解説者のプロフィール

白澤卓二(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長・千葉大学予防医学センター客員教授。千葉大学医学部卒業。同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー、順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授を経て、現職。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学など。著書は『白澤卓二教授の朝りんごダイエット』(マキノ出版)など200冊以上。テレビや雑誌でのわかりやすい医学解説が好評。
糖尿病、脂質異常症、高血圧を予防する
「リンゴが赤くなると、医者が青くなる」ということわざがあるように、リンゴには多くの健康成分が含まれています。
さらに、酢にも多くの健康成分が含まれているので、二つの食品を組み合わせた「酢リンゴ」には、さまざまな効果が期待できるといえるでしょう。
リンゴには、二つのスーパー成分が含まれています。
●アップルペクチン
スーパー成分の一つです。アップルペクチンは、水に溶けてヌルヌルしたゲル状になる水溶性の食物繊維です。リンゴの細胞を接着剤のように結合する働きをしています。
アップルペクチンには、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)やLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)値の上昇を抑える作用があります。
糖質のとり過ぎによって血糖値が上昇すれば、糖尿病の原因になります。また、LDLコレステロールが増え過ぎたことで脂質異常症が加われば、血管の内腔(血液の通り道)が狭くなって、動脈硬化の原因にもなり得るのです。
動脈硬化が進行すると、脳卒中(脳梗塞や脳出血)や狭心症、心筋梗塞といった命に関わる病気を発症するリスクも高まります。
アップルペクチンは、腸からの糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑えることで、糖尿病を防ぎます。
さらに、腸からのコレステロールの吸収を阻害し、便とともに排出することで、脂質異常症や動脈硬化を予防します。
また、酢に含まれる成分には血管の収縮を抑える働きがあります。リンゴに豊富に含まれるカリウムとの相乗効果で、血圧の低下作用も期待できるのです。
免疫力は腸内環境で決まる
アップルペクチンには、腸内環境を整える働きもあります。
人間の腸には、数百種類、約100兆個の腸内細菌が生息し、細菌叢を形成しています。
腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」、ウェルシュ菌や大腸菌などの「悪玉菌」、優勢な菌の味方をする「日和見菌」の3種類が棲んでいます。
アップルペクチンは、善玉菌のエサになって善玉菌を増やすことで、腸内環境を整えてくれます。また、酢に含まれる酢酸にも、腸内環境を整える作用があります。
アップルペクチンと酢の作用によって腸内環境が整うと、免疫力(病気に抵抗する体の働き)の向上にもつながります。
体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体を排除する免疫力は、全身に備わっていますが、白
血球(体内に入った異物を殺す働きをする細胞)などの免疫細胞の6〜7割は、実は腸に集まっています。
腸内環境が整えば、白血球の働きが活発になり、免疫力もアップするのです。
活性酸素を無害化して老化や肌の衰えを防ぐ
●リンゴポリフェノール
リンゴに含まれる、もう一つのスーパー成分です。ポリフェノールとは、植物に含まれる色素や苦味の成分で、強い抗酸化作用があります。
細胞でエネルギーを作り出したり、紫外線を浴びたりすると、体内には活性酸素が発生します。この活性酸素には強力な酸化作用があり、細胞を酸化させて、がんや老化の原因となります。
私たちの体には活性酸素を取り除く酵素が備わっていますが、40歳を過ぎると、急激に酵素が減少して細胞の老化が進みます。
リンゴポリフェノールは、体に備わった酵素に代わって活性酸素を無害化します。
さらに、酢にも抗酸化作用があるので、相乗効果で細胞の老化を遅らせたり、シミやシワを防いで若々しい肌を保ってくれたりするのです。
また、リンゴポリフェノールには、中性脂肪やコレステロールを減らす働きもあります。酢に含まれるクエン酸やアミノ酸はエネルギー代謝を活性化するので、酢リンゴで体脂肪を減らして無理なくダイエットすることもできるのです。
さらに、リンゴポリフェノールを摂取すると、
①がん細胞を自滅させる
②健康長寿をもたらす長寿遺伝子にスイッチを入れる
③アルツハイマー病の発病リスクを下げる
④アレルギーの原因となるヒスタミンの放出を抑える
といった効果を期待できることが、さまざまな研究によりわかってきました。
このように多くの効果を期待できる酢リンゴは、食事の10〜30分前に、水や炭酸水で割って飲むとよいでしょう。
【酢リンゴに期待できる7つの効果】
❶血糖値の安定
急激な血糖値の上昇を抑える
❷コレステロールの排出
コレステロールの吸収を阻害し、体外へ排出する
❸血圧の低下
血管の収縮を抑え、血圧が安定する
❹腸内環境の活性化
腸内の善玉菌が増えて、腸内環境が整う
❺免疫力の向上
白血球の働きが活発になり、免疫力が上がる
❻老化の防止
抗酸化作用で活性酸素を無害化し、シミ・シワを防ぐ
❼脂肪の減少
代謝が高まり、脂肪が自然に減っていく
酢リンゴの基本の作り方
監修/村上祥子(料理研究家・管理栄養士)

【用意するもの】
●リンゴ……1個(約200g)
中くらいの大きさの物。皮や、皮のすぐ下に有効成分が多いため、皮つきのまま使うこと。リンゴの種類は問わない。
●氷砂糖……200g
黒砂糖、上白糖、きび砂糖などでもOK。ただし、沈澱しやすいので、溶かすためにときどき混ぜる。
※氷砂糖は溶けやすく、仕上がりの色もきれいで使い勝手がいい。「より多くの栄養成分を」という方は、ミネラル豊富な黒砂糖がお勧め。
●酢……400ml
穀物酢、米酢、黒酢、玄米酢など、好みの物を使ってOK。リンゴ酢を用いると飲みやすさがアップする。
●保存瓶……1本
800ml以上の容量で、電子レンジ対応の耐熱ガラス瓶。
※耐熱ガラス瓶がない場合は、インスタントコーヒーの空き瓶など、ふたつきのガラス瓶に保存し、電子レンジにかけるときだけ、どんぶりなどの耐熱容器を使うとよい。

【作り方】
❶リンゴは、よく洗ってから、ペーパータオルなどで水分を拭き取る。

❷①のリンゴを8等分にして芯を除き、皮ごと幅2cmのイチョウ切りにする。

❸瓶に、リンゴと氷砂糖を入れて酢を注ぐ。

❹瓶にふたをせず、電子レンジで加熱する。500Wなら1分20秒程度、600Wなら1分程度が目安。

❺電子レンジから瓶を出し、ふたをして、常温で12時間以上置いたら出来上がり。

この記事は『安心』2021年1月号別冊付録に掲載されています。
www.makino-g.jp