、煮詰まってイライラしたときに髪の毛をかきむしる情景は想像しやすいでしょう。あの行為は、頭皮を刺激して、本能的に筋肉の緊張を取ろうとしているのだと考えられます。

髪の毛を引っ張るというと、子供のケンカやプロレスの反則技のようで、「痛そう」と思う人も多いかもしれません。

しかし、髪ひっぱりは、決して痛くありません。というより、痛みを感じるほど強く引っ張ってはいけないのです。深呼吸をしながら、ごくごく軽く力をかけることで、頭皮がストレッチされます。そうすると、その下にある筋膜が伸び、頭蓋骨が緩んでくるのです。

実際に患者さんにしていただくと、皆さん「案外、気持ちいい」とおっしゃいます。

最近パートに出るようになった50代の女性は、慣れない仕事で緊張するせいか、すぐにイライラするとおっしゃっていました。イライラしたときに髪ひっぱりを行うように勧めたところ、気持ちが落ち着くようになったと喜んでおられました。

そのほかにも、不眠が改善したという報告を、多くいただいています。

髪ひっぱりは、イライラしたり、ストレスを感じたりしたときに行うのがいちばんですが、髪の毛がぐしゃぐしゃになって困るなら、入浴時にシャンプーをしながら行ってもよいでしょう。不眠でお困りのかたは、寝る前に行うのが効果的です。

ただし、最近頭を強くぶつけた人、頭部に傷がある人、動脈瘤など脳の病気がある人は行わないでください。

髪ひっぱりのやり方

引っ張り過ぎないように気をつける。軽く力を加える程度でOK。
髪が短い(ない)場合は、皮膚を持ち上げるように力を加える。

画像1: 髪ひっぱりのやり方

頭の前側の髪の毛をつかんで引っ張る。

画像2: 髪ひっぱりのやり方

頭頂部の髪の毛をつかんで引っ張る。

画像3: 髪ひっぱりのやり方

頭の横側の髪の毛をつかんで引っ張る。

画像4: 髪ひっぱりのやり方

後頭部の髪の毛をつかんで引っ張る。

鼻づまりや目の痛みに効く「鼻伸ばし」

二つめのセルフケア法は、「鼻伸ばし」です。こちらは、カゼや花粉症などの鼻づまり、それに伴う目の奥の痛みなどの対策にお勧めです。

眉間の奥には、篩骨(しこつ)という骨があります。この骨は、呼吸に合わせてわずかですが動きます。鼻呼吸がしづらい人は、この篩骨の動きがよくありません。

そこで、鼻伸ばしでは、眉間と鼻の上部の間を広げるように上下に伸ばすことで、篩骨の緊張を取って、動きをよくするのです(詳しいやり方は下項を参照)。

ただし、眉間と鼻の間を広げるといっても、加える力はごくごくわずかです。力を入れ過ぎると、表面の皮膚だけが引っ張られて、奥にある篩骨まで刺激が届きません。私が患者さんに教えるときは、「自分が思ういちばん軽い力の半分くらいの力」と説明しています。

鼻伸ばしも、つらい症状があるときに行ってください。鼻が詰まっているときに鼻伸ばしを行うと、やっているうちに鼻が通ってきます。鼻呼吸もしやすくなるはずです。

注意点は、鼻が通りかけたときに、強く鼻をすすったりしないことです。勢いよく鼻をすすると、また鼻が詰まってしまいます。鼻伸ばしを行っているときは、完全に鼻が通るまで、強くすすらないようにしてください。

以前、私は専門学校で教えていたことがあるのですが、授業中に鼻が詰まってつらそうな学生に、その場で鼻伸ばしをやってあげたことがあります。すると、しだいに鼻が通り、とても楽になったと驚いていました。

鼻が詰まっていると、集中力も低下するものです。私自身、以前はアレルギー性鼻炎に悩まされ、鼻が詰まると集中力が低下し、薬を飲むと眠くなって困っていたので、そのつらさはよくわかります。

頭蓋仙骨療法は子供の頭痛や集中力の改善にも有効です。来院されるほとんどの子供が鼻伸ばしを行うと呼吸が「すっ」と通るようになります。呼吸が改善すると頭もすっきりするようで、施術中に「鼻伸ばしやって」とリクエストする子も少なくありません。

これからの季節、カゼや花粉症などの影響で、鼻づまりに悩まされたときは、ぜひお試しください。

鼻伸ばしのやり方

1日何回やってもOK。
やっている間に鼻を強くすすらないように気をつける。

画像: 鼻伸ばしのやり方

片手でおでこを押さえ、もう片方の手で鼻の上のほうをつまむ。その間を広げるように、軽く上下に力を加える。

画像: この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。

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