耳の後ろが圧迫され続けると、側頭筋、あごの筋肉、耳たぶの裏から鎖骨に伸びている胸鎖乳突筋にも負担がかかり、首のコリや目の疲れの原因になります。そして、頭痛を引き起こすのです。耳周りマッサージを行うのは、特に頭の痛みを感じたときや、疲れを感じたときがお勧めです。【解説】川﨑知寿(鍼灸Tsubomi主宰)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

川﨑知寿(かわさき・ちず)

治療院鍼灸Tsubomi主宰。鍼灸師、薬剤師。女性の体や心に現れた症状、美容に関する悩みを、東洋医学の理論に基づき鍼やお灸を使い治療を行っている。また、薬剤師としては、女性健康サポーターとして、漢方相談や薬膳指導、サプリメント指導などを行っている。お灸を使った、セルフケアサポーターとしてのセミナーも長崎市内kuriyaにて随時行っている。

耳には約110個のツボが集中している

私は長崎で薬剤師・鍼灸師として、女性を対象に鍼灸による治療、漢方相談、薬膳指導などを行っています。最近、頭痛を訴える患者さんが増えました。原因は、コロナ禍での長時間のマスク着用が考えられます。

マスクは耳にゴムひもをかけて着用するため、耳の後ろが圧迫されます。そのため、マスクを長時間着用すると、耳周りが痛くなります。

さらに耳の後ろが圧迫され続けると、側頭筋、あごの筋肉、耳たぶの裏から鎖骨に伸びている胸鎖乳突筋にも負担がかかり、首のコリや目の疲れの原因になります。そして、頭痛を引き起こすのです。

こうした不調には、こまめにマスクのゴムひもの位置をずらしたり、ガーゼや脱脂綿を、耳の後ろに挟んで着用したりするなどの対処法が挙げられますが、私が特にお勧めしたいのは、「耳周りマッサージ」です。

耳周りマッサージは、耳や側頭部、あごをほぐすマッサージです。やり方は下項をご覧ください。お好きなときに行ってかまいませんが、特に頭の痛みを感じたときや、疲れを感じたときがお勧めです。

注意すべき点は、力まないでマッサージをすること。強い力で行うと、筋肉がかたくなり逆効果になります。優しく、痛気持ちいい程度の力加減で行ってください。

耳には約110個ものツボがあるといわれています。耳の内側は、迷走神経、副交感神経といった神経に支配されているため、耳を内側から引っ張ると、リラックス効果が得られます。また、耳の外側や耳たぶ付近には肩、首、目や頭に効くツボが多く分布しています。

そのため、ツボを一つひとつ刺激しなくても、耳やその周りをまとめてマッサージすることで効果を発揮するのです。

血液やリンパの流れを促して顔のたるみを改善

マスクによる不調に陥りやすいのは、特にマスクのサイズが合っていないときです。自分の顔に合ったサイズのマスクを選ぶのが望ましいでしょう。

一方で、人間の顔は厳密には左右対称ではありません。左右の耳の高さが異なる人も少なくなく、片側の耳に、より負荷がかかることも多いものです。

マスクによる頭痛の原因は、ゴムひもによる耳への圧迫だけではありません。

マスクをつけると、十分な酸素を吸い込むことができず、自分が吐いた二酸化炭素を多く吸い込むことになります。過剰な二酸化炭素は頭の血管を拡張させて、頭痛の原因になる場合があります。

また、マスクをすると呼吸が浅くなり、自律神経の働きが悪くなります。その結果、ストレスを感じやすくなり、頭痛やめまい、肩こりが起こるのです。

長時間のマスク着用による弊害は、それだけではありません。シワやたるみが加速し、顔が老けてしまいます。

私たちはマスクをしていないとき、話す際に大きく口を開けています。知らずしらずのうちに、顔の表情筋をたくさん使って会話しているのです。

一方、マスク着用時は、口を開きにくくなり、ボソボソと話すことが多くなります。すると、顔の筋肉を使うことが少なくなって、筋肉がかたくなり、血液やリンパの流れが悪くなります。

それが、シワやたるみの原因になり、口角が下がる、ほうれい線がくっきりと目立つ、二重あごになる、といった見た目の悪影響も出てきます。

顔の筋肉の硬直に、さらにマスクのゴムひもによる圧迫が加わることで、血液やリンパの流れの悪化に、追い打ちをかけることになるわけです。

東洋医学の観点でも、マスクによって「気・血・水」(人間の生命エネルギーや体の働きを表す概念)の流れが滞り、首がかたくなることで胃腸の不調などが起こることも考えられます。

なお、マスクをしていると口呼吸になってしまい、呼吸が苦しくなる人がいますが、このときに舌をベストポジション(舌先が上あごについている状態)に置くことで鼻呼吸が可能になり、顔の筋力低下や、くいしばりを防ぐことができます。

耳周りマッサージは、顔の血流やリンパの流れを改善し、先述のシワやたるみなど、顔の筋力低下などの予防・改善にも効果を発揮するでしょう。

1回行っただけでも、気持ちよさを感じられ、かたくなった耳や顔の筋肉が緩みます。マッサージの前後で、耳、頭、顔を触ってみて、その違いを実感してみてください。

耳周りマッサージのやり方

親指と人差し指で両耳の中までつかみ、斜め上、後ろ、下へ各3回、ゆっくり滑らせるようにやさしく引っ張る。

画像1: 耳周りマッサージのやり方

親指、人差し指、中指を両耳の外側に当て、3回ゆっくり折りたたむ。

画像2: 耳周りマッサージのやり方

人差し指の、親指側の側面を両耳の後ろに当て、3回前にゆっくり倒す。

画像3: 耳周りマッサージのやり方

両耳の前(もみあげ付近)に、鉤型にした人差し指と中指の第一関節〜第二関節の間をやさしく当てる。前方から後方へ小さく円を描いて優しくマッサージする。耳の上、後ろへと、少しずつずらしながら、10秒マッサージをくり返す。これを2回行う。

画像: 耳の周りをマッサージする

耳の周りをマッサージする

画像: 前方から後方回りに小さく円を描きながらマッサージ

前方から後方回りに小さく円を描きながらマッサージ

画像: 耳の後ろまで徐々にずらしていく

耳の後ろまで徐々にずらしていく

くいしばるとかたくなるあごの上の左右の筋肉を、親指と人差し指で軽くつまんで上へ持ち上げる(くいしばらないで行う)。ほお骨までつまむ位置を少しずつ上へずらしながら、10秒上へ持ち上げるのをくり返す。これを2回行う。

画像4: 耳周りマッサージのやり方

手のひらの手首側の端を、側頭筋(下図参照)の前方にやさしく当てる。前方から後方へ小さく円を描くように優しくマッサージする。少しずつ後方へずらしながら、10秒マッサージをくり返したあと、頭皮を後方へ3秒引っ張る。これを2回行う。

▼側頭筋の位置

画像: 手のひらを耳に当てたとき、指が当たっている部分が側頭筋のおよその位置。

手のひらを耳に当てたとき、指が当たっている部分が側頭筋のおよその位置。

画像: 前方から後方周りに小さく円を描きながらマッサージ。

前方から後方周りに小さく円を描きながらマッサージ。

画像: 後方に徐々にずらしていき、最後に後ろへ引っ張る。

後方に徐々にずらしていき、最後に後ろへ引っ張る。

画像: この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年2月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.