イチゴに多く含まれるビタミンCやアントシアニンには、老化や病気の原因となる活性酸素を抑える、強い抗酸化作用があります。また、ムシ歯を防ぐ甘味料として知られるキシリトールは、イチゴ以外の食品にはほとんど含まれていません。【解説】赤石定典(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長)

解説者のプロフィール

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赤石定典(あかいし・さだのり)

東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長。管理栄養士。栄養管理のプロとして栄養に関する研究を行い、入院患者の献立の作成や、患者に直接栄養管理の指導やアドバイスも行う。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部が監修した『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』『その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)はロングセラー。

イチゴのビタミンC量はミカンの2倍

最近は果物を好んで食べる人が少なくなりました。「果糖が気になる」「デザートは果物よりもスイーツ」「皮をむくのが面倒」という人もいます。

しかし、果物はビタミンやポリフェノール、食物繊維などが豊富です。厚生労働省も1日に200gの果物を食べることを推奨しています。美容と健康を維持するためには、果物は意識して食べたいものです。

特に甘酸っぱくておいしいイチゴは、女性にお勧めです。理由は、美肌をつくるのに欠かせないビタミンCが豊富なこと。

含有量は果物のなかでもトップクラスで、温州ミカンのビタミンが100g中32mgなのに対し、イチゴは62mg。ミカンの約2倍のビタミンCがイチゴには含まれているのです。

画像: イチゴのビタミンC量はミカンの2倍

ビタミンCには、活性酸素を抑える強い抗酸化作用があります。活性酸素は、細胞を酸化させて老化や病気の原因となる物質で、シミやシワの原因となります。抗酸化作用とは、この活性酸素による細胞へのダメージを抑える働きのことです。

ビタミンCはビタミンのなかでも抗酸化作用が強く、ビタミンA、Eとあわせて「抗酸化ビタミンのACE(エース)」と呼ばれています。

また、ビタミンCには、体内でコラーゲンの吸収を助ける働きもあります。コラーゲンは、肌の張りや弾力を保つのに重要なたんぱく質です。

コラーゲンは鶏の皮や豚足、魚の皮などに多く含まれています。これらとあわせてイチゴを食べれば、イチゴのビタミンCの働きによって、コラーゲンを効率よく吸収できるでしょう。

このように、イチゴに多いビタミンCは、体の内側からシミやシワを防いで美肌をつくる働きがあるのです。「食べる美容液」といってもいいでしょう。

厚生労働省が推奨するビタミンCの摂取量は、1日当たり100mgです。イチゴなら、8粒程度でその量をまかなえます。

しかも、イチゴには食べやすいという利点もあります。例えば、ビタミンCが多いレモン(ビタミンCの含有量は果汁100g中50mg)は、酸っぱ過ぎて量をとることができません。

甘味のあるイチゴは、ある程度の量を食べられます。さらに、皮をむく手間もなく、手でつまんで手軽に食べられます。

糖質は果物の中でも少なめですし、カロリー(エネルギー)も1パックでバナナ約半分という低さです。美容と健康が気になる女性に、イチゴはうってつけの果物といえるでしょう。

ヘタを取って洗うとビタミンCが半減

イチゴは、先端がとがった物よりも、平らなほうが、甘味が強く栄養素も豊富です。茎から実へと送られた栄養素が実の先端部からたまっていくため、先端が平らに広がっている実ほど栄養素が多いのです。

