解説者のプロフィール

水谷剛(みずたに・ごう)
東浦和内科・外科クリニック院長。山口大学医学部卒業。医学博士。東京医科歯科大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院等を経て東浦和内科・外科クリニックを開院。内視鏡検査・手術を多数手がけ、訪問診療など地域に密着した医療を実践している。
▼東浦和内科・外科クリニック(公式サイト)
メタボの患者さんにバナナを勧めている
私は、バナナの研究を20年ほど続けています。バナナに着目したきっかけは、バナナ業者からの「健康効果を調べてほしい」という依頼でした。そこで調べてみると、バナナの有益な効果が次から次へと見つかったのです。
今では、自分でも毎日バナナを食べています。メタボリックシンドロームの患者さんなどにも、バナナを食べることを勧めています。
最近では、「どんなダイエットも効果がなかった」という50代の男性が、夕食前にバナナを食べることで、3ヵ月で8kgの減量に成功しました。100kgほどあった体重は、現在80kg台まで落ちています。体重の減少とともに、血圧や血糖値も下がりました。
バナナは甘いため、カロリー(エネルギー)が高いと思われがちですが、1本当たりのカロリーは100kcal程度で、そう高くはありません。ご飯であれば、小ぶりの茶わん1膳でも、160kcalはあります。
バナナは、体内で吸収スピードの異なる糖類を何種類も含みます。そのため、すぐに満腹感を得られる一方で、腹持ちがよいという利点もあります。食物繊維も豊富で、食後の血糖値の急上昇を防ぐこともできます。
ですからバナナは、食生活に上手にとり入れることで、ダイエットや血糖値の管理に役立つ食品なのです。
バナナに豊富に含まれるカリウムには、体内のナトリウム(塩分)の排出を促して、血圧を下げる働きがあります。
また、バナナは水溶性・不溶性の食物繊維をどちらも豊富に含むため、便秘の解消にも役立ちます。
病気の予防・治療効果も期待できます。バナナには、強力な抗酸化作用(病気や老化の原因となる体内の活性酸素を除去する働き)と、免疫賦活作用(免疫力を活性化する働き)があるのです。
マウスにバナナの抽出液を投与した実験では、白血球の一種が大幅に増加することが確認されています。近年の研究では、バナナにがんの抑制効果があることもわかりました。
バナナの抗酸化作用と免疫賦活作用は、皮にシュガースポット(黒い斑点)ができた、熟したバナナのほうが高いこともわかっています。
免疫力アップに「キャベツ+バナナ酢」
[別記事:便秘や肥満、生活習慣病が気になる人におすすめ「バナナ酢」の作り方→]
「バナナ酢」は、これらのバナナの健康効果に加えて、酢の健康効果も期待できます。 酢の酸味の正体は、クエン酸という物質です。クエン酸は、体内で「クエン酸回路」を活性化させる働きがあります。
クエン酸回路とは、食事でとった栄養素をエネルギーに変換させる体のシステムです。クエン酸回路が正常に働けば、疲労は速やかに回復します。また、糖質や脂質の代謝がよくなるため、体には余分な脂肪がたまりづらくなります。
黒酢や黒糖でバナナ酢を作れば、健康の維持に役立つミネラルをより多くとることができるでしょう。
免疫力を高めたいという人は、キャベツの千切りに、バナナ酢で作ったドレッシングをかけて食べることをお勧めします。キャベツも免疫力を高める働きの強い野菜です。バナナ酢とあわせてとれば、免疫力の向上が期待できます。
血圧が気になる方は、塩分をとり過ぎた食事の後に、バナナ酢を、漬けたバナナごと食べるとよいでしょう。バナナのカリウムが、血液中に増えたナトリウムの排出を促すはずです。また、酢の酢酸は、血圧を上昇させるホルモンの働きを抑制するといわれています。
降圧剤を服用している人は、バナナ酢で、降圧剤の働きをある程度補うことができます。
一般的に、降圧剤は1日に1回、朝の服用が勧められています。これは、1日のうちで最も血圧が上がりやすい朝に服用することで、血圧の急上昇を防ぐためです。
ただ、時間がたてば、降圧剤の働きは当然弱まります。夜は、降圧剤の働きが最も低下しているはずです。このタイミングでバナナ酢をとれば、翌朝までの血圧の安定が期待できます。
血糖値が気になる方は、食前にバナナ酢をとるとよいでしょう。酢には、食後の血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。
漬けたバナナごと食べれば、速やかに満足感が得られるため、食べ過ぎを防ぐことができます。
運動の習慣がある方は、運動の直後にバナナ酢をとれば、クエン酸回路が活性化し、疲労の蓄積を防ぐことができるでしょう。
むくみや便秘が気になる方は、漬けたバナナごと食べてください。バナナのカリウムは、むくみや便秘の改善にも役立ちます。
バナナ酢は、水で薄めて飲めば、空腹時であっても胃を傷める恐れはありません。ただし、腎臓病などで体内のカリウムを低下させる薬を服用中の方は、バナナ自体を避けなければなりません。バナナ酢でとる場合は、量などをかかりつけ医に相談してください。

この記事は『安心』2021年1月号別冊付録に掲載されています。
www.makino-g.jp