表面の粒の間隔が広い物も、よく熟しており、栄養が豊富です。

気をつけていただきたいのは、洗い方です。洗うときはヘタを取らずにさっと水洗いをしてください。

イチゴのビタミンCはヘタの下の部分に多く含まれています。ヘタを取ってから洗うと、ビタミンCが50〜60%も流れ出てしまうのです。

ビタミンCの流出を防ぐためには、ヘタは残して洗いましょう。実が傷つかなければビタミンCの流出は防げるので、ヘタの緑色の軸を残して葉だけを取るのでも構いません。

同じ理由から、ヘタの下の白い部分を包丁で切り取るのもやめましょう。

イチゴの赤い色が老化や病気を防ぐ

イチゴの有効成分は、ビタミンCだけではありません。他にも、イチゴの赤い色素に含まれるアントシアニンという成分があります。

アントシアニンは、ファイトケミカルのポリフェノールの一種です。ファイトケミカルは、植物が作り出す天然の機能性成分です。紫外線により発生する活性酸素などから、植物が自分自身を守るために作り出すものです。

そのため、ファイトケミカルには優れた抗酸化作用があります。イチゴのアントシアニンにも強い抗酸化作用があるので、食べると、老化や病気を招く活性酸素のダメージを抑えるのに役立ちます。

アントシアニンには、毛細血管の血流をよくする働きもあります。眼球内には数多くの毛細血管が走っています。疲れ目に悩む人には、アントシアニンの豊富なイチゴがお勧めです。

イチゴには、エラグ酸というポリフェノールも含まれています。エラグ酸もアントシアニンと同様、強い抗酸化作用と血行促進作用があります。

ムシ歯を防ぐキシリトールも含有

また、他の果物と違って、イチゴにはキシリトールという珍しい成分が含まれています。

キシリトールは、ムシ歯を防ぐ甘味料としてガムなどによく添加されています。天然の成分ですが、イチゴ以外の食品にはほとんど含まれていません。

北欧のある小学校で昼食後に生徒たちにイチゴを食べさせたところ、ムシ歯が減ったという報告があります。

イチゴには他にも、葉酸という水溶性ビタミンも含まれています。葉酸は、体内で赤血球を作る際に働くため、造血ビタミンとも呼ばれています。

近年の研究では、葉酸には認知症の予防効果が期待できることもわかってきました。

また、整腸作用のある水溶性食物繊維のペクチンや、ナトリウムの排泄を促すことで高血圧の予防・改善に役立つカリウムも含まれています。

イチゴ酢の効果を高めるとり方

この美容と健康の維持に役立つイチゴを、氷砂糖と酢で漬けたものが「イチゴ酢」です。

[別記事:甘くておいしいイチゴ酢の基本の作り方→

酢には、カルシウムの吸収を助ける、脂肪の燃焼促進、高血圧の予防・改善、整腸作用などのさまざまな効果が期待できることがわかっています。イチゴ酢は、イチゴと酢の持つ美容・健康効果を同時に得られる食べ方だと思います。

イチゴの主要な栄養成分であるビタミンCやアントシアニンは、どちらも水溶性です。イチゴ酢にも、ある程度の量が溶け出していると思われます。

イチゴ酢の砂糖の糖質が気になるという方は、血糖値が上がりづらいオリゴ糖やハチミツでイチゴ酢を作ってみてはいかがでしょうか。

イチゴ酢は飲むだけでなく、サラダやピクルスなど料理に使ってもいいでしょう。

イチゴ酢の効果を高めるためには、牛乳などの脂質の多い食品とあわせてとるのがお勧めです。アントシアニンは脂質と一緒にとると、体内での吸収率が2〜3倍もアップするからです。

牛乳にイチゴ酢を入れて飲めば、イチゴのアントシアニンだけでなく、牛乳のカルシウムも酢の酢酸の力によって吸収されやすくなります。

サラダにイチゴ酢を使う場合は、アボカドやオリーブオイルなど、脂質を含む食品と併せてとるのがお勧めです。

画像: お好みの野菜で簡単に作れるイチゴ酢を使ったピクルス(左) カルシウムの吸収がよくなるイチゴ酢の牛乳割り(右)

お好みの野菜で簡単に作れるイチゴ酢を使ったピクルス(左)
カルシウムの吸収がよくなるイチゴ酢の牛乳割り(右)

画像: この記事は『安心』2021年1月号別冊付録に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年1月号別冊付録に掲載されています。

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